勇者③
ネストのお話です。
17/12/12 勇者編を番外編として移動するために、この話は一度消されました。
元掲載日 : 17/11/21 23:51
「そうじゃ、ネストよ」
「何でしょうか?」
「先ほど入団させたいと言ったが、流石に何もせずに入団するのは不味いのじゃ。 なので、お主には皆と同じ入団試験を受けてもらう」
「よろしいですが、僕はただの凡人です……」
実際ネストは、今まで強大な力を使ったなんて覚えもない。
それこそ少し体力があるだけで、いたって普通の人間だった。
「恐らく……」 とアストリアが言った。
「ネスト様は 【能力制御】 というものが働いていて、それで本来の力を発揮できないのではないでしょうか?」
なるほど、とネストが頷く。
ネストはこの能力制御を解除してみようとした。 が、そう念じた瞬間頭の中に誰かが語り掛けてきた。
{呪いにより、能力制御を外すことができません}
瞬間ネストは飛びのけるように声を上げた。
「うひゃあ!!」
「どうかされましたか?」
アストリアが慌てて心配をしてくれた、ネストは今起きたことをその場で話した。
「それはもしや、言い伝えにある天の声ではないじゃろうか……」
ネストも含め、全員がそれは何かと尋ねた。
「うぅむ、古代の大賢者様には天の声というものが聞こえていたらしいのじゃ。 その声は中性的な声で、無機質の様な声だったらしいのじゃ」
「確かに、そんな声だった気がします……」
「そうか……。 天の声様は呪いで外せないと言ったのじゃな?」
はい、と答えるネスト。
「それならば、解呪師の所に行ってみるといいじゃろう。 ネフィスは確か解呪師の知り合いがおったな?」
「はい、一人ございます」
「そうか! それならば、ネフィスよ彼を案内してはくれぬか?」
仰せのままに、と頭を下げるネフィス。
因みに、と国王が続ける。
「入団試験は一週間後、それまでに戻ってくるのじゃぞ」
*****
ネフィスと共に王国を出たネスト。
「それでは、これから私の知り合いの所に行く」
「もしかして、また……?」
ネストは再び空の旅をするのであった、一時間後。
「さあ着いたぞ」
「うぷ……、終わりですか……?」
その場所は森だった、とても人が住んでいるとは考えられない。
しかし、ネフィスはここだと言い、森の奥へ進んでいく。
森に入ってか30分程したところである、頭の中に人の声が響く。
【この森に入るものよ、今すぐこの森から去るのだ】
天の声とは違い人間臭さのある声だった。
「安心しろ、これは防衛のために働いている装置だ。 もう少し歩いたら着く」
「はあ……」
ネストは半信半疑だった。 それからもう10分程したときである、森が開いて民家が見えてきた。
「さあ、着いたぞ」
どうやら目的地に着いたらしい。
その家はまるで物語に出てきそうな、魔女の家のような家だった。
ネフィアが戸を叩き自分の名前を言うと、 「なんだ、ネフィスか!」 と中から一人の女性が出てきた。
彼女はとんがり帽子に、紫のローブを着ていた。
「実は……」
とネフィスは事情とネストの紹介を行った。
「そうだったのか……。 よし、私が解呪できるかは分からんが見るだけ見てみよう」
そういい、ネストを自分の前に座らせた。
目を閉じてジッとしていて。 という女性。
それから30秒くらいしてから、もういいよと一言。
「どうでした?」
「うーん、なんかすごい簡単な呪いがあったけど、もうとれたはず」
ネストはもう一度、能力制御の解除を念じてみた。
すると。
{能力制御〈一般人〉 から 〈無効〉 に変更いたしますか?}
{Yes Or No}
「い、イエスで……」
その瞬間、体に力がみなぎるのを感じた。
その感覚はなんとも不思議で、ここまで歩いてきた疲れが一気に回復し、頭の中の雑念がすべて消え失せたような。
言葉では表現できないなにかがネストの中で起きた。
「ぼ、僕が僕じゃないみたいだ……」
気が付くと、二人はネストを見てギョッとしていた。
それを訪ねると。
「なんだか急に体が動かなくなっちゃって……。 足なんかも震えが。」
どうやら、ネストの能力制御を急に解いたため、様々な能力も一緒に発動してしまったらしい。
その中にある覇気を知らず知らず放っていたため、二人は硬直していたのだ。
しかし、ネストはそのことを知るすべはなく。
「え? 何でですかね……。 もうちょっと待ってたら治るかもしれないですね!」
と言い、彼女たちは丸一日の間ネストの覇気にさらされることになった。
朝起きると、耐性が付いたのか少しはマシになった二人。
「そういえば、名前を聞いていなかったですね……。 なんて言うんですか?」
「私の名前は、タリアよ」
「タリアさんですか! 僕の呪いを解いてくれてありがとうございます!」
タリアに解呪の礼を言い。
「解いてくれた礼に朝食作りますよ! 何か食材はありますか?」
「その棚に一通りは」
棚には様々な食材が保管されていた。 魔法により食材は腐ることなく、新鮮な状態を常に維持しているようだった。
「それじゃあ、僕の村の郷土料理を作りますね! 少し待っていてください、あとネフィスさんを起こしてきてもらってもいいですか?」
「了解した」
タリアはネフィアを起こすために寝室へ向かう、ネストは郷土料理を作るため食材を棚から出した。
その料理は豆をふんだんに使った煮込み料理で、赤い色が特徴的な料理であった。
豆を煮こみ、別で専用のソースを作る。
最後にソースをかけ、ハーブを載せたら出来上がりだ。
丁度ネフィアが起きたらしい、すごい寝ぐせで現れた。
「丁度料理ができたのでかけてください」
テーブルに皿やフォークを並べる。
白い皿に赤いソースのかかった豆、とても見栄えがいい。
みんなが席に着くと、亜人の国の儀式を行う。
「「「我らに大地の恵みをいただきありがとうございます、味わいます」」」
そして、フォークを手に取り豆を刺す。
ゆっくり口に運び、味をかみしめる。
少しずつ咀嚼すると、豆の旨味とソースの豊潤な香りが口いっぱいに広がる。
二人は同時に 「うまい……」 と一言。
それにこたえるように、 「それはよかったです」 とほほ笑むネスト。
ゆっくり食事を終え、皿をかたずける。
あっけなく呪いは解け、朝食を終え王国に帰る。
最後にネストとネフィスは、タリアに礼を言う。
「タリア、協力してくれてありがとう」
「どうってことないわよ。 それに、おいしい料理も食べれたしね! 楽しかったわよ」
「あんな料理で喜んでもらえるなら、いつでも作りますよ!」
「そ……、そぅ?」
少し顔を赤く染めてタリアは答えた。
「まあ、何はともあれ。 ありがとね、それじゃまた!」
そういい、また宙に舞う。
高速で風を切りながら王国へ帰る二人。
「また、タリアさんに会えるといいですね~」
「案外早く会えるかもしれないわよ」
ネストは何のことだかわかっていないようだったが、その言葉は何日後かに実現するのだった。
タリアは赤髪のとんがり帽子をかぶった女の子です。
もちろん、ひんぬーの幼気な少女。




