20話 汗っかきブタ野郎はラノベと女神降臨の夢を見る
ヘブンリー♪ヘンブンリー♪
ヘイ!分離
「戒能殿」
会議後半へ入る前に、お茶にしましょうとのことで
休憩に入った。
俺は一人ベランダでくそでかい庭を見ていた。
そこへマッサンが、その巨体に似合わず
静かに俺の後ろから声をかけてきたのだ。
「あんたか」
俺はラノベ主人公みたいに答えた、よし
せっかくだからラノベロールプレイをするか。
あっ、なんか楽しくなってきたぞ。
「どうですかな、ほかの勇者方は」
「ふっ、あんたが考えてる通りさ」
「やはりそうですか…」
しばしの沈黙がベランダに落ちる。
「あの中で私が言いたいことを理解っていただけたのは
どうやらなただけのようでした。」
「…」
あえて答えない俺。
いや、この沈黙はポイント高いでしょ
「戒能殿、勇者方のリーダーをやる気はないですか?」
「はぁ!?」
素に戻っちゃったよ、こいつ馬鹿か!筋肉か!
こんな無責任な人間になんてこと言いやがる。
俺は中学の頃、修学旅行で班長をやったことがある。
集合時間に遅れ
長谷川先生に蹴られて以来もう絶対そういうのはやらないと決めてんだ。
長谷川殺す。
「いいのか、俺は今度こそ長谷川を殺すかもしれないぞ‥」
「ハセガワとは誰のことですかな?」
「いや、忘れてくれ…」
とにかく、それは断るといい
再び円卓へと戻った。
「アヘ顔水産」
『!?』
俺はちょっとシリアスになりかけたベランダでの展開に
水を差すために、会議のしょっぱなに思いついたパワーワードを放った。
ちなみにあそこはベランダではなくバルコニーといったほうがいいらしい。
俺の中の叡智をつかさどるアルティメットな脳が教えてくれた。
皆がきょとんとしている中、
土方歳三ことオーク7号と戸部頭空音だけがピクリと反応する。
戸部頭、中学生なのにアヘ顔知っとるんか。
こいつもメディアの毒に侵されとるな。
「水産業がどうかしたのか?」
なにか重要なワードだと勘違いした1号が言う。
「いや、何でもない。港で出会った人たちのことを思い出していただけだ。」
「そうか…」
こいつ、俺がこの世界の人たちの出会いに思いをはせているんだろうと
勝手に勘違いしているような顔をしているが、まあほっとこう。
「ではこれから各々の勇者様が今後どのように動くかを決めてゆきたいと思う」
角刈り筋肉なのに唯一常識的な男、マッサンが勇者会議後半の仕切りを始めた。
「修一殿」
「ああ」
発言が修一に切り替わる。
「みんな、ここからの動きは、さらに慎重にならないといけないと思うんだ
なので、ここからは直接女神様に意見をもらおうと思う」
そういうとそばに仕えていた兵士に目配せし、奥の扉へ走らせる。
やがて奥から出てきたのは、
シスターらしき女性二人を伴った
一人の少女だった。白い。
「巫女の一人、キリ様だ」
キリ様はぼんやりしたうつろな目で二人の女性に伴われ、
別に用意された椅子に静かに座る
「白い髪に白いローブ、肌も病的なまでに白いその少女は
神秘的な存在でありながら、そこにいる、というよりそこにある。
といったほうが正しい表現であるように思えた。」
「おい、デブうるさいよ!」
オーク7号が脳内で流れているラノベ構文をぶつぶつ漏らしているので
俺が注意した。
「デフフフ、僕は昔「小説家になりおる」で大賞を取ったことがあるんだ
文庫化もしたんだよ!あー名作書きてえでござる」
まったくこれだからマウントオタクはいやだ。
ラノベ業界なんて世界に比べたらくそみてえにちっちゃい界隈だってのによ。
と、そのキリの頭上に何か光の粒子が舞う。
「女神様御光臨だ」
マッサンの言う通り部屋の空気がよくわからない重みを増す。
やがて光は収まり、キリのぼんやりした焦点があってゆく
キリは静かに口を開いた。
「地上の皆さん、聞こえますか。私は女神アスタ
まずはロイヤルミルクティーとおいしいケーキを所望します」
「デフフ、お茶と甘未所望する女神マジ萌える!」
オーク7号の興奮した声が部屋に響いた。
刺身も肉も食いたいが、あそこはちょっとなー…




