表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

57/74

(6)

 ミンに案内されたのは、とても美しい場所だった。周囲を緑に覆われた山に囲まれたその湖で、その水は驚くほどに透明度が高い。湖岸から見ると、水底がはっきりと透けて見えた。小さな魚が泳いでいるのも見える。


「ここで見たの?」


 私はミンに問いかける。


[うん、そうだよ。ちょっと周囲を探してくるね]

[私も行くわ]


 ふわふわと飛んでゆくミンの後ろを、サンもついてゆく。


[待ってー。僕達も探すよー]と少し遅れてガーネとベラもその後ろをついて行った。


「俺達は湖岸沿いを探すか」


 精霊達の背中を見送ったイラリオさんが提案する。


「うん。そうだね」

「じゃあ、あっち方向からぐるりと一周しよう」


 イラリオさんは湖に向かって右方向を指さした。

 地面に視線を走らせながら、私とイラリオさんは湖岸を歩く。イリスとザグリーンも後ろを付いてきた。


(ん? あれは……)


 顔を上げて前を見た私は、遙か向こうにサンとミンとはまた違う精霊がいるのに気付いた。

 黄色い衣装を着ており、姿形は風の精霊や水の聖霊に似ているけれど、全身がキラキラと輝いている。大聖堂にいる光の精霊と同じだ。


「リーン、あれは何の精霊?」

「光の精霊だ」


 ザグリーンは私の視線の先にいるその精霊を見て、そう教えてくれた。やっぱり、思った通りだ。

 光の聖霊は、水辺で足をバシャバシャとしながら遊んでいた。跳ねた水滴が太陽の光を反射してより一層煌めいている。


「こんにちは」


 私達はその精霊に声をかける。

 精霊は私の声に気付いてこちらを振り返ると、にこりと笑った。


[こんにちは。はじめまして]

「こちらこそはじめまして。私はアリエッタ。みんなからは〝エリー〟って呼ばれているわ。あなたは光の精霊?」

[うん、そうだよ。リアっていうんだ]


 リアと名乗ったその精霊は、目をぱちぱちさせてこちらを見つめた。


「私の顔に何か付いている?」


 じっと見つめられて、私は不思議に思った。


[ううん]


 リアは首を横に振る。


[僕、人間の姿をした聖獣って初めて会ったから珍しくって]


 それを聞いて、私は目を瞬かせる。

 人間の姿をした聖獣?


(あ、もしかして!)


 聖獣のザグリーンとイリスと共に行動しているせいで、私まで聖獣だと勘違いされているのかな?

 私は慌てて手を胸の前で振った。


「違う違う。私は聖獣じゃないわ」

[え、そうなの?]


 光の精霊はきょとんとした表情で私に聞き返す。やっぱり、私のことを聖獣だと勘違いしていたようだ。


「そうだよ。私は普通の人間」

[なーんだ。人間の姿をした聖獣かと思った]


 リアはちょっぴりがっかりしたような顔をする。


「人間の姿をした聖獣なんているの?」

[いるって聞いたことあるよ。友達が見たことがあるって]


 人間の姿をした聖獣? そんなの、一度も聞いたことがないけれど……?

 ザグリーンのほうを見ると、目が合ったザグリーンは首を傾げる。


「なんだ?」

「人間の姿をした聖獣なんているの?」

「人間の姿をした聖獣はいない。聖獣とは強い神聖力を持った獣だ。強い神聖力を持った人間は司祭や聖女だろう」

「あ、そっか」


 言われてみればそうだ。ブルノ大司教も神聖力が強いけれど、聖獣ではなく人間だ。


「だが、人間に姿を変えられる聖獣はいる」


 ザグリーンが付け加えるように言った情報に、私ははっとした。

 人間の姿になれる聖獣がいるという伝説は聞いたことがある。けれど、実物を見たという話は聞いたことがない。だから、私はその伝説は作り話の可能性が高いと思っていた。


 聖獣が人間に姿を変えられる?


「も、もしかして、リーンも……?」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ