忍び寄る闇
またまた久々ですね。
「李糸さん! 本気でいきますよ!!」
「ほどほどにな……」
「二人とも準備はできたか。 それでは初める」
シェリーが腕を上に挙げ始まりの合図をする。
「初め」
グランツは早速李糸に迫りかけた。
「攻めるんだな、グランツ!」
両者の拳が交わり、空を切る音が鳴る中会話する二人。
「李糸さん相手だと考えても仕方ないですからね!!」
こうしてるのを見ると、お互いに本気は出していないことが伺える。
「そんじゃ、今度は俺から行くぜ!」
李糸は小さく息を吐くと、グランツに右左右とパンチを繰り出す。
が、グランツはそれをものともしない。
「李糸さん手を抜いてますか!」
「フッ、まあな!」
それじゃあ本気にさせますよ! とスピードを上げるグランツ。
放たれる拳、肩から先は残像としてうつる。
音よりも数倍速く、視認してから受け止めるほかない拳。
それを難なく受け流す。
「なかなかやるじゃん! んじゃ、期待に応えて少し本気を出してやろう!」
瞬間、グランツは後ろに引いた。
「全く、油断も隙も無いですね……」
先ほどまで汗一つかいていなかった額には、びっしりと脂汗が噴き出していた。
「今の避けられちゃうかぁ。 やっぱ強くなったな!」
今回の模擬戦のルール。
それは、攻撃スキル、武器を使わなければ殺さない限り何をしてもいいというものだった。
李糸は攻撃スキルこそ使えないもの、隠密スキルなんかは使い放題なのである。
「あのまま気が付かなかったらやられてましたよ」
「それじゃあ、これはどうだ!」
瞬間、グランツの目の前から李糸は姿を消した。
そして気が付くと、体は地面に倒れ伏していたのである。
「……え? 一体……何が……」
「流石にまだ無理か」
まだまだ修行あるのみだな! と笑う李糸。
しかし、グランツは未だ何が起きたのかを理解できずにいた。
「何をしたんですか……?」
「ん? そうだな、とりあえず隠密系スキルを全部使ってみた」
その言葉を聞き。
ああ、やっぱりこの人は頭おかしいわ……。 と再確認したグランツ。
「おい、李糸」
「あ、はい。 なんですか隊長」
「どうせ分からずやっているのだろうから言うが、”普通は”複数のスキルを重複して使用したり、連続で魔法を使うことはできないものだぞ」
このことを初めて知った李糸はもちろん。
「……またやっちまった……」
などと言い、頭を抱えていた。
話は戻るが、スキルや魔法の過度の使用は脳や肉体、魂に負担がかかりすぎるため、本来ならば何度も使えるものではないのだ。
ただ、今まで通り李糸には通用しないようで、スキルや魔法のオンパレードになってしまったのである。
「李糸さん、次からは一度に複数のスキルを使うのはやめましょう……」
「そうだな……」
こうして、シェリーに課せられた二人への命令は無事終わることになった。
*****
同日
「任務のほうはうまくいっているのか」
「ハイ! それはもう!」
どこかで見覚えのある黒い制服。
「やっと、やっとだ。 作戦を実行できる時が来たッ!」
「ずっと天使たちに気づかれ邪魔をされ続けましたからね……。 それも終わりますでしょう! 何故なら天使たちは一匹残らず駆逐されるのですから!!」
「クフ……。 ク、ククク。 クハハハハッ!!」
その男の背後には、何百何千、いや何万もの兵に。
明らかにオーラの違うものが数人見えた。
「久々に笑うのはいいことだ。 なあ、そう思うよな天使たちよ」
兵たちの視線が一気に集まる。
そこは草むらで当然、草むらは微動だにしない。
「おい、そこのお前。 あそこを調べてこい」
「ハッ!」
兵がそこを確認すると、そこには怯えた顔の天使が一人。
「て、天使が居ました!!」
「連れてこい」
大声で叫びながら拒絶する天使、しかし抵抗はかなわず男の前へと連れ出された。
「ほう。 なかなかいい見た目をしているではないか。 しかし……」
男は突然言葉をやめ、手を前に出した。
何をするのか、息をのんだ時。
ボグォッ!
鈍い、生々しい音が耳に届く。
「少々うるさい……」
男は天使の喉を、確実につぶした。
先ほどまで、泣きながら助けてくれと叫んでいた音は無くなり、代わりに粗い呼吸音と、それに合わせて歪な水音が鳴り響く。
「ふむ。 どうせだ、お前たちこの天使を好きに使っていいぞ。 せいぜい戦うまでの娯楽として使うのだな」
すると兵士たちは一気に歓喜の声を上げる。
『は、はやくどいてくれ!! 俺が使いてぇ!!!』
『うるせぇ! 見つけたのは俺だ! 穴は俺が使うからな!!!』
『殺すんじゃねえぞ!!』
『死んだら俺が喰ったる……!』
天使の瞳には、醜い兵士たちの顔が映りこんだ。
天使は想像する、この後受ける数々の悪夢を。
そして、絶望する。
想像なんか比ではないほどの悪夢が襲ってくるのだから。
「ま~ったく、野蛮な奴らだナ」
「まぁまぁ、飢えているんですよ。 ああいう輩は」
「てゆか、気持ち悪いんだヨ。 あ、手がもげたナ」
遠くから眺める黒い制服をまとった少女と青年。
「あ、様だ。 お疲れっス」
「ガイア様、お疲れ様です。 どうぞ、こちらでお手を」
「済まぬな二人とも。 わかっていると思うが、五日後に攻め入る。 死ぬのではないぞ」
「「必ずや」」
「それでは他も回ってくる。 ゆっくり休むといい」
「……行っちまったナ~。 5日後とは、早い話だゼ」
「これに勝てば、復活するのか……」
やっと物語が動いたって感じですかね。
次回は勇者編を書きたいなぁ。




