6話 馬車、おまえを殺す あとクラゲを踏みたい
6話だよ。
もはや何も言うまい。
ガタンガタン…
「で、大聖都ってなん?」
ガタガタガタン…
「大聖都は大聖都よ」
ガタガタ…
「その大聖都に何があるかってことだよ!」
「スキル板よ!」
「なんだよスキル板、板って!」
ガッコンゴトゴト!
「ちっ!ガタゴトうるせえ!」
「うるせえのはお前だよ兄ちゃん!!乗合馬車なんだから静かにしろ!」
「はい、スマセーン…」
なんか体のでかいおじさんに怒られちゃった、こわ。
(しかしあれだね、男ばっかりだね)
(この世界じゃ旅は基本男の人がするものよ、特に今は魔人も出るし)
ルナとひそひそ声で話す。
そうなのだ。
俺たちは今、あのぼろい村
あ、名前はミジンポ村って言ったらしいが
そこから東にあるルイ・ジンの街へ行き
そこから出ている馬車で森をグルーっと経由して
ヒルマデの街へ向かっている。
暫定俺の出身地の街だ。
で、さらにそのヒルマデの街から
ワビタマ湖を船で渡ってようやく大聖都に着くらしい。
旅費?
村の人たちからカンパしてもらったのと
ルナが妖精の長からもらったお金があるから
何とか持ちそうとのこと
「おまえさんどこにお金持ってたの?」
「ふふん、妖精はね、ほかの妖精と仲がいいのよ!」
説明になっていない。
いや、言わんとすることはなんとなくわかるが
分かりたくないが正解か
「俺には友達がいないんだ、もっと簡潔かつ優しく説明しろ」
「わ、分かったわよ」
まあ案の定、ほかの妖精の協力を経て
収納空間をお借りしているらしい
勇者をナビゲートする妖精には
大精霊から直々に命令されいろいろな妖精からサポートを受けられるんだとか
「なあ、それってお前が仲がいいんじゃなくて
上司命令だから協力しているだけだよな、ただの仕事じゃん」
「ち、違うわよ!仲いいもん!
木の蜜とかプレゼントしてご機嫌とるもん」
「ご機嫌とるって言っちゃってるじゃん」
俺だけはルナの恋人でいようと思った。
友達以上恋人以上。
「俺はルナのこと好きだからな」
「なっ、べつにそういうんじゃ…」
そういってルナは
村で作った専用の小さな寝袋に避難していった。
それにしても暇だ。
ぼんやり水槽の中を泳ぐメダカを想像するのも飽きた。
ガタガタ揺れるし中には陰気なおっさんたちが4人ほど。
もちろん俺は除く。
俺は陰のある青年だからな。ふっ、闇が封印されし股間がうずくぜ…
そう、股間がうずくのだ。
なんせしばらく自慰をしていない。
いや、これはまじめな話だ!
引くな、さりとて詫びるな。
はっきり言ってこれは我慢しようとすれば我慢できる、
が、一度したい!と思ってしまったら若いこの体ではなかなかつらいんだ。
まあ言葉で言ってもわかってもらえないだろう。
紳士なら態度で示そうよ…
ゴソゴソ…
「おい、にいちゃん
さっきから何股間をまさぐってるんだ気持ち悪いぞ…」
「ああ、俺だって気持ちが悪い」
「なんだ、気分悪いのか?」
「ああ、気分が悪い」
「そりゃあ‥‥しょうがねえなあ
おい御者さんよ
なんか気分が悪いやつがいるらしいんだ!」
くそ、この世界のおっさんたちはいい人ばっかりか。
だが罪悪感でそういう気は霧散した。
「あ、いや大丈夫だ
古傷が痛んでね…さっき口に仕込んだ痛み止めを飲んだところさ」
「口に…まあ、いろいろあるわな」
そんなわけで俺は、なんか王国のスパイ的な人物になりきって
その場を切り抜けた。
ああ、性欲が邪魔だ。
仕事があるっていうのに、俺はいったい何をしているんだろうか。