14話 大聖都への足音は海藻を刻む音に消ゆ
13話
警察24時を見ながら仕事するのが年末のお決まりです
「えっ、お姉さんってリバイアさんの長女だったの!?」
「そうよ~」
ここは変わらず『ティンアナゴとハマビノス亭』
そこで衝撃の事実、お店で働く青髪のお姉さんは
あのアリアナ=リバイアの長女だったのだ。
「まあ、母さんは有名だからね~」
15杯目のエールを傾けなおホロ酔いな美人、カナロアさんは語ってくれた。
あ、ちなみにもう人妻だ。
夫はアクア人のサメ男。
「私は特にアクア人の血が濃く受け継がれたみたいでねー、人間の男に興味ないのよ~」
それで半魚人と結婚ようとしたが、父親であるチンピラパパに猛反対され
そのままサメ男とここまで駆け落ちしてきたそうな。
「人生いろいろらわね~」
すでに酔い酔いルナは白河夜船で遊覧中だ。
「カナロアのご両親には、悪いコト、シタ…」
カナロアさんの隣には巨漢のサメ男がしょぼんとしている。
こいつ、見た目に反してたぶんこの中で一番の良識人だ。
「もう、気にしないでって言ってるでしょ!」
お父さんは家族全員に嫌われているとか、私が飛び出した後
足場から落ちて今は下半身不随、お母さんグッジョブとか
なんか、あまり聞いてはいけない話が続いたが
俺は「うんうん、さもありなん」とか何とか言って
流していた。
ちなみに今日は客が少ないとかで、お店は早じまいだ。
自由な店だな。日本も見習え。
そんなわけで日が暮れるまで俺たちはテーブルを囲んで情報交換をしていた。
というか料理をつついて、駄弁りながらただ飲んでいただけともいう。
「わ、私は!!」
ガタン!といきなり席を立った女囚
「私は、ただ村を…救いたかっただけなんだ…」
なんだこいつ、急に語りだしたぞ。
なあかなり飲ませたからな。
ちょうどいい、いろいろ聞いておこう。
「村は瘴気に…家族が…それで、魔人が来て
そうすれば助かると!で、兄が…だから私も…ううっ」
だめだ、情報がフラクタルすぎて全然わからん。
それでも根気よく、本当に根気よく酒を勧めたり背中をさすったり、
ちょっとおっぱい触ろうとしてみたり、そうしたらサメ男に紳士じゃないとか何とか言われたり…
それでようやくつなげた話によると…ZZZ
気づくと俺は寝てしまっていた。
翌朝、チュンチュンというスズメの声ではなく
ギョーエギュエーという異世界風情ある未知の鳥の鳴き声で
目を覚ました俺は、この世界初めての二日酔いになっていた。
「み、みず…」
ミミズではない、水だ。
ちなみに熱帯魚を買っているとミズミミズという生物に触れることにはなるが
それはまた別のお話。
俺は枕元にあったティンアナゴが取っ手になっている水入れから
直接水を飲む。
ごきゅごきゅごきゅ‥‥
「ぷはーうめえ…」
「う・・・わたしにもくれ」
隣のベッドで寝ていた女囚もゾンビのように、水差しに手を伸ばしてくる。
「ほらよ、へへ…たっぷり飲みな」
親切さに一言添えた俺が水を進めてやると
きっ、と鋭い三白眼をこちらに向け、ひったくるように水差しを奪われる。
なんなんだこの女は
朝から反抗的だな。しかし、ここはどこなんだ
見たところ宿屋の二階みたいな場所だが…
昨日の記憶がぼんやりして‥
ガチャ
「あら、起きた?」
入ってきた青髪美人こと…えっと、名前…
なんだっけ、カロリーナさんだっけ。
「おはようございます…」
「……」
「その様子だと、飲んだ後のこと覚えていないようね」
そういってけらけら笑うお姉さん。
「とりあえず朝食あるから下に降りておいで」
と言い残し階段を下りてゆくお姉さん。
それを見送りベットでボーっとする俺。
そんな俺を冷めた目で見て、そそくさと下におりてゆく囚人。
またしばらくボーっとする俺。
俺は低血圧。
ああ、今日もいい天気だな。
もう何もせず海を眺めて日々を過ごしたい。
いっそここの家の子になっちゃおうかしら。
そう思ってから俺は二度寝したのだった。
そして妙によく寝たーって気分で起きたら外はまだ明るかったので
これはあれだな、すっごくたくさん寝た気がしたけれど
実際は2時間くらいしかたってないっていう、二度寝で最高のリザルトだったやつだな!
と思い、寝すぎて痛い腰をさすりながら
階段を下りてゆくと、どうやら俺が昨日の料理屋の二階にいたことが分かった。
「いらっしゃいませー」
「店長、A定食二つー」
「…エールです」
『ティンアナゴとハマビノス亭』は今日も盛況なようで
ルナと囚人がお店を手伝っていた。
やれやれ、今は昼時か。
俺も空いている席に座り今日のおすすめを頼もうとすると、
奥からサメの店主が来て、
「お前はモルドルを刻め」
と、まるで賢者が諭すように
悠久のを破り、時を刻み始めるのじゃ…
的な感じで大きな包丁を渡された。
ああ、まだ二日酔いが抜けていないようで
脳内で無駄にいちいち言葉を装飾してしまう…
とりあえず頭がしゃきっとするまで
キッチンの奥でこの海藻を刻むか。
トントントトトン・トン・トトトン…
ふふ、モールス信号みたい。
知らんけど。
そんな感じで刻んでいるとサメの尾びれに頭をはたかれたのだった。
あとおくりびとも見ます。




