勇者➇
決勝まで行きます。
17/12/12 勇者編を番外編として移動するために、この話は一度消されました。
元掲載日 : 17/12/10 16:19
ネストは足を踏み込み、力いっぱいで剣を振る。
剣から放たれるそれは、剣闘場の土を巻き上げ、一瞬にして相手の視界を奪う。
そしてネストは、一気に距離を縮め、フォンを叩きつける。
「なーんちゃって」
しかし、叩き下ろしたと思ったものはフォンの肉体などではなく、フォンが生み出した風魔法の分身だった。
「今度はこっちの番だよ!!」
ネストの左肩に剣が振り降ろされる。
それを剣で弾く。
だが、それはフェイント、本命は。
「こっちだよ!」
横腹に何かがめり込む。
それは固く握られた拳。
吸った空気を吐き出すネスト。
「どお? おじさんのパンチ重いっしょ~! これでも鍛えてるんだよね~」
何て余裕のある喋りだろうか。
幸い、ネストはスキル【全耐性】のおかげで痛みはそこまでない。
【瞬間再生】もあるおかげでダメージは瞬時に回復する。
「ずいぶん余裕たっぷりですね……」
「まあね! 君初心者だし、読みやすいんだよね~!」
ネストとフォンの差、それはスキルの数でもステータスでもない、経験だった。
確かにネストは、優れたスキルとステータスを持っている。
しかし、ネストは自らのスキルを使いこなせるわけではない。
ましてや、ネストのステータスは急に渡された扱いきれない強大な力だ。
対し、フォンは鍛錬に鍛錬を積んだことにより、やっと得た力だ。
一朝一夕で覆せるものではない。
「まだだ!!」
「いいよ。 かかってきな」
焦るネスト、どうにかして一撃を。
しかし、その考えはネストの動きをさらに単調にさせる。
一撃一撃重くはあるが、フォンによってそれは簡単にいなされる。
ネストは態勢をを崩し、フォンはその隙を突く。
こうして地面に倒されるのは何回目だろうか。
「うーん、なんか思ってたのと違うなぁ。 もっと頭を使わないとさ~」
あくびをしなあらフォンが言う。
地面に転がるネストは、その頭で考える。
さっきまで上っていた血はもう、引いた。
冷静に状況を判断する、フォンを倒す方法。
そしてネストは、無意識に【思考神】を使うことになる。
「あれ~、ずっと寝っ転がって何してんの?」
ふいに近づくフォンの足首を掴む。
気づいた時にはもう遅い。
ネストはその状態で、フォンの顎を蹴り上げる。
鈍い音が剣闘場に響く、と同時に退屈そうにしていた観客たちの歓声が沸く。
思わず体をひるませるフォン。
「くぅ~! これは効いたね!」
蹴られた顎をなぞる。
二人はしっかりと剣を握る。
今度のネストは、さっきまでとは一味違う。
その目はしっかりとフォンをとらえている。
そして、ネストは踏み込み、もう一度砂を巻き上げる。
「だから無駄だよ!!」
フォンは風魔法を使い、砂埃を払う。
視界が戻ると、そこには何もなかった。
文字通り、ネストもおらず。
次の瞬間、フォンはある感覚に襲われる。
鈍痛。
「ク八ッ……!」
何が起きたのか分からない、思わず呼吸が止まる。
ネストは砂を巻き上げ、その間に飛んだ。
フォンは砂埃を払い、ネストがいないことに意識がいった。
そしてこの瞬間をネストは突いたのだ。
脳天を剣の側面で叩き下ろされたフォンは、その場で膝をつく。
「こ……これは、効くねぇ」
不意を突かれた一撃、ノーガードで受けたそれはフォンに多大なダメージを与える。
ネストは追い打ちをかけるように【覇気】で相手を威圧する。
「降参しますか?」
へへ、まさか。 と震えた声で答えるフォン。
流石に耐性がないのか身体が震えている。
立ち上がることもできず、その場から動けない。
止めに相手を気絶させ、ネストの勝利に終わった。
試合が終わり席に戻る。
「おめでとう」
迎えてくれたのはジェスだった。
「ありがとう、でも勝てたのは僕の力じゃないよ……」
「それって……?」
「君が次の対戦相手か、手を抜いていたとはいえ、親父を倒すなんて。 油断はしないからな」
急に現れた短髪の男、ミリアムはそれだけ言い残し控室のほうへ向かった。
「ネスト、あいつの動き油断するなよ。 勝ってこい!」
『決勝! ミリアムとネスト、前へ!!』
「行ってくるよ」
そして、ネストも剣闘場に向かう。
既にミリアムはそこに立っていた。
「俺は最初から本気でいくぞ」
『始め!!』
毎回、相手の動きを見てから動いていたミリアムだったが、今回はそれを待たずして動いてきた。
「はあぁああ!!」
彼は目にも留まらぬ速さで攻撃を仕掛ける。
このままでは不味いだろう。
もし、ネストがさっきのままだったなら。
「な、なに!?」
ネストは、すべての攻撃を避け、又、剣で弾く。
なぜこんなに動けるのか。
元々、ネストはジェスの居合を簡単に見抜け、【思考神】も使っていた。
先ほどの戦いでも、ミリアムを指導していたフォンの動きを少なからず見てきた。
頭に血が上り冷静じゃなかった前とは違う。
その為、ミリアムの動きは手に取るようにわかるのだ。
「先ほどとは、違う様だな」
ミリアムも異変を感じ、すぐさま適応する。
戦い方を変える、慎重に相手の動きを読み取り、行動する。
しかし、これは逆効果。
ずっと見てきた動きはこれだ、それにネストの思考能力は飛躍的に上がっている。
ミリアムはネストに誘導され倒されるだろう。
「クソ! なぜだ?!」
早速術中にはまるミリアム、ネストは相手の攻撃を弾く、次に攻撃しやすいところを見せ、そこにうまく誘導する。
そして。
「! しまった……!」
ミリアムの背後には壁が、ネストは覇気で威圧し相手を行動不能にする。
こうして、決勝が終わった。
結構あっけなく終わりました。
何か裏に隠された思いでもあるのかな。




