第11話 浮気しちゃダメ
ひとまず、シュヴァルク王国へ乗り込むのは別の日だ。
今日のところはゼルファードで休む。
それに、建物も直さないとな。
なにか便利なスキルがあるといいのだがなぁ……。
日が暮れる中で俺は立ち尽くす。
すると村長のタルモレアが現れ、俺を見つめた。……こりゃ、村を追い出されるかなと思ったが。
「よく村を守ってくれました、エルド殿」
「へ……」
「人的被害はゼロですじゃ」
「本当ですか」
「うむ。このような奇跡、滅多にあるものではない。エルド殿のおかげ。それでじゃ……よかったらゼルファードの管理をやってみんか?」
「ゼルファードの管理を?」
すると村長は懐から黒い石を取り出した。
これは……まさか。
土地や領地、国を管理する時に使うという特別な石だ。
[黒曜石][村]
[効果]
村を管理する専用の黒曜石である。
建物の建設および修理が可能。
木材と石の材料が必要だ。
[村Lv.3]
[建築Lv.1]
[病院Lv.1]
[兵舎Lv.1]
[お店Lv.5]
[農地Lv.2]
[鉄鉱採掘場Lv.1]
「この黒曜石ならば村を管理できるだけでなく、レベルアップもできるのじゃ」
「す、すごい。こんな風になっていたなんて知らなかったよ」
村長は、俺に黒曜石を託してきた。
むぅ……これではシュヴァルク王国へ乗り込む計画が。でも、村長の気持ちを無碍にもできんな。
「やってくれるかの?」
「解かりました。お任せください」
「うむ。それとラフィネをお願いしますぞ」
ニヤリと笑い、サムズアップする村長。……ちょ、その期待しとるぞ的な目線。
「ど、どうしますか、エルド様」
「こうなっては仕方ない。ゼルファードを守ると決めた以上は、俺が管理する」
「そうですね。この村には随分とお世話になっていますし」
その通り。ここまで無償でいろいろしてくれているんだ。恩返しをしないとバチが当たるってモンだ。
今日のところは家へ戻った。
いや、今こそ家を建てるべきじゃないか?
オーロラがそう言っていたのを思い出した。
そうだ、村長に助けられてばかりも申し訳ない。それに、管理を任された以上は自分でできる範囲はやっていかないと。
いつまでも頼ってばかりはいられない。
「どうしたのですか?」
「家を建てよう」
「本当ですか!?」
「ああ、木材と石ならすぐ集めてくるよ」
「お供します。ほら、森にはゾンビ系モンスターがいますし」
「ありがとう、オーロラ」
「……はいっ」
嬉しそうに微笑むオーロラ。コイツの笑顔には救われるな。
・
・
・
緊急で外へ出て聖剣で木々をなぎ倒して『木材』をゲット。かなり集めた。石の方も岩を砕いてゲットした。
聖剣をこんな風に使う日が来ようとは。
でもいい、生きるためならどんな使い方でも構わないさ。
もう日が暮れたので建設は明日になりそうだ。
「結局、今晩は村長の家を頼ることになりそうだな」
「仕方ありませんよ~。あ、でも、ラフィネさんに浮気しちゃダメですよ!」
「っ!?」
浮気もなにも、そんな関係じゃ……。いや、微妙か。この前はキスをしてしまったし。いや、されたんだが。
何も起こらないといいな。
今日のところは村長の家へ向かうことに。