女スパイ・レーナ 2/3
それから30分後。
「ん……」
意識を取り戻したレーナの正面に、無骨なコンクリートの壁が見えた。
椅子に座らされているレーナは、背もたれの後ろに腕を回され、手首を結束バンドで縛られていた。足首は、座面が硬い椅子の脚と繋がれている。
全身を包んでいたボディースーツは脱がされ、レース生地の黒い下着姿にされていた。
彼女が囚われているのは、部屋の中央に排水口がある拷問部屋で、様々なものが混じった妙な臭いが漂っている。
「よう。よく眠れたか?」
レーナは半身をねじって、背後に立っているやや細身の男を見る。
「ええ。おかげさまで」
男は手に縦長の機械を持っていて、その後部辺りから細いコードが出ていた。その先は、レーナの身体に貼られたパッドに繋がっている。
なるほど……、「電気椅子」で拷問をするわけね……。
自身がこれからどういう目に遭うかは、火を見るよりも明らかだった。
「どうせなら、もっと趣味の良い部屋に泊めて貰いたかったわね」
「気が利かなくて悪かったよ。レディー」
悪人とはいえ、ホテルを出禁にはなりたくないもんでね、と言って、ニヒルに笑う男は、早速レーナへの拷問を開始する。
「あぁ――ッ!!」
全身に電気が走る痛みで、レーナは叫びながら身をのけぞらせた。
「ふ……ッ! ふッ、う……」
「どうだ、吐く気になったか?」
責めを一旦中断した男はレーナの正面に回り込み、激しく胸を上下させて俯く彼女の髪を掴んで、無理やり顔を上げさせてそう訊ねる。
「……う」
汗だくで憔悴している様子のレーナは、ゆっくりと首を横に振った。
途中で噛まされたボールギャグの穴から漏れる唾液が、胸の谷間を伝って流れ落ちた。
「へっ、大したタマだな」
男が手を放すと、レーナの頭は力なく下を向く。
「は……」
後ろに回った男は、少し休憩させてやろう、と余裕綽々《よゆうしゃくしゃく》な様子で言って、レーナのボールギャグを外した。だらしなく開いた口から涎が糸を引く。
しばらくして、レーナの息が整った頃、
「ねえ……。あなたに……、頼みたいことが、あるんだけれど」
彼女は甘い吐息を漏らしながら、上目遣いに男を見上げてそう言う。
「何だ?」
「さっきので、高ぶっちゃって……。辛いの……」
上気した肌で腰をくねらせるレーナに、言うまでも無く男は劣情を催した。
「俺にどうしろと?」
フラフラと寄ってきた男に、レーナは足の拘束を外すように頼む。
「わかった……」
冷静さを失った男は、言われるがままレーナの言う通りにする。
「さあ……、おいで……」
彼女は足を大きく開き、まるで夢魔の様に自身のソコへと誘う。
男はその甘い蜜に引き寄せられ、いざありつこう、とした瞬間、
「がッ、ご……ッ」
レーナの脚がスルリと絡みついて、男の口と鼻を塞ぎ、同時に頸動脈を締め上げた。
ややあって。
「――あぁ……っ」
男が気を失うと同時に、レーナは身体がビクッ、と震え、一段と艶っぽい声を漏らした。
レーナは男の着ている服を奪って、麻薬製造工場の中央制御室に侵入する。
後は手順通り、データを吸い上げるだけになった。
「……」
だがその暗闇に、この組織のボスの男が潜んでいたのに、レーナは気がつかなかった。
ボスは銃をレーナに向けながら、モニターに向き合っている彼女の背後を取った。
「おっと、動くなよ」
先ほど吸ったガスのせいで、それに気づくのが一瞬遅れ、レーナはボスに後頭部に銃口を強く押し当てられた。
彼女はとっさに振り返って、延髄蹴りを喰らわせようとしたが、
「く……っ」
それを鍛えられた腕で受け止められると、レーナはあっさり床へ投げられてしまった。
「ふんッ」
「うあ……ッ。ぐ……ッ」
「2度目は言わないぞ?」
レーナの腹に蹴りを入れたボスは、再び銃口を突きつけてレーナにそう告げる。
「……もう、バレたのね」
するとレーナは、無抵抗で大人しく両手を床に付けた。
腹の痛みで額に脂汗を浮かべているが、強気な態度と表情は崩さない。
もう少し、慎重に行くべきだったわね……。
彼女は先急いだことを後悔したが、結束バンドで後ろ手に拘束されてからでは、もう何もかも遅かった。
「それで、あなたは私をどうするつもり?」
半ば無理やり立たせられたレーナは、
「お仲間と回しても、何も吐かないわよ」
背後に立つボスの方を振り返り、誘うように彼へとそう言った。
「うむ。それも一興だが……」
そう言って、身体を密着させてきたボスの手が、レーナのパンツの中に入ってきた。
「ン……ッ」
「俺のテクニックに溺れても、黙っていられるかな?」
「あ……ッ」
中をまさぐられながら耳元で囁かれるだけで、レーナは軽く達してしまった。
*
「人払いは済ませた……。じっくりゲームを楽しもうぜ」
別の拷問部屋に連れ込まれたレーナは、机にうつ伏せに倒され、手足を机の脚に拘束された。
「ええ、そうね。でも、簡単には終わらないと思っておいて?」
「その余裕もいつまでもつかな?」
不敵に笑ったボスは、レーナのパンツを下着ごと下ろした。
「んん……」
「よく濡れているな」
「んあ……っ」
ヤルときが楽しみだな、と良いながら、ボスはレーナの《《そこ》》を探り始めた。
「あ、ああ……。んふ……ッ」
まだ陵辱が始まったばかりだというのに、彼女はすでに己の限界値が見える程、身体が高ぶってしまっていた。
落ちるまではないにしろ……、道具を使われたら、負けは間違いなさそうね……。
冷静に分析したレーナだが、まもなくやってくる快感を心のどこか期待し、武者震いをする。