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白き巫女と蒼き巫女【改稿中】  作者: 高階 桂
第三章 タナシス王国編
145/145

145 異世界とは

 『磯部さん』が追加注文の品々を並べ、代わりに空になった皿を集め、一礼して去ってゆく。

「さて。そろそろ俺たちの次の目標を決めておくべきだと思うが」

 さっそくミックスフライ盛り合わせの皿に箸を伸ばしながら、拓海がそう提案する。

「次の目標?」

 負けじと箸を伸ばしながら、夏希は訊いた。

「戦略目標、とでも言うべきかな。なりゆきとはいえ、図らずも俺たちは、あの異世界を大規模に変革してしまった。次に行った時も、まず間違いなくあの世界に変革をもたらしてしまうだろう。どうせ変革するならば、効率的にやるべきだ。それには、統一目標がなければならん。ばらばらに目標を設定し、それに向け努力するのは効率が悪いのみならず、場合によっては足の引っ張り合いになるからな。曖昧でもいいから、統一された目標を作るべきだ。俺たちの活動指針となるような」

「曖昧でいいのなら、異世界の人々の幸福追求だろうね」

 即座に、駿が言う。

「幸福ってのは、曖昧よね」

 凛が、言った。

「ある人にとっては幸福を感じる事柄が、他の人にとっては単なる嫌がらせだったりするし」

「例えば?」

「こういうことよ」

 夏希の問いかけにいたずらっぽく笑った凛が、ミックスフライに添えられていたカットレモンを手にすると、ぎゅっと絞った。

「やめろー」

 拓海が慌てて手を伸ばすが、時すでに遅く、すべてのフライにレモン汁が満遍なく掛かってしまっていた。

「なるほどな」

 凛の言葉と行動に納得しつつ、生馬がレモン汁の掛かったカキフライを箸でつまんだ。

「都市伝説の類かも知れないが、こんな話を聞いたことがあるよ」

 にやにやと笑いながら、駿が切り出す。

「とあるNGOが、とある最貧国の村で、ひとつしかない井戸を閉鎖して電動ポンプを取り付け、各戸へ水道を敷設し、各家庭で上水が使えるようにしたそうだ。もちろん、村人が幸福になれるようにね。一年後、様子を見に行ったところ、ポンプは壊されて井戸が復活していたそうだ」

「なんで?」

「その村にとって、井戸端は大事なコミュニケーションツールだったんだね。女性たちはそこで洗濯しながらおしゃべりするのが、大好きだったんだ。子供は水汲みという労働をこなすことがある種のステータスでもあったし、酒も煙草も、お茶すらないところだから、男性たちも井戸端で冷たい水を飲みながら駄弁りつつ、近所付きあいをしていたんだ。上水道は、それらをぶち壊してしまったんだとさ」

「とりあえず、誰にも文句を言われない幸福のひとつが、平和だろうな。とりあえず俺たちは、あの世界に不完全ながら包括的な安全保障体制を築き上げる手伝いをした。このことは、褒められてもいいと思うな」

 駿の話をうなずきながら聞いていた生馬が、考え深げに言う。

「犠牲も多かったけどね」

 悪気のない、むしろ自分が反省しているかのような口調で、凛が突っ込んだ。

「平和って、健康みたいなものよね」

 考えつつ、夏希は口にした。

「疾病や怪我に無知では、健康を維持できない。同様に、軍事や戦争に無知では、平和は維持できない。常に健康に留意し、それを維持できるように努力していなければならないように、平和も注意深く維持せねばならない。健康を念じるだけでは、決して健康になれないように、平和平和と唱えたり祈念するだけでは、絶対に平和はこない」

「いや。平和は健康とは違うよ」

 拓海が、そう言って夏希の考えを否定した。

「人間の身体には、自然治癒能力が備わっている。軽い疾病や負傷は、放っておいても治る。平和は違う。自己回復能力なんて、ないんだ。ごく小さな紛争の火種でも、放置すれば必ず悪化する。第一次世界大戦を見ればいい。間抜けなテロリストがたまたま発射した拳銃弾一発が、各所にあった火種やら征服欲に着火して、大戦争になっちまった。平和は、健康よりもはるかにデリケートで、脆く儚い存在なんだ。それを、忘れるべきではないよ」



「いろいろ考察してきたが、最終的にはあの異世界は結局なんだったのか、という疑問が生じるわけだが」

 何杯目かのコーラのお代わりを持ってきた拓海が、問題提議する。

「惑星であることは間違いないと思う。水平線の湾曲。太陽の動き。均質な重力。短期間だが、恒星の運行を観察してみたが、地球上と大差なかったね。天の川もあったし。惑星らしい動きを見せる明るい星もあった。おそらく、銀河系内のどこかの恒星系に属する惑星だと思うよ」

 惑星の名の元になった行きつ戻りつする奇妙な運行を手で表現しながら、駿が言う。

「惑星説には同意するが、じゃあなんでそこに人類が居住しているか、という疑問が沸くわけだが」

 議論を促すかのように、拓海が言いながら夏希や凛を見る。

「偶然なんらかの事象で地球と向こうが繋がって、人類が移住した……って可能性は、まずないわね。それならば、あれほど人種的多様性があった説明がつかないわ」

 手にしたフォークを振り立てながら、凛が言った。夏希はうなずきで同意した。あの世界には、地球人類の代表的な人種がすべてそろっていた。偶然の移住が数回あっただけでは、あのような多種多様の人種が居住していたことの説明がつかない。それに、もっと文化的差異が生まれていたはずだし、宗教などの簡単には消滅しない固有文化が一緒に移動したならばその痕跡が見出されるはずだ。例えば、文字とか、宗教的シンボルとか、祈りの習慣とか、神話伝説の類が。

「やはり、何らかの存在が意図的に人類を配したんだろうな。神だか、宇宙人だかは知らぬが」

 生馬が言う。

「何らかの、人類の上位種的な存在だな」

 拓海が、馬鹿にしたように鼻を鳴らす。

「何のために?」

「俺が一番信憑性が高いと思ってるのは、バックアップ施設説だな」

「施設説って、言いにくいわね」

 凛の茶々を無視して、拓海が続ける。

「何らかの存在が、地球人類のバックアップコピーとして、あの世界を造り、維持管理しているんじゃないか? それならば、多様な人種構成の説明がつくし、固有文化の消失も説明がつく。過激な宗教観念や人種差別を一緒に移植したら、争いの元だからな」

「バックアップねえ。何のために?」

「そりゃ、本体が毀損したときに備えて、だろう。コピーってのは、そういうもんだ」

 夏希の問いに、拓海が答える。

「予備の遺伝子プールなのかもね。SFチックだが」

 駿が、言う。

「遺伝子プール?」

「まあ、平たく言えば遺伝子集団だ。地球そのものは、人類という生物の巨大な遺伝子プールだと言える。そのバックアップが、異世界なのかも知れない」

 拓海がざっと説明する。

「もしそうだとすると、魔界は何なの? 魔物は?」

 凛が、訊く。

「魔物は元からの住人じゃないか? 魔界は……よくわからんが」

 生馬が、首を傾げつつ言う。

「我々がよく知っている惑星なんて、地球しかないからな。ひょっとすると、魔界は宇宙規模で見れば普遍的に存在するありきたりな物理現象なのかも知れない」

「魔物はその環境に適応した知的生命体というわけね」

 拓海の言葉にうなずいたが夏希だったが、ふと疑問が生じた。コーカラットの話では、魔物は死なないし子孫を残さないはずだ。生命体……生物と、言えるのだろうか?

 その疑問を口にすると、残りのメンバーが思案顔で首をひねった。

「そもそも、生きていないのかもな」

 生馬が、言う。

「不死身というのが、生物の定義に反するからね。生殖をしないのであれば、進化もできないし。あるいは、この地球上で発生した生命は宇宙的規模で見れば特異な存在なのかもしれないが」

 そう言った駿が、コーヒーカップ片手に立ち上がる。

「あ、ついでにメロンソーダお願い」

 凛が、厚かましく駿に飲み物の追加を頼む。

「うむ。こりゃ、魔物を解剖してみる必要があるな」

 拓海が、腕を組んだ。

「解剖って……。どうやって?」

「コーちゃんなら、やらせてくれるんじゃないか? 不死身なんだし」

「刃物で切れるかしら?」

 凛が、疑義を呈す。

「矢なら刺さったけどね」

 ジンベル川でのイファラ族との小競り合いを思い出して、夏希は苦笑しつつ言った。

「でも、コーちゃんなら切った途端に傷が塞がっちゃいそうね。解剖は、無理なんじゃないかな」

「ねえ、ひょっとして、すべての黒幕は実は魔物じゃないの?」

 戻ってきた駿からメロンソーダのグラスを受け取った凛が、唐突にそんなことを言い出す。

「黒幕ぅ? まさか、コーちゃんやユニちゃんが、異世界を造ったとかいうの?」

 夏希は眉をあげた。凛は、あの可愛らしい魔物たちが、みんなを騙していたというつもりだろうか。

「いやいや。コーちゃんやユニちゃんは、下っ端魔物なのよ。どこかにラスボス的魔物がいて、そいつが異世界を造って、人類を連れてきたの。下っ端魔物は、それを知らない。ただ単に、ラスボスに仕えているだけ」

「ファンタジー小説っぽい設定だね。そのラスボスの目的はなにかな?」

 コーヒーにミルクを混ぜつつ、駿が訊く。

「えーと、……趣味?」

 戸惑い気味に、凛が答える。生馬が、ぷっと吹き出した。

「いま思いついたんだが、魔物ロボット説ってのはどうだ?」

 拓海が、いきなりそんなことを言い出す。

「ロボット?」

「死なない。生殖しない。食事も排泄もしない。きっと、超小型常温核融合炉とか、真空発電ユニットとか内蔵しているに違いない。コーちゃんが飛べるのも、反重力装置を持っているからだ。魔物は、宇宙人が製造したロボットだったんだよ!」

 拓海が、手のひらを上にした右手を突き出し、決めポーズを取る。

「はいはい、キバヤシ乙」

 凛が、気のない様子で突っ込む。

「ロボットか。生体ロボットって可能性は、ありえない話じゃないね。面白い。そうなると、魔界は人類を閉じ込めておくためのある種の境界なのかも知れない」

 にやにやしながら、駿が言う。

「魔物が機械にしろ生体にしろロボットだとして……なんのためにいるの?」

 夏希は当然沸いてくる疑問を口にした。

「人類の監視役かな。いや、観察役か。データリンクで情報を常時送っていたのかもしれない。人間界は水槽みたいなものかな。いや、魔物が自由に行き来できるんだから、むしろ檻の方が近いね。動物園の、飼育係っぽいな」

「飼育係って……。じゃ、あの異世界は何かの見世物か研究施設かなにかだというわけ?」

 駿の見解を聞いて、夏希は少しばかり背筋が寒くなった。

「俺の説が正しくて、何らかのバックアップ施設だったとしても、保守管理は必要だろうな。魔物が、情報を集めていた可能性は、排除できん。駿の魔物=飼育係説も、あり得る話だ」

「魔物がロボットの飼育係ねえ……」

 夏希はフォークを置いて考え込んだ。たしかに、ロボットであれば日本語を理解できたことも、不死身であることも説明できる。

「その説が正しいと仮定すると……そうなると気になるのは、俺たちが異世界に行ったのはその管理者にとって想定内の出来事だったのか否か、だな」

 生馬が、言う。

「管理者の意図だった、ってのは面白そうだな。『戦国自衛隊』みたいで」

 拓海が、薄く笑った。

「そんな映画、あったね」

「あの大コケした映画は忘れてくれ。ひどい出来だったな、あれは。一本目もたいした出来じゃなかったが、平成版はゴミだった。歴史センスもSFセンスも軍事センスもない奴にミリタリーチックな歴史SFの脚本を書かせりゃ、駄作になるのは眼に見えていたはずだがな」

 ずけずけと、拓海が言う。生馬がうなずいた。

「まったくだ。原作小説は凄く面白いんだがな。俺みたいな戦国好きにはたまらない設定とストーリーだ」

「ネタばれになるが、あの話は本来大きく変わるはずだった日本の歴史を、昭和から来た自衛隊員たち……普通科一個小隊に補給隊、装甲車一両、輸送ヘリ一機、海自の小型哨戒艇などが見事に修正してしまう、という話だった。もし仮に、異世界の管理者が同様の意図を持って俺たちを召喚したのだとすれば……」

 拓海が含みを持たせるかのように、言葉を切る。

「召喚したのはジンベル王国の意向じゃないの? それに、凛を召喚するように要請したのはわたしだし」

 夏希はそう言った。

「管理者なら、それくらいの小細工は簡単だろう。観察対象を次のステージ……おそらくは、異世界全体が活発に交流する段階へ上げようと考え、その手段として夏希を召喚させた。夏希は管理者の思惑通り俺たちを集め、行動させた。その結果、すべての国家が単一の国際機構に組み込まれた……」

「そこまで計算し尽くせるものかしら?」

「わからん。あるいは、俺たちの行動に何らかの補正が掛かっていたのかもしれないな。管理者なら、そのくらいのチート補正を加えるのは造作もないことだろうし」

 首を振りつつ、拓海が言う。

「その仮説が正しいとすると……この集まりは管理者の観察対象よね、絶対」

 凛が、ぼそっと言う。

「うわー、気持ち悪い」

 夏希は周囲を見回した。さすがに魔物の姿は見えないが、管理者の存在が本当ならば、予想もつかない手段でこの集まりを見張っているに違いない。まさか、斜め向かいのテーブルでメモを取っている若い女性が管理者の派遣したロボットとか?

「管理者が、僕たちが召喚されたことや、為したことに気付いていないことも充分考えられるね。常時記録を取っているだけで、メンテナンスは数百年置き、とかあり得るだろうし」

 駿が、言う。

「管理者の意図しない改革をやっちまったわけか。まずいだろ、それ」

 生馬が、顔をしかめた。

「俺たちは実験室の清潔なシャーレに紛れ込んじまった雑菌だったのかもしれないな」

 拓海が、笑う。

「じゃあ、変化してしまった異世界は……」

「実験失敗ね」

 夏希の言葉に、凛がぼそりと答える。

「普通なら、培地ごと焼却処分だろうな」

 拓海が恐ろしいことをさらりと言って、からからと笑った。



「なんか、疲れる集まりだったわ……」

 夏希は凛とともに、歩道を歩んでいた。

 夕暮れ時の街路は、物悲しい様相を見せていた。

「あ、これ渡しとくわ」

 凛が言って、ファミレスに行く前に購入した数冊のノートが入った袋を、夏希の手に押し付ける。

「なに?」

「向こうでの体験を書いといて。あたしが近くにいなかった時だけでいいから。細かいことは必要ないわ。誰と会って、どんなことを話して、どう感じたかを中心にね」

「……何を企んでいるの?」

「文芸部行ったでしょ? そこに、結構上手にファンタジー書ける娘がいるのよ。その娘に、ネタとして渡そうと思うの」

 凛が、真顔で言う。

「……正気?」

「正気だけど? いいじゃない。全部、あたしの妄想という形で渡すから。あんな経験してきたのに、なにも記録を残さないなんて、もったいないじゃない」

「記録、ねえ」

 夏希は苦笑しつつ袋の中を覗き込んだ。よく知られた熊のキャラクターが、生気のない黒い眼で見つめ返してくる。

「でも、なんでわたしの行動記録が必要なの?」

「そりゃもちろん、あんたが主役だからよ」

「……凛でいいじゃない」

「あたしじゃ、華がないじゃない。あんたが主役でなきゃ、盛り上がらないわよ」

「生馬や拓海じゃだめなの?」

「生馬はともかく、拓海に主役は無理よ。あんな奴がメインの小説なんて、誰が読みたがるのよ」

 凛が、からからと笑う。

「それに、あの娘女性向けしか書けないしね。あ、もちろん脚色はばんばん入れるわよ。もっと恋愛要素がないと無理だから。とりあえず、エイラは男性化ね。召喚した相手に一目惚れ、ってのは王道だから。シェラエズも男性化でいいな。仲間との恋愛模様も入れたいから……カップリングするなら、生馬と駿どっちがいい?」

「……お任せします」

 辟易しつつ、夏希はそう返答した。



「ただいまー」

 誰もいない廊下に向かって、夏希は一声掛けてから、靴を脱いだ。昔からの、夏希の習慣である。

「ふう」

 リビングの椅子に鞄と凛から受け取った紙袋を置き、新聞受けから回収してきた夕刊の見出しをざっと眺める。いつもなら、ここでコーヒータイムなのだが、今日はドリンクバーの飲料で水分は充分に足りている。

 テレビ欄をチェックした夏希は、夕刊を畳んでテーブルの上に置くと、鞄と袋を取り上げた。階段を上り、自室の扉を開ける。

 ふと気配に気付いた夏希は、廊下の端に眼をやった。

 てっきりミオがいると思われたそこには、愛猫の姿はなかった。その代わりに、先細りになった半透明の棒状のものが、何本も見えた。

 驚いて視線をあげた夏希の眼に、コーカラットの姿が飛び込んできた。相変わらずの肉まんボディに、青紫の長い髪。愛嬌のある顔立ち。

「夏希様、お久しぶりなのですぅ~」

 コーカラットが、嬉しそうに触手をくねらせながら、夏希の方へと漂ってくる。

「コーちゃん! どうしたの、急に?」

「あたいもいるのです!」

 がちゃっとトイレのドアが開き、そこからユニヘックヒューマが勢いよく飛び出してきた。そのあとから、ニュアムコムがのっそりと現れる。

「みんなそろって……いったいどうしたの?」

 夏希はわけがわからないままそう訊いた。一瞬、なにかトラブルが生じてエイラとサーイェナが助けを求めて使い魔たちを派遣したのか、と思ったが、コーカラットの嬉しそうな様子からするとそれはなさそうだ。

「エイラ様とサーイェナ様とラクラシャさんが、新たな召喚のルートを開拓したのですぅ~。この方法を使えば、ごく微量の魔力を消費するだけでこちらの世界へと行き来できるのですぅ~」

 夏希のすぐそばまで漂ってきたコーカラットが、説明してくれる。

「ですが、そのルートでは途中で魔界を経由しなければならないのです! だから、人間には無理なのです! 今回は、我々魔物たちがテストを行ったのです!」

 ステッキを振りつつ、ユニヘックヒューマが捕捉する。

「そうなんだ。じゃ、テストは成功したのね」

「とりあえず成功ですねぇ~。こうして、夏希様に再びお会いできたのですからぁ~」

 コーカラットが、言う。夏希はその触手の一本をぎゅっと握った。

「また会えて嬉しいわ、コーちゃん。ユニちゃんも」

「あたいも嬉しいです、夏希様!」

 近づいて来たユニヘックヒューマが、言う。夏希はその頭をそっと撫でてやった。嬉しさの表現か、ユニヘックヒューマがステッキを激しく振り回す。

 ニュアムコムも、とことこと近づいて来た。仔犬を思わせる雰囲気で、夏希を見上げる。夏希はしゃがみ込むと、その頭を撫でてやった。

「巫女お三方は、さらに簡便な召喚方法を研究中ですぅ~」

 その様子を眺めながら、コーカラットが言った。

「いずれ、魔界を経由しないルートが開拓できるはずですぅ~。そうなれば、人間でも自由かつ頻繁に行き来できるようになるのですぅ~。夏希様ら異世界人の皆様も、何度でも往復できるはずですぅ~」

「それはすごいわね」

 何度も往復できるようになれば、とても便利になるだろう。異世界で発生したトラブルに対し、こちらの世界で解決方法を探して対処する、といったことも可能になる。

 しかし……夏希らが簡単に往復できるということは、あちらの世界の住人が、こちらへとやってくることもできる、ということだ。

 それって……。

 エイラやサーイェナ、アンヌッカあたりはともかく、リダやキュイランス、さらにはシェラエズあたりがこちらの世界へやって来たら……。

 夏希の顔に浮かんでいた当惑が、徐々に笑顔へと変わっていった。

 それはそれで、とっても面白いことになりそうだ。

 読了お疲れ様でした。

 これにて『白き巫女と蒼き巫女』完結でございます。まことに長い話を長期に渡りお付き合いいただきまして、まことにありがとうございました。なんだか続きがあるような意味深な終わり方をしておりますが……続きはございません。外伝もプレストーリーもありません。はい。

 えー、第一話の投稿が2009年12月。最終話が2013年9月ですから、実に三年十ヶ月も掛けての長期連載となりました。……改めて振り返ってみると、作者もちょっとびっくりです。四年近く、ひとつの作品を(まあ、いくつか他に習作も書いておりましたが)書き続けていたとは。

 高階はいままで結構な数と量のものを書いてきましたが、こんなに日数を掛けて書いた作品は初めてですし、こんなにも長い作品を書いたのも初めてです。そして、この作品はもっとも多くの人に読んでもらえた作品でもあります。そのわりに、完成度はいまいちでしたが。やはり自転車操業的に書いては出し、を続けていると伏線も張り辛いしストーリーの修正も難しい。実力不足がもろに出ますねえ。読み返してみますと、足りない描写などが散見されます。大幅な改編はしないつもりですが、時間があれば細かい字句の修正やシーンの追加などは極力行っていきたいと思っております。

 では恒例の次回作の宣伝を。次回作のタイトルは『突撃!! AHOの子ロボ分隊!』 主役は、なんと本作の人気者(?)ユニヘックヒューマとコーカラットです。マジです。もっとも、キャラクターだけを借りてきたまったく別個の作品ですが。

 えー、もともと高階はアホみたいなお間抜けな外観のちびっ子ロボットが、正規軍相手にドンパチやる、という作品構想を暖めておりました。そして『白蒼巫女』を書いている最中に、ふと本作のキャラ、コーちゃんとユニちゃんがロボットになったら……という妄想を抱いてしまったのですね。コーちゃんはともかく、ユニちゃんはそのままでお間抜けな外観のロボット、として通用しそうですし。

 というわけでイメージを広げて、設定とストーリーを作り、本作の次の投稿作品としてお披露目できる次第となったわけです。ジャンルは冒険。ミリタリー色の強い、ちょっとユーモラスな部分(が出ればいいな)もあるアクション小説です。メインとなるキャラは、ユニヘックヒューマに似た外観を持つロボットたち。主役は、ユニヘックヒューマ(が中身のロボット)、その相棒が、コーカラット(が中身のロボット)となります。やはり、受身のコーちゃんよりも、積極的に動いてくれるユニちゃんのほうが主役として動かし易いですから。

 『突撃!! AHOの子ロボ分隊』はすでに第二話まで投稿済みです。作者ページまたは小説情報よりお進みいただければ、幸いです。本作のミリタリー部分を興味深く読んでいただいた方ならば、きっとお楽しみいただけると思います。

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