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 カミラさんの許可を得た私は、その日のうちに早速お店に置く用の特製絆創膏の作製に取りかかった。テープを色んな大きさに切り、そこにガーゼを載せてゆく。専用スプーンで薄く傷薬を塗れば、ガーネとベラがせっせと空気の膜を作ってくれた。


「これはどうしてベタつかないんだい?」


 作っている最中に、カミラさんがやって来た。一枚手に取るとそれを不思議そうに眺める。


「空気の膜を作っているの」

「空気の膜?」

「うん。私、風の精霊達の加護があるから」

「ああ、なるほどねえ。大したもんだ。よく思いついたねえ」


 カミラさんは心底感心したように、しげしげとそれを眺める。


「出来上がったものは店頭に並べておくよ。みんなに知ってもらったほうがいいだろう?」

「うん。ありがとうございます」


 私はできたてほやほやの特製絆創膏をカミラさんに手渡す。カミラさんは薬を載せるトレーをひとつ手に取ると、それに綺麗に絆創膏を並べてカウンターに置いてくれた。〝エリー特製絆創膏〟のPOP付きだ。


「エリー特製絆創膏……?」


 ちょうどそのとき薬を求めに来た若い女性は、見慣れぬものに不思議そうに首を傾げる。


「これは、傷口をすぐに覆える応急グッズなんです。包帯で巻かなくても、これだけで手当てできます」

「へえ、面白いわね。試しにひとつ買ってみようかしら」

「はい。ありがとうございます!」


 その女性に一枚特製絆創膏を差し出す。ちなみに、価格は普通にテープとガーゼ、傷薬を買ったときとほとんど変わらない値段設定にしたので、かなりお求めやすくなっていると思う。


 その後もアルマ薬店を訪れる人みんな、カウンターの上に置かれた奇妙なものに目を惹かれる。目立つようにとカウンターに置いてくれたカミラさんの目論見は、見事成功したようだ。


「ああ、これ。使っているところを見ていいなって思っていたんだ」


 そう言ってくれたのは聖騎士団の若い聖騎士だった。なんでも、試作品を作る際に試しに何人かの団員さんに渡していた特製絆創膏を使っているところをたまたま見かけて、興味を持ってくれていたのだという。


「いただくよ。そうだな、五枚」

「はい、どうぞ」


 私は特製絆創膏を五枚、その若い聖騎士に手渡す。聖騎士のお兄さんは「ありがとう」と言って聖騎士団の事務所へと戻っていった。


「あっという間に売れたねえ」


 カミラさんは空っぽになったトレーを見て目を丸くする。

 私は今日、全部で三十枚の特製絆創膏を作ったのだけれど全て売れてしまった。


「そうですね。みなさんのお役に立つといいんですけど」


 明日からは何枚作ればいいかなーと考える。今日は初日で物珍しさから買ってくれた部分もあるだろうから、明日以降は一日五十枚くらいあれば足りるかな?

 そんなことを呑気に考えていた私は、数日後にはびっくり仰天することになる。

 なんと、特製絆創膏を買いたいという人達が次から次へと押し寄せてきたのだ。


「家で怪我をしたときに主人がくれたの。そうしたら、あっという間に治ったわ」

「使うのが簡単だから、不器用な自分でも上手く使えたよ。しかも、効き目も抜群だ」

「隣の人が使っているのを見たの。珍しいから是非使ってみたいと思って」


 口コミ、というのだろうか。

 使っていいと思った人が買いに来るだけでなく、それを使っている人を見かけた人が評判を聞いて新たに買いに来る。芋づる式にお客さんが増えていって、あっという間に大評判になったのだ。


「エリー、すごいじゃないか」

 噂を聞きつけたイラリオさんが頭をがしがしして褒めてくれる。


 こんなに評判になるなんて思っていなかったから、私もびっくりしてしまった。けれど、それだけ役に立てているのだと思うと嬉しい。

 こうして、エリー特製絆創膏はアルマ薬店の看板商品となったのだった。



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