戦が終わり
本編。
魔族を一旦退けた後の話です。
目が覚めると、侵略に来ていた魔族たちは全員、居なくなっていた。
廊下を一人で歩いていると、シェリーを見かけたので話しかけてみた。
「やっと起きたのか。 魔族たちならすべて殲滅した」
「え……。 隊長一人でやっちゃったんですか……」
李糸が少し引き気味にそう聞くと。
「私一人でではない!! 他にも大勢で出動し、それぞれが魔族たちを倒していったんだ」
「ただ、討伐数はシェリーが一番だがな」
急に話に入ってきた人物のほうを見ると。
「大天使様! なぜこんなところに?」
シェリーが慌てて頭を下げる。
「毎回言ってるだろう、そんなに頭を下げんでもよい。 何、少し気分転換をだな」
「大天使さんも戦場に出たんですか?」
「おい! 李糸なんて口の利き方を!!」
大天使は手を前に出し。
「よい、シェリー。 私も後方のみだが戦場に出たぞ。 それから大天使さんなんて言いにくいだろう。 ミッシェルでいい」
「え、わかりました。 ミッシェルさんも戦えるんですね!」
シェリーは鬼の形相で。
「おい! いい加減にしろ! 大天使様はこの天界において、一番の実力の持ち主なんだぞ!」
「何、それも昔の話だ。 今じゃ魔力も衰弱したし、魔力量だって」
「何をおっしゃいますか! 大天使様は今でもご健在です!」
変な言い合いになってきたので、李糸は大人しく撤退することを選んだ。
さらに廊下を進んでいくと、今度は麻里に出会った。
「おう! 麻里!」
麻里がこちらを見ると、一瞬頬が緩んだが、すぐにメアリーの顔つきに戻った。
「おはようございます、李糸さん」
「こっちだと徹底するな……。 あはは」
何のことやらと白を切る麻里。
「そういえば麻里。 大天使の名前って知ってるか?」
「? いいえ、知りませんが」
「実はミッシェルって名前なんだぜ!」
流石に驚いたのか。
「どこでそれを!」
と、勢い良く迫ってきた。
李糸は一歩後ずさりながら。
「さっき、本人が言ったんだよ!」
すると麻里は急に李糸の腹を殴りつけた。
「うごはっ! きゅ、急に何を!」
「……です……」
「え?」
「ずるいです!!」
何を言い出すかと思えば、麻里はポカポカと。 いや、ドカドカと結構強い力で李糸を叩いた。
それなりに防御力の上がった李糸は、大してダメージを負わないが、本気で妹に殴られるというのは精神的に来たようで。
「そ、そこら辺までにしてはいけないだろうか……」
と落ち込んでいた。
妹からの攻撃が止んだため、李糸は颯爽とその場から退場した。
後ろで、 「あ、まて!!」 と聞こえた気がするが気にしない。
これ以上、精神的ダメージを負わないための戦略的撤退だ。
因みに、スキルの精神強化のレベルが一つ上がっていた。
「こんなのでも上がるんだなぁ」
何て独り言を言っていると。
「あら、貴方がシェリーの部下ね」
赤髪の女が話しかけてきた。
「誰ですか?」
「私はミーレイ。 言うなればシェリーの同期かしら」
そういう彼女は、いかにもお嬢様というような喋り方と、しぐさだった。
「それで……、ミーレイさん? は何の用で俺に話を」
「ちょっとどんな奴か気になってね。 でも、なんだか大したことなさそうなやつね~……。 何でこんなやつを部下にしたのかしら、わからないわ~」
なんとも棘のある言い方だ。
李糸は表面上ではニコニコしていたが、だんだんと頬が引きつりぴくぴくしてきた。
「そ、そうですか。 それじゃあ、俺はここらへんで失礼します……」
早いうちに逃げ出そうとした李糸だったが。
「少し待ちなさい! ちょっと付き合ってくれるかしら!」
うえぇえええ!! なんて心の中で叫ぶ李糸だが、シェリーの同期を無碍にすることもできず。
「わ、わかりました。 少しだけなら……」
と了承してしまった。
それじゃあ早速と、ミーレイは李糸の手を引き走り出す。
どこに向かうのかと思ったら。
「ここって」
「ええ。 みんな天使たちよ」
そこは、死んでいった天使の死体が置かれている、死体安置所のようなところだった。
死体には簡易な布が被されているだけで、それ以外何もされていない。
その為、中には腐り始めている死体もあった。
「何でこんなことになってしまったんだろね……。 誰もこんな結末望んでいたはずがないのに」
李糸は人間で、数週間前にここに来たばかりで、何かを言う資格なんてなかった。
ただただ、ミーレイの言葉を聞いた。
「私はね、親を魔物に殺されたのよ。 本来天界には魔物なんて来ないんだけど、その日は運が悪くてね。 山菜を取りに行っていた両親は魔物に殺されて帰ってきた。」
胸が痛くなる李糸、話は続き。
「それから私は、魔物を恨むようになって。 しまいには魔物を生み出す、魔界自体を恨むようになったわ。 大天使様に使えるようになったのは、自分自身を鍛えいつの日か魔物をこの世からなくすためだった。 でも、使えてから毎日が楽しくて、ついつい忘れちゃってたわ。 でも、もう思い出した……。 ごめんなさい、こんな話するつもりなかったんだけど」
一通り話を聞いた李糸は、無事に解放された。
そして、少しだけあの話を考えていた。
両親を殺された天使が、恨みを晴らすため魔物を殺す。
憎しみは憎しみしか生まないというが、魔物相手、ましては魔界相手だとどうなるのだろうか。
結局彼女は修羅の道を選んだのだと、変な感傷に浸る李糸だった。
ミーレイ覚えてますか?
【闇魔法習得にあたって】って話の冒頭のほうで出てきた嫌味な女の子です。
ストレートの赤髪で目が細く、鼻が高い。 ひんぬーおっぱい!!!
はい。




