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vs勇者

「は〜〜。もう良い。行け」

あれ? 城が揺れるくらいの大爆笑で笑われると思っていたのに意外だ。

「はっ! 行って参ります」

なんだ……拍子抜けした。

——そして、玉座から出ると、城が揺れるくらいの大爆笑が起きた。ずっと笑いを堪えていただけだったらしい。

「お助けーーーーーーーーー!」

あのジジイ……俺の真似が上手くなってやがる。くそ……次こそ勇者をボコボコにしてやる……!


[街]

——街に戻ると、カーラが申し訳なさそうに出迎えた。

「…………」

「…………」

沈黙が続く。

「「あの……ごめんなさい」」

綺麗にハモった。

「そろそろ作戦考えようか……?」

黙ってこくりと頷くカーラ。

——それから俺たちは二週間もの間作戦を練り続けた。いける! この作戦なら絶対に勝てる!


[街外れの森の中 勇者パーティー視点]

「今夜も獲物は無しか……これだけ待ち伏せして経験値稼ぎしてれば当然か……」

そんなことを思っていたら街の方向から獲物が近づいてくる音が……しめた。今夜も荒稼ぎできるぜ! この前倒した魔族のガキがどうやら本当に魔王の親族らしく凄まじい経験値を得ることができた。この調子でサクッと強くなって魔王をぶっ潰してやる。そして、世界中の姫を俺のものしてやるぜ〜。ジュルジュル。よだれが止まらない。。


——そして、獲物はついに目の前に現れた。ん? あいつは……この前倒した魔王のガキじゃねーか? あいつ馬鹿だろ! また経験値稼がせてくれるのか? というかどうやって復活したんだ?

——魔王のガキはどうやらこちらに気づいたらしく挨拶してきやがった。ププー。笑いが止まらん。

「こんばんは。おたくも野宿ですか?」

俺はビビらせてやろうと思っていたがやめた。笑いが堪えられん。

「はっはっはっは。またお前か! お前学習能力がないな! 今晩も経験値をたんまり……」


——次の瞬間ガキの後ろからもう一人誰か現れた。ちっ! こいつ仲間を連れてきやがったな。

「今晩経験値になるのはあなた達よ」

仲間は若いサキュバスだった。お世辞にも強そうだとは思えないが……

ん? こいつ……どこかで……

「あっ! お前この間仕留め損ねたサキュバスのガキ!」

なんだ、こいつら弱い者同士で手を組んだのか?

「ガキとはなによ! 失礼じゃない! こう見えてももう十六よ! 大人の女よ!」

いや……ガキだろ……

「そうかそうかそれは失礼した。おいっ! お前ら出てこい」

俺が仲間に合図をすると木陰から三人のメンバーが出てきた。本当は、相手を油断させるために一人を装うのだが、こいつら相手に油断もクソもないだろう。速攻でケリをつけてやる。

「おい! ザック! こいつらこの間の……」

ゴリアテが俺に向かって言う。

「ああ! 今夜もたんまり稼がせてもらおうぜ」

「やったー。これで新しい武器が買えるわ〜」

黒魔道士のミラも嬉しそうだ。

「おい! 魔族ども! 今夜も稼がせてくれるのか?」

ウッヒョー! 最高の夜だぜ!

「いーや、今夜は俺たちが稼ぐ番だ!」

「は? お前ら俺たちに勝つ気か? 前回の戦いで何も学ばなかったのか? 単体の魔物が群れをなしても勝てないものは勝てないぞ?」

「群じゃないパーティーだ!」

「群でもパーティーでもなんでもいいだろ……どうせ俺たちが勝つんだし……」

正直早く帰って寝たい。

「やってみないとわからないだろ?」

「はいはい。んじゃ始めますか……先手は譲るよ。どこからでもかかってきていいぜ?」

その瞬間あたりが一瞬で緊迫する。空気が金縛りにでもあったように……これだからバトルはやめられねぇ。この命をやりとりする緊迫感、焦燥感。たまんねーぜ。盾役のゴリアテが前に出て、俺が中間、ミラが右寄りの位置に構えて、最後に回復役のリサが一番後ろに陣取った。

「んじゃお言葉に甘えて……作戦通りいけ! カーラ! サキュバスアタックでゴリアテを洗脳しろ!」

何っ? 前回そんな技は使ってこなかった! レベル上げでもしたのか?

「ゴリアテ! 下がれ」

ゴリアテはスタミナタイプのガード役。打たれ強いが状態異常には弱く、素早さも遅い。思いっきり弱点を突かれたな……こうなったら状態異常に強い俺が前に出て盾になる! 俺たちのコンビネーションをなめるなよ!

「こい! 俺に状態異常は効かない!」


——無視して突っ込んでくるサキュバスの小娘。こいつ馬鹿か? 勇者の俺に状態異常は本当に効かない。こんなことも知らないで戦いを挑んでいるのか?

「リーサルラヴァー発動! このスキルは目の前の遮蔽物を貫通して強制的に発動できる! 発動に成功した場合、対象者の能力を解析することができる。解析後、ゴリアテのコントロールを得る。さらに、ゴリアテは操られていることには気づかない」

「何っ? くそっ考え無しじゃなかったってことか?」

俺は慌ててゴリアテの方を見た。ゴリアテはキョトンとしてこちらを見ている。

「対象者解析! 名前ゴリアテ=ゴモラ 所持スキルは……

【金剛力士】自信がパーティーメンバーだと認識する集団のダメージを全て身代わりに受ける。ただしダメージは通常より多くなる。

【ソドム】

能力発動前に任意の時間瞑想しておく。瞑想二十四時間毎におよそ一回死ぬまでのダメージを受けきる鎧を生み出す。瞑想が長ければ長いほど、技の練度が高いほど防御力は追加で高まる。

【ゴモラ】

自分が受けたダメージの総量が一定値を超えたら発動可能。そのダメージ量の三倍のダメージを相手に与える。ここでいう一定値はレベル、技の熟練度、使用者の健康状態、精神状態によって変わってくる。絶対に仲間を守るという強い気持ちがあるほど早く発動可能になる。

の三つ! コントロール完了! 」

「よし! よくやったカーラ! 次にそのスキルを使ってザックを攻撃させるんだ」

魔王のガキが叫んだ。くそっ! 同士討ちさせるスキルか……相当レベルを上げたようだな……こんなスキル見たことも聞いたこともない。チート効果のオンパレードじゃないか! 魔王の一族はガキでも油断するなってことか?

「いけっ! ゴリアテ! 【ゴモラ】を発動! ザックを攻撃!」

くそっ! やられた。どうやら本当に洗脳したらしい。ゴリアテのスキルが全部バレてしまった。こうなったらゴリアテには戦闘終了まで眠っていてもらう。すまん! それでも経験値は入るはずだ。

「ミラ!」

ゴリアテを傷つけずに戦闘から離脱させるにはお前の能力がいる。

「わかっているわ! ゴリアテを眠らせるのね! スリーピングライオン発動!」

「おい! やめろ! お前ら! ぐあっ」

そう言うと、ゴリアテはおとなしくその巨体を地面に沈めた。くそっ。予定外だ。早々に一人やられるとは……

「おい! 一人倒したからって良い気になるなよ!」

……しまった! サキュバスの小娘に気を取られて魔王のガキがいない。どこに行った? 俺は辺りを見渡した。前、右、左、いない。……ということは、後ろか!

「【回復】発動……【回復】発動……【回復】発動……【回復】発動……【回復】発動……」

「何をやっている? リサ? なんで自分を何度も回復している? ダメージは食らっていないだろう?」

「【回復】発動……【回復】発動……【回復】発動……【回復】発動……【回復】発動……」

なおも【回復】を使い続けるリサ。こちらの声は届いているはず。なのになぜ回復を発動し続ける?

「おい! やめろ! 魔力が尽きる!」

そして、ついにリサは【回復】が発動しなくなった。魔力が切れたのだ。

「おい! 一体どうしたんだ? ……しまった。サキュバスの小娘の洗脳か!」

くそっ! こうなったらリサも気絶させるしか……すまない。俺はリサの方へ駆け寄って剣は使わずに拳を振りかぶった。

「きゃ〜〜待って待って! 洗脳されていないわ! それにもう魔力がないから何もできない。洗脳されていても、されていなくてももう関係ないでしょ?」

うーん……一応気絶させておいたほうが良さそうな気もするが……勇者だし……な。

「そうだな……わかった。お前はできる限りここから離れるんだ。その代わり、あとで呪文の連発の理由を聞かせてもらうぞ?」

リサは頷くとダッシュで逃げて行った。俺もつくづく甘い男だな。

「優しいんだな……」

——ようやく魔王のガキが茂みから出てきた。こいつサキュバスの小娘を放っておいてずっと隠れていたのか……。

「そういうお前は、コソコソ隠れていたのか?」

「いや……魔力を溜めていたのさ……必殺のスキルを発動させるためにな……」

「必殺のスキルだと……!」

「ああ……を使えばミラを洗脳できる……さっきのリサを洗脳したようにな……」

くっ。やはり洗脳されていたか……

「ミラ! 俺の後ろに下がれ!」

俺に洗脳は効かない。俺が盾になり、ミラが後ろから黒魔法を連発すればまだ勝機はある。それに、まだ二対二だ。

「そんなことしてもいいのか? 参考までに俺のスキルを教えてやるよ。魔王の一族にしか使えない。一点物だ」

魔王の一族にしか使えないだと……そんなスキルが存在したのか?


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