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白き巫女と蒼き巫女【改稿中】  作者: 高階 桂
第三章 タナシス王国編
124/145

124 父娘対立

「もはや、わが国に勝ち目はない、ということだな」

 オストノフ国王は、敗戦の報を冷静に受け止めた。

「御意。ここに至っては、これ以上戦いを継続するのは、王家のためにも臣民のためにもなりません。国を救い、国民を救い、そして陛下の名誉を守るには、最後の手段を取るしかないと愚考いたします」

 玉座の正面でかしこまったエミスト王女が、厳かに告げた。

「準備はできておるのか?」

「はい。レジエ将軍には話をつけております。王家と陛下のお役に立てるならば、喜んで死ぬ覚悟だと申しておりました」

 オストノフの問いに、エミストが淀みなく答える。

「……あっぱれな男だ。わしにもそのくらいの覚悟があればいいのだがな」

 オストノフが、寂しげに苦笑する。

「いいだろう。そなたの計画、進めるが良い」

 ややあって、オストノフが笑顔でそう告げた。無理に作ったような、いびつな笑顔であった。

「御意」



 タナシス王国への停戦条件の提示は、夏希が個人的にシェラエズ王女に対して送った書簡……もちろんアンヌッカの代筆……の中で、あくまで一個人としての予想、という形で非公式に伝えられた。むろん、後にここで提示した条件に外交上縛られないための用心である。どのような形であれ、外交公文書として外国に渡せば、それは国際法上の確たる証拠として扱われ、憲章条約側の意思表明と看做されてしまうのだ。憲章条約総会が正式に停戦条件を決議し、それを携えた外交全権大使が到着するまで、タナシス側に公文書を提示することは愚策である。いやそれ以前に、救援軍参謀長たる拓海の地位を以ってしても明白な越権行為に当たる。

 憲章条約軍は、その間にも着々とキュスナル市攻略の準備を進めていた。夏希はもちろん、拓海も生馬もシェラエズ王女の訪問が単なる時間稼ぎではなく、真剣に停戦を望んでのものだと確信していたが、タナシス王国上層部の詳細な動向まではつかんでいない。停戦条件の受け入れが遅れる可能性は高かった。それまで、手を拱いているわけにはいかない。停戦受け入れを促す意味でも、軍事的圧力は掛け続けなければならない。

 そんな中で、野営地に上流から川船でやってきたのが、エイラとサーイェナであった。

「あら、久しぶりね。元気だった?」

 天幕を出た夏希は、二人の巫女を暖かく出迎えた。

「あたいたちもいるのです!」

「いるのですぅ~」

 二匹の魔物が、懐かしげに夏希にまとわりつく。

「はいはい。ユニちゃんもコーちゃんも久しぶりね。元気そうでなにより」

「元気ですが、いささか退屈したのです!」

「王都リスオンは、刺激のないところなのですぅ~」

 口々に、二匹の魔物が不満を口にする。

「わたくしたち、エミスト王女から非公式に総会へのお手紙を預かってきましたの。ですから、マリ・ハまで行かねばなりません」

 エイラが、残念そうに言う。

「あら。ゆっくりしていけないの。じゃ、せめてお茶でも飲んでいってよ。それくらい、いいでしょ?」

「もちろんです。それと……色々とお伝えしたいこともあるので、拓海殿も呼んでいただけませんか? いらっしゃるのでしょう?」

 サーイェナが、きょろきょろと周囲を見回す。

「お伝えしたいこと? じゃ、生馬も呼んだほうがいいかな。探してくるわ」

「それなら、わたくしにお任せくださいぃ~」

 コーカラットが、ひょいと空に舞い上がった。


「エミストが幽閉?」

「幽閉というのは、ちょっと表現がきつすぎますわね。蟄居、といったところですか」

 エイラが、小首をかわいらしく傾げつつ答える。

 二人の巫女がもたらした情報は、三人の異世界人を驚かせるに十分なものであった。タナシス王家三姉妹の長女、エミストが父オストノフ国王と継戦に関して対立し、半月館と呼ばれている王都近郊の離宮に現在軟禁状態にあるという。

 一同は幹部用の食堂兼会議室として使われている大きな天幕の中にいた。その辺りに生えていた樹木を使って急造された粗末なテーブルと腰掛け。末席には、コーカラットとユニヘックヒューマの姿もある。

「エミスト王女は憲章条約との停戦に前向きです。蟄居の前にお会いし、総会への書簡を託されましたが、その際王女は早期停戦を望んでいると明言なさいました。書簡は総会親展なので内容はわかりませんが、停戦を求める内容だと思われます」

 サーイェナが、確信に満ちた口調で言う。

「親子喧嘩なのです!」

 ユニヘックヒューマが、嬉しそうに言う。ちなみに、背丈が足りないのでテーブルの上には大きな頭部の上半分しか出ていない。

「オストノフ国王は、依然として徹底抗戦を唱えておいでですかな?」

 拓海が、丁寧な口調で二人の巫女に聞いた。

「とりあえず、停戦を求めるような発言はありませんでした」

「街の噂でも、抗戦意欲は旺盛なようです」

 エイラとサーイェナが、ためらいの色も見せずにそう答える。

「やはり、拓海が睨んだ通りの展開になるのか?」

 生馬が、視線を拓海に当てた。

「徹底抗戦を叫んでいたオストノフ国王が、病気か何かを口実にして退位。停戦を唱えていたエミストが即位し、いわば公約通り停戦条件を受け入れる。となると、この軟禁騒動は偽装だろうな。シナリオ通りといえばシナリオ通りなんだが……」

「何か引っ掛かるの?」

「やはりこのシナリオだと、エミストが国内を掌握しきれない可能性が高いだろう。色々いやな情報も入ってきているしな。地方貴族で、王家との距離を置き出した連中がいるらしい」

 夏希の問いかけに、拓海が渋い表情で答える。

「そのような噂は、わたくしたちも耳にしました」

 エイラが、口を挟んだ。

「何人かの有力貴族が、兵を集めているという話です。表向きは、憲章条約軍と戦うための義勇軍を編成する、ということですが、それならばタナシス軍に志願したほうが合理的です。どうやら、戦後の混乱期に備えて自領の守りを固めているようですね」

「一部の貴族が、タナシス王家を裏切って、レムコ同盟や西部同盟に接近しているという噂もあります。ご存じありませんか?」

 サーイェナが、拓海に問う。

「それは初耳ですな。ありえないことではないですが」

「大きな戦争のあとに、国家が分裂状態になったり分裂しかかったりすることは、普通だからな。幕末の日本も、危なかったし」

 腕組みした生馬が、言う。拓海がうなずいた。

「国家なんて、結局は人が大勢集まっただけの存在だからな。何らかの求心力がなくなってしまえば、ばらばらになるのは道理だ。チトー死後のユーゴスラヴィア、共産党失権のあとのソビエト連邦……。中国も大帝国が滅んだあとはほとんどが内戦突入か小国分裂だ。幕末ではなんとか外国の介入も跳ね除けて、抵抗する諸藩を早めに軍事的に屈服させて、明治帝の下で結束を固めた日本も、結局第二次大戦で負けて分割されちまったしな」

「分割ぅ?」

「おいおい。歴史の授業さぼってたのか……と言いたいが、日本人の大半がこの事実を忘れてるからな。第二次大戦に敗北した日本は、連合国によって分割統治されちまったんだぞ。朝鮮、台湾、南洋諸島、千島、沖縄などなどと、日本本土」

 呆れ顔で夏希を見つつ、拓海が説明する。

「……そう、だったわね」

「事実上武力侵攻して植民地化した台湾はともかく、朝鮮の併合は当時の国際法上なんら問題ない処置だったし、南洋諸島なんぞ国際連盟承認の委任統治だしな。本来ならば日本領土のままでもおかしくなかったんだが、ペナルティ的に取り上げられちまった。ま、身軽になったからこそ、日本が戦後急速に復興できた、とも言えるんだが。朝鮮が日本の領土のままで、中国を巻き込んだ朝鮮戦争が勃発していたら、なんて考えるだけで寒気がする。いや、そこまで行かなくても、朝鮮半島に日本がもっと関わるかたちで終戦となっていたら、帝国陸軍の生き残りが共産軍と戦わされていたかも知れないんだ」

「え、そんな可能性、あったの?」

「大ありだ。マッカーサーは、本気で台湾の国府軍を、朝鮮に投入しようと考えていたんだからな。歴史が少しばかり変わっていたら、日本軍の投入くらい、ためらわずにやったろうよ」

「それは、異世界のお話ですの?」

 拓海と夏希の会話についていけなかったエイラが、戸惑い気味に口を挟む。

「そうです。我々が属していた国は、かなり以前に大戦争をやらかしましてね。結局、敗北しましたが」

「どのような戦争だったのですか?」

 興味を示したサーイェナが、問う。

「いやいや。たいした戦争ではありませんよ。世界で一番広い国とにらみ合いながら、世界で一番人口の多い国の内戦に中途半端に介入し、泥沼化したところで世界で一番豊かな国と世界で一番海外領土の多い国と喧嘩をおっぱじめただけです」

「ほう。よほどの強国だったようですね」

 サーイェナが、眼をみはる。

「自分たちは強いと思い込んでいただけです。周囲の予想通り、ぼろぼろに負けましたよ」

 自嘲じみた笑みを浮かべて、拓海が言った。



 タナシスの王都リスオン、その郊外。

 王家の離宮である半月館へと至る夜道を、三人の剣士が黙々と歩んでいた。月明かりを翳らせる曇天のうえ、三人とも同じようなフードつきのマントをまとっているので、その人相は定かではないが、速い足の運びやその体躯からして、健康な若者らしいことは見て取れる。

 やがて、三人の若者は半月館の裏口にたどり着いた。警護の兵士に誰何され、一人の剣士がフードを取り、名乗る。

 剣士が高位のタナシス軍人だと知った兵士が、裏口の木戸を開けた。三人が、木戸をくぐる。

「では、我々はここでお待ちしております」

 フードを取ったタナシス軍人が、一人の若者に丁寧な口調で言った。若者が無言のままうなずき、腰の剣を外してもう一人の若者に託した。そしてそのまま背を向け、半月館の主棟へ向け歩み去る。

 屋内へ入って初めて、若者はフードを取り、その顔を露にした。

 シェラエズ王女である。

「やれやれ。実の姉に会うためにわざわざ男装せねばならぬとはな」

 愚痴りながら、シェラエズはマントを脱いだ。それを腕に掛けて、階段を上る。エミスト王女は、主棟の東側の寝室にいると聞かされている。

 扉の前にたどり着いたシェラエズは、とんとんとそれを叩いた。

「姉上。シェラエズです」

「お入りなさい」

 反応は、すぐにあった。シェラエズは、扉を開けた。

 冷え冷えとした空気の中に、エミスト王女はいた。火の気と言えば、植物油のランプひとつだけ。その頼りなげな光が、美しい横顔を青白く染めている。

「相変わらず、辛気臭いですねぇ」

 苦笑しながら、シェラエズは暖炉に歩み寄った。マントを寝台の上に放ってから、焚き付けを手にし、ランプから火を移す。それを暖炉の薪の下に入れ、さらに焚き付けをくべる。

 ほどなく、オレンジ色の火が薪に燃え移った。温もりと光を放ち始めた暖炉を満足げに見やったシェラエズは、懐に手を入れると書状を引っ張り出した。

 夏希が送って寄越した、停戦条件が書かれた手紙である。

 無言のまま、シェラエズはそれをエミストに手渡した。受け取ったエミストが、ランプを手元に引き寄せてから、真剣な面持ちで読み始める。

 シェラエズは、壁際の棚に歩み寄った。中身を適当に物色し、果実酒の瓶とグラスを引っ張り出し、手酌でちびちびと飲み始める。

「きわめて妥当な条件ですね。これならば、受け入れることができそうです」

 読み終わったエミストが、うなずきつつ言った。

「わたしもそう思います。まあ、まだ草案段階なのでしょうが」

 姉のためにグラスに一杯注ぎながら、シェラエズもうなずいた。

「前線の様子はどうですか?」

「憲章条約軍は、着々とキュスナル市攻略準備を進めています。こちらも迎え撃つ準備を行っていますが、士気の低下は深刻です。まず間違いなく、守りきれないでしょう」

 エミストにグラスを手渡しながら、シェラエズは言った。正規軍や奴隷軍の士気はいまだ高水準にあったが、市民軍では逃亡者がちらほらと出始めている。

「セーラン将軍を解任したと聞きましたが」

「はい。少しばかり可哀想ですが、士気の低下を最小限に食い止めるために、敗戦の責任を負ってもらいました。辺境に飛ばしましたよ」

「……それは、良策とは言えませんね。まだ利用できる男でしょう。手元に置いて使ったほうがいいのではないのですか?」

 怪訝そうな表情で、エミストが問う。シェラエズは、静かに笑った。

「いいえ。実際に使ってみて判りましたが、あの男は危険です。王都辺りに置いておいたら、何をしでかすか判りません。ストラウドで燻らせて置くほうが、安全です」

「そう。そこは、あなたの判断を尊重しましょう。で、どのくらい猶予があるのかしら?」

「憲章条約側の正式な停戦条件を携えた外交特使が到着するまで、早くても七日。こちらが軟化の姿勢を見せ続ければ、それまでキュスナル市攻略を思い止まらせることは可能でしょう」

「七日ですか。それだけあれば、こちらの用意も十二分に整いますね。すでに、わたくしのもとに、停戦賛成派の貴族から接触がありましたし」

 エミストが、言う。

 夏希らの読みどおり、今回の父娘対立は偽装であった。だが、その主たる目的は、国内の貴族を停戦派と抗戦派に明白に峻別することにあった。エミストのような『実力者』が正式に停戦支持を明らかにすれば、停戦を望んでいる貴族が公式あるいは非公式に連帯を表明するとの思惑があったのである。エミストが一時的にせよ政権を掌握するには、国内貴族で誰が信用できるか否かを明確につかんでいる必要がある。

「それで……父上の方は」

 シェラエズは、目線を姉に合わせぬようにして、聞いた。

「そちらの準備は整いました。レジエ将軍も、すでに信頼のできる部下を集めたそうです。こちらの合図で、いつでも決行すると」

「そうですか」

 シェラエズは、嘆息交じりに返答した。

 暖炉に完全に火が回り、部屋の温度は上昇していたが、シェラエズは寒気を覚えていた。姉エミスト王女が立てた、オストノフ国王が名誉を保ったまま、タナシス王国が停戦を受け入れる方策……。あまりにも非情な計画である。当のエミスト自身が、不名誉を一手に引き受けてしまうそのやり方。

 ……王家の血筋など、受け継がねば良かった。

 シェラエズは、心底そう思った。ごく普通の市民であれば、父オストノフも真っ当な農民や職人として、生涯を全うできたであろう。三人娘も、ごく当たり前に恋をし、夫を選び、子をなして、貧しいながらも幸せな家庭を築けたはずだ。母も、男児を授かろうとして無理に身ごもり、母子ともに死ぬような眼にも会わなかったはずだ。

 タナシス百万の市民のために、自らを犠牲にしなければならない。それが、王家に生まれたものの宿命。

 頭では判っていても、心が受け入れない。男勝りの軍略家として知られる、シェラエズの強靭な心でさえ。

「竹竿の君に、書簡を送りたいと考えます。キュスナル市侵攻を遅らせてくれるように」

 気持ちを切り替えたシェラエズは、ことさら明るい声で言った。

「停戦条件は、修正無しで受け入れの方向でよろしいですか」

「構いません。十分に寛大な内容だと思います」

 エミストが答えた。視線を落とし、急に自分の手の中にグラスがあることに気付き、少し驚いたような表情で一口すする。

「承知しました。では、さっそく書簡をしたためます」

 シェラエズは、自分のグラスを干した。



「シェラエズ王女殿下から、夏希様親展で届きました」

 天幕に入ってきたリダが、ぴょこんと一礼してから夏希に書状を差し出す。

 リダの頬の傷は、生馬が『昔の少年マンガの主人公のよう』と評したほど見事な十文字傷になっていた。あまりにも目立つ傷であり、なんだか作り物じみているようにも思えるので、却って凄みのある顔には見えなくなった。むしろ、童顔の女の子がそれをごまかそうとしてタトゥーシールを貼り付けたようにも見える。

「ありがとう」

 リダが持ってきたシェラエズからの手紙を、夏希は丁寧に開いた。

「なんだって?」

 相変わらずせっかちな生馬が、急かす。

「……うーん。停戦条件は納得した。キュスナル市攻撃は少し待ってくれ、くらいは読み取れるけど、あとは無理だわ」

 夏希は、手紙を拓海に差し出した。

「せっかくリダがいるんだ、読んでもらえよ」

 受け取った拓海が、手紙をリダにパスする。リダが、夏希を上目使いに見た。

「いいわ。読んでちょうだい」

 察した夏希は、すぐに許可を出した。リダが、手紙を音読し始める。

 内容は、夏希がなんとか読み取ったとおりであった。あくまで『王都リスオンの噂』ではあるが、タナシス側は停戦条件に異議がないこと。正式に停戦条件が提示されれば、それをそのまま受け入れる用意があること。双方の信頼醸成およびこれ以上の人命の損失を避けるため、キュスナル市侵攻は延期して欲しいこと。

「侵攻延期は、こちらにも好都合だな」

 生馬が、言う。

 どのような心境の変化……あるいは戦略上の変更があったのかは定かではないが、先日レムコ同盟がキュスナル市攻略作戦に兵力を供出することに同意したのである。ディディサクとディディリアに進駐していた部隊から引き抜かれた一万二千の軍勢は、アノルチャ川を下る準備を整えているところである。こちらにこの貴重な増援兵力が合流するには、なお数日かかる。

「総会の特使は……順調にいけば今はルルトくらいかな?」

「あるいは、もうラドームあたりだろうな。うん、上手く行けば、十日以内にこの戦争は終わるぞ」

 浮かぬ顔で、拓海が言う。

「どうしたの? 戦争が終わると出番がなくなるから、いやなの?」

 夏希はからかった。

「いや。戦争よりも難しい局面になるから、憂鬱なだけだ」

 拓海が、答えた。

「戦争は、どれほど複雑でも、結局は一本道だ。敵と戦うだけだから、極言すれば脳筋でもなんとかなる。だが、戦後処理はデリケートな外交ないし内政問題になる。戦争よりもはるかに選択肢の多い、複雑な迷路を辿らなきゃならん。戦略はたとえミスっても、他の局面でカバーすればいい。外交や内政での大きなミスは、取り返しがつかなくなるおそれがある。関係する事柄が、飛躍的に増大するわけだからな」

「むしろ、戦争が終わってからが本番、ってとこだな」

 生馬が、難しい顔で言った。夏希はうなずいた。

「そうね。……そろそろ、駿と凛ちゃんの知恵を借りる頃合だよね」


第百二十四話をお届けします。

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