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■ 第7章 幼女薬師、水の精霊とお友達になる

 アルマ薬店で店番をしていると、時々薬を買いに来たついでに差し入れをくれる人がいる。


「あらまあ、立派なお魚だこと!」


 今さっき、虫除けのお薬を買いに来た男性が置いていった箱を開けたカミラさんが歓声を上げる。箱の中身を見ると、体長十五センチ程の川魚が十匹以上入っていた。


「傷まないように、保冷庫にいれておこうね。エリー、団長さんの分とふたり分を分けてあげるから、帰りに持って帰りなさい」

「うん、ありがとう」


 私はぺこりと頭を下げてお礼を言う。


「最近、お魚が高いから助かります」

「ああ、確かにそうだね。大雨が続いていたから、川に魚釣りにいけなかった影響かねぇ」


 カミラさんは答えながらも、魚が入った箱を保冷庫に入れてしっかりと蓋をする。

 セローナ地区では、ここ一カ月ほど雨の日が続いていた。その影響なのか、ここのところお魚がとっても高いのだ。

 長くお魚を食べていなかったようで、お魚を差し入れられたカミラさんは上機嫌だ。


「雨、止んでよかったです」


 私はカウンターから空を見上げる。


「そうだねえ。農作物のことを考えると雨は大事なんだけれど、ああも続いちゃうと参っちゃうよ」


 カミラさんはそう言いながら、笑みを漏らした。

 爽やかな青空が広がっている。数日前までずっと雨が続いていたとは思えないほどの快晴が広がっていた。


(最近雨ばっかりでお散歩もいけなかったから、お散歩に行ってこようかな?)

 後で、イラリオさんにも相談してみよう。




 その日の夜、私は早速お裾分けしてもらったお魚を使って夕食を作った。フライパンにオリーブ油を敷いて両面をこんがりと焼き上げると、バターとレモン、ハーブを使った特製ソースをかけて出来上がりだ。


 お料理を出すとイラリオさんが顔を綻ばせる。


「魚なんて、久しぶりだな」

「うん。今日、アルマ薬店のお客さんが差し入れしてくれたから、カミラさんがお裾分けしてくれたの」

「へえ、よかったな。美味そうだ」


 イラリオさんは器用にナイフとフォークを使って切り分けるとパクリと魚を口に入れる。それを見て、私もお魚をパクリと食べた。


 程よくレモンの風味が利いた焼き魚は身がプリッとしてとっても美味しい。

 川魚は独特の臭みが出やすいけれど、いただいてすぐに魔法の保冷庫に入れておいたお陰で全く気にならない。


 イラリオさんはたくさん食べるはずだからとカミラさんが気を利かせてたくさん持たせてくれたのだけれど、あっという間に全てのお魚が胃袋の中に入ってしまった。


「最近、お魚が高かったからあんまり買わないようにしていたんだ」

「気にせず買っていいのに」

「うーん、入荷も少なかったから」

「そっか」


 イラリオさんは「エリーはちびなのに、しっかり者だな」とふっと笑みを零す。


 ふふっ、ちびに見えますけど一応十八歳ですから。


「そういえばレオ」

「なんだ?」

「ずっと雨が続いていたけれど久しぶりに晴れが続いているから、お散歩にでも行こうと思ったんだけど行ってもいい?」

「お散歩? どこに?」

「うーんと、まだ行き先は決めてないんだけどイリスを連れて少し歩いてこようかなって」


 イラリオさんは考えるように腕を組む。


「俺がついて行ければいいんだが──」

「ううん、それは大丈夫! お仕事の邪魔になっちゃうし」


 イラリオさんは聖騎士団の団長をしているのでただでさえ忙しい。

 私のせいで残業をしないようにしているせいで、家にまで書類を持ち帰って夜遅く作業していることも知っている。これ以上迷惑をかけるわけにはいかない。


「うーん。じゃあ」


 イラリオさんは部屋の中を見回し、ザグリーンのほうを見る。


「リーン。エリーと一緒に散歩してやってくれ」

「ああ、構わない」


 寝そべっていたザグリーンは顔を上げて頷く。


「えっ!」


 イラリオさんとザグリーンのやり取りを聞き、私はびっくりして小さく声を上げる。

 ザグリーンが一緒に? それは嬉しいけど、いいのだろうか。だって、ザグリーンはイラリオさんと契約している聖獣なのだ。



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