ワクワク大戦争
もう数話で亜人の国編も終わりですかね?
「良し、これで最後だな」
李糸は腰から、小さなナイフを取り出し、それで魔物の解体を始めた。 片手に小さな本を持ち、指定された素材を確認しながら作業を進める。
いちいち確認せずとも、皮や牙ではダメなのか? そう考えるかもしれないが、実はそんな簡単なことではないのだ。
素材にも様々な物があり、一体から一つしか採れない素材や、一体から複数採れる素材etc、実に様々なものが存在する。
初め、このことを知らなかった李糸たちは牙や皮だけを剥ぎ、ギルドに持っていった。 何十体と魔物を狩り、その素材を持って行ったものの、指定の素材を持ち帰らなかったことにより報酬は一体分しか出なかった。 それからは、本を片手に指定の素材、そして+αの素材を持ち帰り手持ち金を増やしていた。
「グランツ、そっちはどうだ?」
「はい! 今日の分はもう集めました!」
「それじゃ、帰るか!」
二人は袋に素材を詰め込み、軽い足取りで森を駆ける。
あっという間に町は見えてくる、二人は走る速度を落とし町の入り口の前まで来た。
『む、通行許可書は持っているか』
「えーと、これでいいんだっけ」
李糸は腰のポーチからギルドカードを取り出し、それを門兵に見せる。
『ふむ、確かに。 通っていいぞ』
この世界でのギルドカードとは、信頼の証という意味も持ち合わせているようだ。 それ故、通行許可証としても扱える。
そもそも、ギルドカードを作成するには犯罪歴が無い、という事が必須条件になってくる。 カード作成時の待ち時間も、それを確認するための時間だったりする。 因みに、犯罪歴の有無しか調べない。
通行の許可を貰った李糸たちは、早速ギルドへと向かいクエスト達成の報告をする。
「はい、確かに。 コモドドラゴンの火魂球、10個ですね。 それとその他素材がいくつか……。 すぐに換金しますか?」
素材の換金、この確認をするという事は換金をしない手もあるという事だ。 実は、素材を持って武具屋へ向かうと、その素材を使用して格安で装備を作ってくれる、その様なシステムが存在するのだ。
しかし、李糸たちは防具などを作らずとも十分すぎる能力値があるため、装備に回さず積極的に換金をしているのだ。
「お願いします」
「それではこちらが……、クエスト達成の報酬金と、素材の換金分ですね。 合計で金10枚です」
自分の袋に金5枚、グランツに金5枚と分け、ギルドをあとにする。
町はすっかり夕暮れで赤く染まり、人の姿は少なくなっていた。
「そろそろ宿に戻るか!」
「そうですね。 おなかも減りましたし!」
グランツはだいぶ人に慣れたようだった。 最初こそ人を見るとどこかに隠れ、ブツブツと現実逃避をしていたが、今ではそんなことはせずに、至って普通に過ごしていた。
きっと何かが吹き飛んだのだろう。
宿に戻ると、その宿の看板娘が出迎えてくれた。
「あ、李糸さんにグランツさん! おかえりなさい!」
「ティエラちゃん、ただいま。 ご飯はすぐ出来そう? おなか減っちゃってさ~!」
「はい! 出来上がったら呼びに行きますので、部屋で待っていてくださいね!」
そう言い、看板娘のティエラは厨房の奥へと入ってしまった。
「じゃあ、戻るか!」
二人はいつもの部屋に入る。
そして上着を脱ぎ捨て、ベッドに飛び込む。
「「はぁ~~!! 落ち着く!!」」
枕に顔を押し付け、二人は同じ言葉を言う。 これは二人の最近の習慣である。
その状態で、グランツは李糸に話しかけてきた。
「李糸さん、僕最初はあんなに言ってましたけど、ここって結構楽しんですね」
李糸は顔を離し、グランツのほうを向く。
「なんだ急に?」
「……人間も最初は苦手だったんですけど、ティエラちゃんや受付のお姉さん、武具店のおじさん。 みんないい人でした、僕が思っていたような怖いものじゃなかったです」
「そうだぜ。 ほら、俺なんてすごい優しいだろ? 人間って結構優しんだぜ」
「いえ、李糸さんは悪魔ですよ……。 でも、誰もがそんな人じゃないって知ることができました。 李糸さん、連れてきてくれて本当にありがとうございます!」
「いいさ。 ……って、怖く無いだろう!! どこが怖いっていうんだ!!」
「ええ……。 だって、行きたくないって言ってるのに無理やり連れて行ったり、地獄みたいな訓練させたり、人間なのに化け物みたいな強さだったり……」
「ネタじゃないのかよ……」
李糸はがっかりいた様子で、肩を落としていた。
「でも、感謝してるってのも本当ですよ!!」
何ともみじめな姿である。 こんな、バカ騒ぎを二人でしていると厨房のほうから叫び声が。
きゃぁあ……。
それは、本当に一瞬だった。 この宿にいる普通の冒険者じゃ、まず気が付かないだろう。
李糸とグランツは違った。 二人はすぐさま部屋を飛び出し、厨房へと向かう。
「誰も……いないな」
「さ、探しましょう!!」
李糸はその場で気配感知を発動する。
「直ぐ近くだ! ついてこい!」
李糸が指揮をとり、グランツが後を追う。
次の瞬間、李糸の気配感知に多くの反応が映る。
「何で、街中に魔物が……」
目の前には多くの魔物が、二人の行く先を塞いでいた。
そこにはゴブリンロードや高レベルの魔物もいくつか存在した。
「ちぃっ! グランツ! お前が後を追うんだ! 俺は魔物を相手する!!」
「で、でも……!!」
「うるせぇ!! お前のせいでティエラが死んでもいいのか!! 分かったら早くいけ!」
グランツは歯を食いしばり、その場を後にした。
「さてと、相手はこの俺だぜ」
李糸は部屋着で着ていた薄いシャツを破り脱ぎ、目の前の魔物たちに全力の殺気をぶつける。
「いっくぜぇーーッ!!!」
さぁ、楽しくなってきました。




