勇者⑤
ネスト君の話は続きます。
17/12/12 勇者編を番外編として移動するために、この話は一度消されました。
元掲載日 : 17/11/30 00:00
剣闘場には既に受験生が集まっていた。
ゴツゴツのいかにも強そうな人や、ネストよりも小さい子がいたり、様々な人がいた。
「すごいんだなぁー……」
ネストが独り言を言っていると、横から一人話しかけてくる男がいた。
「ん? お前も初めてなのか?」
「え? はい! ところであなたは?」
「俺はジェス! よろしくな!」
「ネストって言います。 よろしく!」
ジェスは腰に剣を下げており、黒髪で短髪の少年だった。
「? ああ、この髪? 黒髪って珍しいよな」
「あ、すみません……。 ついつい……」
茶髪や金髪等の、色素の薄い色が基本のこの国において、彼の髪色は珍しかった。
ネスト自身も、今まで見たことがなかったため、凝視してしまっていた。
「いいよ。 気になるのはわかるし、慣れているからさ!」
ジェスはそういい笑い飛ばしてしまった。
ネストはというと、なんだか申し訳ない気持ちでいっぱいになってしまっていた。
この雰囲気を切り裂くかのように、とてもよく通る大きな声がネストの耳を貫く。
「みぃなさんっ!! よく集まってくれた!! それでは、早速試験を始めていきたいと思う!!」
そういって出てきたのは、40代程だろうか。
おしゃれな髭を生やしたおじさんが、両手を広げ出てきた。
「皆さん知っての通り、王国騎士団の副団長でっす! え? ノリが軽いって? 気にするな!! はははは!!」
なんとも目まぐるしく舌を回す人だろう、とネストは感じながら話は続く。
「これから、皆さんには試験を受けてもらう! 大きく分けて三つ! 一つは筆記試験! 二つに技術試験! 三つに対戦形式の試験! とりあえず一つ目行ってみようか! 受かること祈ってるよ!!」
そういい副団長は消えてしまった。
ネストは。 「え? 終わり!?」 なんて叫んでいたが、周りはいたって真面目。
筆記の試験会場があるであろう所に向かっていた。
「ネスト。 俺たちも行こう!」
「あ、うん!」
場所の分からないネストは、みんなについていくしかなかった。
少し歩くと少し大きな小屋のようなところがあり、みんなはその中に入っていった。
ネストも同じように入ると、そこには長いテーブルがいくつもあり、上に用紙が置かれていた。
「ここで試験を?」
「ああ、そうだよネスト! さあ、座ろう」
置かれていた椅子に腰を掛けるネスト。
先ほど入ってきた扉から、一人の女性が入ってくる。
「皆さん初めまして。 私はバネッサと言います。 これから皆さんには筆記試験を受けていただきます、時間は50分間。 用意ができましたら始めます」
そういい、皆が準備出来たとこで隣にあった砂時計を、バネッサがひっくり返す。
ネストは食い入るように用紙を見る。 そして。
あぁ、わからねえ。
ネストはそこから、簡単な問題を数問答え50分間を過ごした。
多くの人がペンを走らせる中、時間になりバネッサが 「そこまで!」 そこでピタリと静寂が訪れる。
終わると隣にいたジェスが小声で。
「どうだった? 俺は結構答えられたけど……」
「僕は……」
話しているのがバレて。
「そこ! 静かにしてください」
手で口を押えるジェス。
なはは、とかすれた笑いをしながらネストたちは、次の会場に向かう。
そこには藁人形や丸い標的の書いてある板が並んでいた。
そして、次の試験官が現れる。
「それでは、次の試験を始める!」
その男。 いや、大男は大きな口を開いて喋った。
「そこにある人形や標的に、得意な技をぶつけてくれ! 私はそれを審査する!」
そして、大男は椅子に座った。
少しして、 「よし、やってやる!」 と何人かの人が人形や標的の前に出た。
あるものは剣で人形をなぎ倒し、あるものは得意な魔法で標的を破壊した。
半数の人が終わったころ、ジェスが人形の前に出る。
彼は腰につけていた剣を取り、構える。
そして、目にも留まらぬ速さで人形を切り捨てた。
実際にはネストの目には留まって見えていたが、ほかの者たちには彼の動きは見えなかったはずだ。
瞬間周りからは、 「おお~……」 という声が勝手に出てきていた。
「ジェス、おつかれ! すごいね!」
「そんなことないよ。 さあ、次はネストの番だよ!」
と、ジェスはネストの背中を押してくれた。
ネストは一歩前に出ると、無償で貸し出されている剣を手に取り、人形の前に立つ。
そして、彼は普通に剣を振る。
あくまで”普通”にだ。
ズギャンッ!!!
周りには砂ぼこりが立ち込め、視界が制限される。
何が起きたのか、きっと誰も把握できていない。
ネスト普通に剣を振ったのだ。
しかし次の瞬間。
振りかぶった剣から、剣筋を沿うように真空の剣が飛び出したのである。
当然、その衝撃に耐えれず、人形は木っ端みじんに消滅し、使った剣も耐えられず、砕け散った。
真空の剣は人形を切り裂き、そのまま地面を抉りながら壁を破壊した。
そして真空が通り空気が切り裂かれ、そこを埋めるかのように別の空気が入り込もうとし、勢いの強い空気の流れがでた。
それにつられるように舞っていた土やほこりが集まり、このような結果になったのだ。
やってしまったなネストよ…………。
ゆうしゃってすごい。




