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2 奇跡的出会い

 本日2回目の投稿です。

 前話を見ていない方はそちらからお読みください。

 前話の後書きで1月24日午後7時に投稿すると書きましたが、2話が思いの外早くかけたので投稿しました。



 魔力を足に纏って山の中を駆ける。

 沢山生えている木の間を数センチでスラスラ避けていき、オオカミのように速く目的地へと走って行く。

 魔力を足に纏わせると同時に目にも回して視力を一時 的に上げる。

 十メートル先の木を見ながら走り、魔獣と女性がいないか探す。


 (………いたっ!)


 少し離れた先に少女と魔獣がいた。

 少女は汗をかきながら木にもたれており、少女のすぐ目の前には黒い狼が口から涎を垂らしながらグルルルとうなっている。


 絶体絶命の少女。


 そして目の前の獲物を今にでも喰おうとしている狼。


 すぐにでも何か起こさなければいけない。その事に気づいたアレクは走りながらどうするか考え───


 (狼野郎、目の前の獲物に集中しすぎて俺の事に気づいてないな)


 こっちに一切振り向かない仕草から不意打ちができる事を察し、自分が今やる事を瞬時に思いつく。

 

 (それなら、最大限の力で狼をふっ飛ばせばいい)


 それがわかってからはすぐに行動に移す。


 身体中の魔力の八割を足に集中させ地面を蹴り、狼めがけて一直線に飛ぶ。

 多くの魔力を纏った足はとてつもない瞬発力を生み出し、足元の地面を割って弾丸のように飛んでいく。

 両腕で顔と頭を守りながら数メートル離れた距離を一瞬で縮ませて、


 「吹っ飛べぇぇぇぇぇぇぇ!!!」


 「キャウ!?」


 狼の横顔に渾身の体当たりをぶちかましたのであった。


 「え………?」


 体当たりをくらい吹き飛ばされた狼は山の木に何回かあたりながら奥に消えて行く。

 そしてアレクは体当たりをした後に衝撃を和らげるため地面を転がり、勢いが弱まってきたところを腕の怪力でズドンと地面を殴り、強引に止めた。


 「あんた大丈夫か?」

 「え、あ、はい」


 いきなり起きた事に頭が追いつけていないのか、少女の顔はポカンとしており、アレクの心配した掛け声にも少女は遅れて返事をした。

 立ち上がったアレクは腰につけている皮袋から何かを取り出して少女に渡す。


 「こ、これは?」

 「麓の村の場所を指してるマジックアイテムだ。その矢印に従って村まで行ってほしい。魔獣が来ているとアレクが言ったと伝えれば、村の人たちは逃げる準備をしてくれるはずだ」


 少女は慌ててマジックアイテムを受け取り、そのアイテムを見る。

 それは小さい石のような姿をしており、平面になっている部分の中心には窪みがある。その窪みを中心に光でできている矢印が外側に向いていた。

 この矢印の先に村があるのだろう。


 「あなたはどうするのですか?」

 「俺はあいつ相手に時間稼ぎする。お前をにがすためのな」

 「でも、あなたでは──」

 「食われるかもしれねぇが、アンタよりは時間は長く稼げるぜ。それより早く村に行きな、出なきゃ村の人全員があいつに食われちまう」

 「ッ………」


 正論を言われた少女は顔をしかめる。しかし、このまま言い合っても意味がない事は流石に理解しているのか、体を痛そうにしながら彼女は立った。


 「………巻き込んでしまってすみません。謝りたいので………また後で会いましょう」

「おうっ!」


 罪悪感を感じている顔をした彼女に笑顔で返す。

 走り出した彼女から視線を外して、アレクは魔獣が飛んでいった方向に視線を向ける。

 奥の影から赤い目だけ照らしながら一歩、二歩とゆっくり歩いてくる黒い狼。

 木の影から足が先に出て、口、顔と下から上へとその姿を表していく。


 (おいおい、さっきのは割と全力だったのに外傷は無しかよ) 


 影から出てきたのは無傷の黒い狼。


 全長は4メートルを超えるのではないかと思わせる巨体であり、そこにいるだけで周りを威圧させるような存在感だった。その上もう少しで獲物を食えた時に横槍が入ったせいか、ものすごく苛立っている。

 そんな黒い狼に冷や汗をかきながら、素早く皮袋から1つの小さい玉と2つのコルクを取り出す。


 「ウォォォオーーーン!!!」

 

 その直後、黒い狼は初めて聞いた時よりさらに力強い吠え声を出してくる。声は衝撃となり周りの草を激しく揺らして周りへと拡散する。それを間近で受けたアレクは耳が割れそうな痛みを感じるが、すぐにコルクを鼻に突っ込んだ。

 そしてアレクめがけて突進してくる黒い狼。先程の体当たりのような速さで迫ってき、そのまま噛み砕こうと口を大きく開けるが、


 「簡単に食われるかぁ!」


 アレクは斧を両手で前に出し、斧の太い持ち手を黒い狼に噛まさせて受け止める。


 「うぉぉ!?」


 だが黒い狼の突進は津波のように勢いが強く重さがあり、アレクの足を支える地面を割りながら滑るように後ろへと押されていく。

 やがてその勢いは木にぶつかることで止まり、もう一度噛み砕こうと口を開こうとするが、


 (今だっ!)


 開ける直前にアレクが手に持っていた小さな玉を、黒い狼の鼻の近くで叩いて破裂させ、玉の中から黄土色の煙が広がっていく。


 (?)


 いきなりの異変に黒い狼は怒りで見えていなかった男の顔を見る。

 その男の顔はトルクで鼻を塞ぎ、ほっぺたを膨らませながら口を塞ぐ間抜けな姿を見せていた。

 殺されるかもしれない緊迫した状況でその顔を見せる男に一瞬理解が出来なかった黒い狼だったが、


 「キュウ!?」


 その理由はすぐ後に襲ってくる鼻の激痛とその臭いによって思い知らされる事になる。


 さっき破裂した玉の正体。

 

 それは山で出会ってしまった魔獣対策用のアイテムだった。

 木こりは出来るだけ魔獣がいない場所で活動するのだが、稀に彷徨い込んだ魔物に出会うケースがある。

 木こりには魔獣を倒す力はないので、逃げるか選択肢しかない。しかしそのまま逃げただけでは追いつかれてしまう。

 その対策が臭い物を詰め込んだ玉であり、これを食らった魔物はその場で怯むか逃げていき、逃げる余裕ができるようになるのだ。


 (それに人の倍以上の嗅覚を持つ犬系統の狼なら、アイテムの効果も倍増して鼻も使い物にならなくなる。そうなればコイツはハンデを負って戦うハメになるし、匂いで彼女を追うこともできなくなるって寸法だ!)


 脳にまで直結する激痛に狼はたまらず口を開いて後退するが、その隙をアレクが見逃すはずがなく持っている斧を両手で持ち、全力で黒い狼の脳天に振り下ろす。

 

 「オウッラァァア!!」


 筋肉男のアレクが放つ全力の攻撃。

 その速さは当然のこと、その力強い一撃は太い丸太だろうが大岩だろうが粉々にする威力があった。

 その渾身の一撃を一ミリもずれることなく黒い狼の脳天に当てるが───


 ガツン!!


 (こいつ、なんで硬さだ!?)


 しかし黒い狼の皮膚は鉄のような硬さで斧の刃を全く通させず、逆にはじかれる。

 隙を見せてしまったアレクは、黒い狼の頭を思いっきりぶつけられ吹き飛ばされてしまう。

 体当たりと違い軽く吹き飛んだだけなのですぐに受け身を取り体勢を治すが、その間に黒い狼も臭いから振り切りこちらを睨んでいた。


 お互いに視線を交える。


 状況は振り出しに戻った。


 (だがこれで、狼の狙いは俺になっただろうな。さっき以上に俺にイラついてるぜ)


 少女が逃げた方向にはいっさい目もくれずこちらをに向けて唸っている狼。

 アレクは半歩下がり、黒の狼も半歩前に出る。

 

 (だったら俺がやる事は一つ)


 瞬間、アレクは体当たりの時と同じように足に魔力を通してさっき来た方向に全力で走り出した。


 (少女から距離を取る事だ!)


 黒い狼も全力で追いかける。


 アレクと黒い狼の命がけの追いかけっこが始まった。


 


 

 

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