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秘儀【頭を抱える】

部下が、良いんだけどもそれするかぁ? って行動したら頭抱えたくなりますよね。

 【成長促進】

 

 グランツの新しいスキルの一つだ。


「えーっと、なになに。 成長する過程でより多くの経験値を獲得する……」


「それって、つまり……?」


「チートじゃねえかこの野郎!!!」


「李糸さんが言わないでくださいよ!」


 グランツの新スキル【成長促進】は、あらゆるレベルが結果、上がりやすくなるというものだった。 

 当然、誰しもが取得できるものではないだろう、きっと一つまみの者だけ。


「と、とりあえず隊長に伝えないとな……」


 目的地まで残り数キロ、李糸は一抹の不安をグランツは自身への期待を抱き、足を進めた。

 そして、目的地であるシェリーのもとへ着いた二人は、このことを真っ先に話した。


「それは本当なのか……」


「はい……」


 これも何度目だろうか、シェリーが頭を抱えため息を溢す。


「とりあえず大天使様に報告する。 ……何故私の部下はこうも……」


 ブツブツと言葉を漏らすシェリーを前に、李糸とグランツは後に着いて行った。

 少しするとお馴染みの大きな扉が姿を現す。


「ん? グランツ、お前緊張してるのか? 俺なんかは何回も来たから何も感じないんだがな……」


「すごいっすね……。 僕はまだ片手で数えるほどしか来てないので……」


「お前たち、そろそろ黙れ。 開けるぞ」


 ギギィ……、と小さく音を立てながら扉は開く。

 中には書類を片手に持った大天使のミッシェルが座っていた。

 音に気づいたのか、大天使は書類を置き 「どうした?」 と声をかけてくる。


「失礼します。 実は私の部下が……」


 シェリーがすべてを言う前に何かを悟ったのか、その表情は見る見るうちに呆れたような疲れた表情へと変わっていった。


「その、グランツのほうが……。 新しいスキルを覚えまして……」


 シェリーはここで喋るのを止めた。

 理由は明らかである、大天使の表情が死んでいたからである。

 少しして。


「すまない……。 よし、覚悟も決まった。 言ってくれ」


「はい。 実はグランツのやつが【成長促進】というスキルを覚えました」


 そして恒例の頭を抱える。 そろそろこの二人も新しいスキルか称号を得るんじゃないか? 心労とかいう名前の。


「どのようなスキルなのだ……」


「それが、成長速度の上昇。 なのでスキルレベルやその者のレベルが上がりやすくなるようで……」


「……李糸よ、お前はその時グランツの傍にいたのか……」


「え、ええ。 まぁ」


 そして、大天使はこう叫ぶのであった。


「また、お前かァァァ!!!!」


*****


「先ほどは乱れてしまってすまないな」


「い、いえ……」


 李糸は倒れていた。

 当然顔面はボコボコである。


「それで、何をしていてこのスキルを得たのか分かるか?」


 李糸は少し考える、思いつくこと。

 考えてみるといくつかあった。


「そうですね……。 いくつか述べますと、一つが魔族と戦ったことによる結果。 もう一つが帰るときにやった競争。 最後に俺とずっと一緒にいたから。 ですかね」


 シェリーと大天使はその単語を聞き逃さなかった。

 先にそのことを聞いたのは大天使だった。


「おい待て、今魔族といったのか」


「え? あ、ハイ」


「それはどこで……」


「えっと、亜人の町のすぐ近くにある森の中ですね。 女の子が誰かに攫われちゃいまして。 追いかけた先に魔族がいましたね」


 本日二度目の大天使様の【頭抱え】を見れた。


「その魔族はどうした?」


 大天使がスキルを使っている間、シェリーが魔族の事について聞いてきた。


「俺が殺しました」


「そ、そうか……。 すまない、一から細かく聞いてもいいか……」


 そして、李糸はあったことを一から十まですべて伝えた。


「お、お前部下を殺しかけたのか?!」


「そうなります……。 すみません」


 シェリーは李糸に掴みかかった。


「しぇ、シェリー隊長! 僕が勝手にやってああなったんです! 李糸さんを責めないでください!」


 しかし、シェリーは聞く耳を持たず。


「おい、李糸。 歯を食いしばれよ」


「はい!」


 ドガァ!!!


 部屋中にその音が響き渡り、李糸の顔からは血が垂れた。


「さっき私に謝っていたが、相手を間違えているんじゃないか」


「グランツ……。 すまなかった。 俺が不甲斐ないばかりに、お前は死にかける羽目になってしまった……。 本当に申し訳ない!」


「そ、そんな……。 頭を上げてください。 事実、李糸さんが居なければ僕は死んでいました。 感謝しています」


 グランツは自分の気持ちを隠さずに、あの時思ったこと、今思っていることを話した。

 その話が終わるころ、李糸の顔は涙で覆われていたらしい。


 結局、なぜこんなスキルを習得したのか、分からず無いまま話は終わり数日たった。


「あれからいつも通りの訓練をしてますけど、すごいスピードで強くなっていますね……」


「やはりか……。 私も傍らから見ているが動きが大きく変わったな。 切れが出てきた」


 グランツの成長速度は一目を置くものがあった。

 もしかしたら李糸よりも早いスピードで成長しているかもしれない。 そういっていいほどの速さで成長していたのだ。


「おい李糸。 あいつと試合してみろ」


「ええ?! うーんでも、気になる……」


 その声が聞こえたのか、グランツが傍によって来た。


「何の話ですか?」


「いや、実はな。 お前と李糸を戦わせて見ようかと思ってな」


 グランツはその話を聞くと、目を輝かせて。


「やらせてください!!」


「絶対に言うと思ったよ……」


 今度は李糸が頭を抱えることになった。

久々の戦闘かなぁ。

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