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サービスシーン

「わしの魔法で蘇らせてやったから良かったが魔王の息子じゃなかったらとっくに消滅しとるわい」

……うう、ありがとうございます。

「それになんじゃあの情けない姿は……」

そういうと魔王は地面に寝転がって這いつくばっていた俺の真似をしだした。え? 嫌な予感。

「お助けー! お助けー! お助けー! お助けー!」

くっそー。見ていたのかー。このジジイー。床で暴れまわり、のたうちまわっている。俺そんなことしてなかっただろ……


メイド達は下を向いて必死で笑いを堪えている。くぅぅぅぅ……恥ずかしい

ようやく満足したのか魔王は立ち上がると——

「お助け、じゃなかったマオよ。こんなところで諦めてはそれこそ笑いもんじゃ……今回は少し多めに回復薬を渡しておく。メイドから受け取ってさっさとゆくがよい」

あんた今、息子の名前間違えただろ。

「わかりました。父上。今後このような失態は無いように、全力で憎き勇者を討ち滅ぼしてみせましょう」

「うむ。期待しておるぞ」

そういうと、玉座を後にした。玉座の方から『お助けー! お助けー! お助けー! お助けー!』と聞こえてくる。まだやっているのか。あのジジイ。

それにつられて、メイド達の笑い声が聞こえてくる。きっと堪えきれなくなったのだろう。早く、冒険に戻ろう。


——そして、廊下を一人歩いていると衛兵が声をかけてきた。

「お助け、じゃなかったマオ様。回復薬と装備の準備が整いました。宿の予約も済ませましたので、今度こそお気をつけて」

お前、今お助けって言おうとしただろ! まあいい。さっさと行こう。

「ああ。わかった。では行ってくる」

門まで行くと別の衛兵がいて魔法陣を用意しておいてくれた。良かったもう歩かなくてもいいのか。今度は街までひとっ飛びだ。


「マオさ……お助け様。魔法陣の準備ができました。それでは気をつけて行ってらっしゃいませ」

「おい。お前なんで正しい方を訂正した? まあいい。では行ってくる」

そうして俺は魔法陣に飛び乗った。魔法陣は俺の体を包み込むと、色とりどりの綺麗な教会のステンドグラスのようになった。空へガラスの柱が伸びると一瞬で俺の体は飛ばされた。世界が歪んで引き伸ばされたような感じだ。もうさっきの失敗は忘れてこの街から再スタートだ。お助けーなんて言ってくる奴はいない! やってやる! まだ見ぬ世界よ! 待っていろ! 世界を征服するのはこの俺様だ! 邪魔をする奴などいない!


[最初の街ダリ]

——そして、街に到着すると……一瞬で村人に取り囲まれた。

「あ! お助けがきたぞ! お助けー! お助けー!」

村の青年までもが俺のことをお助けと呼んでいる。

「お助けー! お助けー! お助けー!」

小さい子供も嬉しそうにはしゃいでいる。

「私も生のお助けを聞きたいわ。ね? ちょっとお助けって言ってみてくれる?」

お姉さんがワクワクしながら聞いてきた。

「え? なんで知っているの?」

俺は戸惑いながら村人に聞いた。

「もう街中大騒ぎよ。あなたの話はもうみんな知っている。金髪の青年がみんなにふれ回っていたわよ」

あのやろー! 言いふらしやがったな。つーかなんで魔族が勇者と接触しているんだよ。敵同士だろ!

——やっとの事で人だかりを抜けると街の真ん中にボロボロになったサキュバスの子がいた。

「あ……エロくないサキュバス……」

「そういうあなたはお助けね……」

カーラはしょんぼりしていた。つーかお前までお助けって呼ぶのかよ。

「お助けっていうな。それよりお前も勇者にやられたのか?」

「やられたってなによ? やられてなんかないわ。逃げ出したわよ」

俺の発言に少しムッとしたのか負けじと言い返してきた。ほんの少し可愛いと思ってしまった。

「そうか……あいつら強かったな」

「ええ。連携がしっかり取れていて攻守のバランスがよかったわ。それに、あのコンビネーション。隙が全く無かったわ」

全く同感だ。

「なあ、お前……カーラはソロで冒険しているのか?」

「ええそうよ。だって……」

そういうと下を向いて、恥ずかしそうにしている。

「サキュバスなのにエロくないから仲間に入れてもらえないんだな?」

俺は核心をついた。カーラは返事をする代わりに黙ってコクリと頷いた。

「なあ。俺がパーティーを組もうって言ったらどうする?」

「パーティー? 魔族だから魔物の群れっていうんじゃないの?」

「そんなのどっちでもいいだろ? 一緒に組もう。俺の魔王スキルとカーラのサキュバススキルがあれば勇者になんて負けない! そしてレベルを上げてあいつらより強くなるんだ。それともカーラもお助けになりたいか?」

俺は、ナンパ師のようにグイグイいった。

「うーん……そうね……いいわ! 乗った! あの生意気な勇者を今度こそギャフンと言わせてやる。 いえ! お助けって叫ばせてやるわ」

「うん! やってやろう! よろしく! カーラ!」

「ええ! こちらこそよろしく! マオ!」

ようやくお助けを脱出できたような気がして少し嬉しくなった。

「それはそうと今晩宿はあるのか?」

「ううん。ないわ。それをどうするか考えていたとこなの」

「よかったら一緒に来るか?」

俺は内心ドキドキしていた。最初の街でいきなり女の子とのお泊まりイベントが発生しそうなのだ。しかも、あのサキュバスと。宿に着いたらお助けーって叫ばせてやるよ!

「うーん……そうね! 同じパーティーの仲間だしね。ならお言葉に甘えさせてもらうわ」

今、初めて気づいた。カーラは可愛い。さっきまでお子様だから意識していなかったがめちゃくちゃ可愛い。仲間になってから急に可愛く感じてきた。


——そして、宿というより高級ホテルに着くと、

「あの……予約していた。マオです」

「マオ……さま。名簿にございませんね……」

嫌な予感がする。あのジジイのことだ。きっと嫌がらせしてくるに違いない。

「あの……お助けです」

うう……後で覚えていろよ。

「お助け様ですね。ええ、魔王様より仰せつかさっております。では、お部屋へどうぞ」

——部屋に着くとそこは豪華絢爛。一体いくらしたんだ、この部屋は? 隣を見るとカーラが目を輝かせていた。きっとこんな部屋見るのも初めてなのだろう。

「では、ごゆっくりお寛ぎください」

そう言ってボーイは部屋を後にした。俺たちは二人だけになった。

「ええーとじゃあ早速シャワーを浴びて来るね」

「ええ! わかったわ。ごゆっくり」

すごくご機嫌なカーラ。俺はドキドキしてきた。カーラがシャワーを浴びている時間はそんなに長くはなかった。だけど、俺にとってはすごく長く感じた。シャワーの音に聞き耳を立てて心臓をばくばくさせていた。女の子が浴びているシャワーから出る水が地面に当たる音は、こんなにも心地いいものなのだったのか。もう魔王にならなくていい。女の子のシャワーの音を聞く屋さんになりたい……そう思った。

「終わったわ」

シャワーを浴び終えたカーラの髪の毛は濡れていて、妖艶な雰囲気を醸し出していた。髪は黒色で艶がある。最高だ。英語だとグレート。フランス語だとシュペルブ。モンゴル語だとカムジンイク。何が言いたいかというと最高だ。

「なら次は俺が行くね」

平静を装いながら、シャワー室へ向かった。ばくばくする心臓を抑えてシャワーを終えた俺はカーラの待つ寝室へ向かった。


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