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十九年後の夏の一日

作者: 山神伸二
掲載日:2023/01/03

 夏の日の午前。暑い日差しが差さる山に囲まれた町に一人の男がいた。

男の名は隆。ある病気に罹り余命3ヶ月宣告されてから一ヶ月が経った今、この町にいる。隆は、何も考えずにこの町に来た訳ではない。今から十九年前に隆はここに住んでいた。そして隆には忘れてはいけない過去があった。

今から十九年前。隆は親の事情でこの町に引っ越してきた。そして全校生徒が少ない学校で隆に雪道という名の友達ができた。雪道は、隆と同じ年で気さくで優しい少年だった。春に知り合った二人は、すぐに仲良くなった。そして夏には、二人にとって忘れられない夏となった。隆は、これでもかと言うくらい毎日が楽しくそしてこれでもかと言うくらい毎日が新鮮だった。

だがそんな隆に忘れてはいけないことが起こった。

夏休みの最終日の夜。雪道が、行方不明となった。翌日雪道は山の中で見つかった。それから隆は泣きまくった。隆にとって秋は悲しみの秋となった。冬には、もうこの町で隆の姿は、見えなかった。隆は、東京の学校にいた。そして隆に雪道の存在はなくなった。隆は、最終日も雪道と遊んでいた。そして別れた後、雪道は行方不明になった。雪道は、誰かに殺された形で死んでいたが、犯人は見つからなかった。

数年後、隆は一人で暮らしている。両親はもう亡くなっており、親戚は誰もいなかった。そんな時に、隆を襲った病気。隆は、もうこのまま死にたいと思った。だがその時、隆の目に雪道が見えた。その時、隆は急に荷物をまとめ旅に出ようと思った。

隆は、まずいつも雪道と一緒にいた神社に来た。隆は、五段くらいある階段に座った。ここは、雪道といつも座って遊んでいた場所である。隆は、ここで弁当を食べ、神社から足を離した。

次に隆は学校に来た。相変わらず学校は山に囲まれている。少しの坂を歩いて門の所まで行くと廃校という文字が隆の目に入った。隆は門をよじ登って学校に入った。校庭には錆びているブランコや滑り台などがあり隆は、ブランコに座り時刻を確認した。今は午後の三時だった。

隆は、田んぼにいた。今はもう夕方になっていた。この田んぼは、二人が夏の間に走り回った場所でもある。隆が先に走っていてその後ろを雪道が走っている。隆はそのことを思い出していた。そのときふと、隆の前を少年二人が、走り回っている姿が見えた。例え転んだとしても笑っている二人が見えた。その瞬間、隆の目から涙が出てきた。そして隆は泣きながら行き先もわからないまま走った。例え、息切れをしてもそれでも走り続けた。

涙はもうとっくに消えていた。

気がついたら隆は、最初に来た神社に来ていた。空はもうすっかり夜である。隆は階段に腰を掛けた。夜空は星がたくさん見えていてとても綺麗であった。隆が横を向くとそこには、大人になった雪道の姿があった。

「雪道、雪道なのか⁉︎」

隆は、驚いた声で言った。

「うん、そうだよ。久し振り隆。君ももうすぐこっちの人間か。嬉しいような嫌なような」

雪道は笑いながら言った。十九年経っても笑顔なのはそのままであった。隆は、あのことを聞いてみた。

「雪道、お前を殺した奴は誰なんだ?」

「うーん、それは僕にもわからないな。もう昔のことで忘れちゃったし。そもそもあまり顔を見れなかったんだ」

雪道は答えた。

「隆、ビールある?」

「あるよ、ほら。大人になってから二人で飲む初めてのビールだな」

二人はビールを飲んだ。

「隆、星が綺麗だね。覚えてる?二人であの星を見たの?」

「ああ」

雪道と隆は、十九年振りの話をした。そして雪道が話した。

「ごめん隆。僕そろそろ行かなきゃ。ビール代は二ヶ月後に返すよ。じゃあ隆、二ヶ月後にまた」

隆が横を向いた時にはもう雪道はいなかった。隆は、あれは幻覚ではないと思った。その証拠にビールの飲みかけが二本あった。気がつくと隆は泣いていた。あの星空を見ながら泣いていた。

「俺たちの友情は永遠に、だ」

そう呟くと隆は立ち上がり、夏の夜を歩き出した。

そしてその後、隆は走り出した。隆が走っている姿を見た者によれば、隆の後ろにもう一人走っている人影が見えたという。

隆は、バス停でバスを待っている時に眠ってしまい起きた時にはもう朝だった。時刻は七時半だった。隆は、バスを待っている間、これからのことを考えた。そして隆は、これからの二ヶ月を楽しく過ごすことを決めた。それは、とても難しいことであり、それは、とても覚悟がいることだった。だけど今の隆にはそんなことは簡単にできた。この二ヶ月という短い時間を隆は十分なくらい楽しく過ごそうと心に雪道と決めた。

太陽は、とても眩しくまだ夏を実感させた。

そして遠くの方からバスが見えた。隆は荷物を持ちバス停の椅子から立ち上がった。

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