1話 妖精カメムシ目ニイニイ科
一話です。
皆さん頑張って読みましょう。
「もし、もし…旅のお方」
そんな声とともに体をゆすられ俺の意識は覚醒した
「もし…旅のお方、大丈夫ですか」
目の前には、目の前には‥‥誰もいない
「どこだ?」
「ここです」
声のする方に目をやると俺のお腹に
ザリガニのような生き物がいた。
「ザリガニ?」
「ふふ、転生者は私を見て皆そういうのですね」
かわいらしく鈴を転がすような声で目の前のザリガニらしき生き物は言った
「いや、ザリガニだろう
それに、俺のことを旅人だと決めつけるな。茹でるぞ?」
「ひいっ、茹でるのだけは勘弁して!」
茹でられることに思いの他おびえるザリは
しっぽをプルプル震わせてひっくり返った
おいおい、震えるザリガ二とかインタラクティブだろ
思わずキスしちまいたくなるぜ
言い忘れたがおれは甲殻類マニアでもある
愛しているといっても過言ではない
【小説家になりおる?】というサイトにもいろいろな甲殻類と恋愛する小説を投稿したもんだ
全然ビューが伸びなかったけれど
それであきらめて漫画家になったんだ。
おれは本当は小説家になりたかったんだ
「そんな俺の気持ちがお前にわかるか!」
「ひいっ、茹でないで!」
「あ、すまん…今のは、そのすまん」
いかんいかん、孤独な生活を送っていると
心の声と普通の声の境目があいまいになってくるんだ。
私の名前は戒能清吾
ここは異世界。
よし俺は大丈夫。
「大丈夫か?」
「あ、はい…」
「で、お前は俺に何をしてくれるんだ?」
「えっと…はい?」
「俺は賢いんだ、なんせコミカライズ漫画家だったからな
お前は俺を転生者といった、つまり俺の事情を知ったうえで話しかけてきた
あとは…わかるな?」
俺はすべてを語ることなく、いや、すべてを語らないようにしたからこそ
すべてを理解し、その場を支配している貫録を相手に感じさせる方向に誘導…
ええい、もうどうでもいいわ。
そんな俺のわずかな表情を、ザリは感じ取ったようでため息交じりに答えた
「はあ…すべてお見通しですか
せっかくあなたの好感度を上げるべく異世界ザリガニに変身していたのに…」
そういうとザリは光に包まれみるみる人の姿に変わってゆく。
「初めまして、といったほうがいいかしら。」
そう言って現れたのはクラスで3番目にかわいいくらいの
黒髪の妖精だった
なぜ妖精だと分かったかって?
だって背中に羽が生えているから
ただしセミの…
体はセミ3匹分くらいの大きさだったが。
「あーーーっ、今失礼な事考えたでしょ!」
失礼?セミの羽根を持つ妖精に、セミ単位で身長を図って何が失礼?
「お前頭がセミか?」
頭大丈夫か?と聞こうとして間違えてしまった…
「みーーーっ!失礼な!!」
今みーーーって言ったな、やはりセミで間違いないようだ。
「私にはツクツクって立派な名前があるんだから!でもみんなにはルナって呼ばせているわ!」
立派な名前じゃなかったのかよ…まあいい
「ルナよろしくな」
セミとは最初が肝心、仲良くして損はないだろう
なんせ俺の予想通りならこいつはこの世界でのナビゲータになるんだから
「よろしくねフッコ!」
俺の名前はセイゴなんだけれどな…
まあともかく俺の名前を知っているってことはこいつは神の使いってことで
フィックスかな?
お疲れ様、ここらで発泡酒飲みましょう。