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赫赫

作者: 偽都

 歴史に名を残したい。だから研究者を目指した。だから研究者になった。だから…

これを開発したのだ。この液体を。一人で。なのに,史上ではあいつらが開発したことになっている。要は手柄を奪われたのだ。もちろん命名権も奪われたので,この液体にはダサい名前がついている。だがそんなことは今となってはどうでもいい。

 今から,私は歴史に名を残す。液体の開発よりもすごいことを思いついたのだ。9.11なんて比にならないぐらいすごい。何せ今から私は,街を一つ潰すのだ。「燃やす」と言った方が適切かもしれない。150万人ほど死ぬ予定だ。この街は外国人観光客がたくさんいるから,世界中の人々の耳に届くだろう。この国のものは勿論,世界の国々の歴史の教科書に載るかもしれない。

 この街に水道局は一箇所しかない。そこを押さえれば作戦は成功したも同然だが,難なくクリアだ。何も難しいことはしていない。職員になればいいのだ。つまり,水道局に就職すれば,わざわざ侵入しなくても敷地内を歩き回れるし,『混入』も容易いという訳だ。

 むしろ『混入』は思っていたより上手くいった。私が作ったこの液体は,数週間前から上水道に混入させているが誰も気づいていない。哀れな街の住民たちは,自分が飲んでいるものが水ではない「何か」なのではと疑念を抱くことはないらしい。まあそもそもこの液体は無色無臭で人体に無害なのだから気づけないのは仕方がない。特徴も成分もほとんど水と同じだ。

たった一点,強力な「可燃性」である点を除いて。

 おっと,そろそろ定刻だ。午後六時。丁度一年前,あいつらがこの液体の開発に成功したと記者会見をして世界を驚かせた時間だ。ポケットからライターを取り出し点火する。この弱々しい小火が,この水を…この液体混じりの水を伝って,この街のあらゆる場所から紅蓮の炎となって噴き出すのだろうか。この街を焼き尽くさんという意思を持って。ふふ。文字通りの地獄じゃないか。この世に地獄を出現させたのだから歴史に名を残すというレベルの話ではない。ふふふ。何故か笑いがこみあげてくる。

 火の点いたライターを流水に投げ入れる。脳裏に,真っ赤に染ま


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