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    ◇ ◇ ◇


 アルマ薬店はカミラさんがひとりで切り盛りしていることもあり、薬草集めはそれ専門の人に任せているらしい。なので、主な仕事は調合と症状を聞いて薬を選び販売することだ。


 ──ゴリゴリゴリ。


 すり鉢で擦る感覚に意識を集中させる。いつものことだけれど、私が調薬しているとどこからともなく精霊達が遊びに来て、周囲をくるくると舞い始めた。

 四種類の薬草は、やがてそれはサラサラの粉末状になった。


「よし、いい感じかな」


 私はそれをひとつまみ手のひらに載せ、出来具合を確認する。

 なかなかいい出来な気がするよ。


「カミラさん、できましたよ。咳止めです」

「ああ、ありがとう。助かったよ」


 カウンターに立っていたカミラさんは私の手元を覗き、先ほどの私と同じようにひとつまみを取って手のひらに載せた。そして、それをじっくりと眺める。


「薬を作るのが得意だって言っていたけど、本当に得意なんだねぇ。まるでベテラン薬師のような出来具合だよ」

「えへっ」


 褒められてちょっと照れる。


「それに、先日エリーちゃんが作ったお薬を買った患者さんが『すごくよく効いた』って喜んでいたよ」

「本当?」

「ああ、本当だよ。今日の午前中に、ここに立ち寄ってくれたから、そのときに聞いたんだよ」

「やったー!」


 すごく効いたと褒められると、嬉しくなる。

 薬作りだけは昔から得意だったので嬉しいな。


「胃薬も少なくなっているので、作っておきますね」

「ああ、頼むよ」


 私は今作った咳止めのお薬を瓶に移すと、今度は別の薬作りを開始する。

 そのとき、「こんにちは」と呼びかける声がした。カウンターの向こうに中年の女の人が立っているのが見えた。


「こんにちは。どうしたんだい?」


 カミラさんがすぐに接客を始める。


「実は──」


 お客さんは頬に手を添え、話し始める。


「二日前に胃薬を買ったのよ。それが──」


 その女性は、二日ほど前にここアルマ薬店で胃薬を買ったという。


(あれ? 胃薬? それって……)


 私の記憶が間違いなければ、私が調合した薬な気がする。


「何か不都合があったかい?」


 カミラさんが少し緊張した様子で聞き返す。私も恐る恐るその女性の方を窺い見た。


「不都合なんてとんでもない! すごく効いたのよ! ご飯が美味しいのなんので──」


 女性は表情を明るくすると陽気に喋り出す。

 なんでも、長年悩んでいた慢性胃痛がすっきりと治ったらしい。


「それはよかったねえ」

「ええ、本当に。今日は、虫除けをいただこうかと思って」

「虫除けだね。ちょっと待っておくれ」


 カミラさんはホッとしたように息を吐くと、明るく答えた。


(こっちも効いているみたいでよかった……)


 アルマ薬店の薬がとても効くと有名になるまでに、そう長い時間はかからなかった。




エリー、幼女薬師になりました。

第4章ではあの子が再登場です。引き続きお楽しみください!

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