表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/8

朝の早い時間が好き。



透き通った空気も霧の中の静けさも。

太陽が昇る寸前の光も。

生き物が目覚める気配も。



小さな頃、お婆ちゃんの大きな手に引かれ進んだ先、山頂から眼下に広がる雲海に目を奪われいつまでも見ていました。

静寂の中青い雲海がだんだんと目が覚めるような金色に変わる瞬間が、私の一番好きな光景。


目覚まし時計より早く目覚めた私は、昔の様に雲海を見に行こうと思い立ちました。





あの時はお婆ちゃんと一緒でしたが、今朝のお供は鳥座衛門さん。

先を行きつつ尾っぽをフリフリしながら歩く姿は見ていてほっこりしますね。


ーーああ、ここです。


向こうに見える大きな岩にお婆ちゃんと座り、何時までも飽きる事無く雲海と街並みを眺めていた場所。



……あら?


潮の香り?


ザッザザーン、ザッザザーンと繰り返すこの音は…波の音?


小さな街並みと一面に広がる田んぼは?



…あれは海?




…うちの山はいつの間にひょう◯ん島になったのかしら?

知らない間に海をぷかぷか?ちゃぷちゃぷ?移動しました?

そもそも山や田んぼに囲まれ、海なんて近くにありませんが。



……これは夢ですね。

……もう一度寝ましょう。



鳥座衛門さんと一緒にお家に戻り二度寝しました。







起きてもう一度顔を洗い、目覚めている事を確認。

朝ご飯兼だいぶ遅いお昼は簡単に野菜ジュースと高性能トースター(←ここ大事)で焼いたはちみつバターパン。

あまりの美味しさに悶絶しました。サクサクふわふわで黄金色に溶けるバターがじゅわ〜ですっ!いくらでも食べれますよ。今度はチーズやシーチキンも試してみましょう。

もう一枚食べようと焼いていると、蜥蜴之助さん達が物欲しそうな目で見ていたので試しにちぎって皿に置いてみると、4匹目とも物凄い勢いで食べ始めました。

そうでしょうそうでしょう。高カロリーは最高です。美味しいですよね。…あら?動物にはちみつバターパンなんて与えて大丈夫でしたか?…お代わりを強請るぐらいですから大丈夫でしょう。

デザートは庭の桃を捥いで食べました。

ピンク色の丸々した桃はとてもジューシーで美味しかったですよ。今度は冷やして食べましょう。




さて、もう一度先ほどの場所に行ってみますか。



眼下には青く綺麗な水平線が広がり、太陽の光を浴びキラキラとガラス片のような光を反射させ、耳に心地良く聞こえる優しい波の音、澄み切った空に映える真っ白い雲。髪を撫で去っていく爽やかな風。

ふふふ。あの白い砂浜でパラソルの下リゾート気分を味わえたら最高ですね!


……………。


ダッシュで家に戻り、今度は逆側の舗装された道をスニーカーで駆け下りました。

しかし途中で数メートル先も見えない濃い霧に包まれ、中断を余儀無くされる事となりました。


おかしいです。


おかしいのはもう一つ。

日も傾きそろそろ夕方の時間帯になりつつありますが、お空には青白い月が三つあり、中の一つは土星みたいな輪っかが付いているのです。

…最近のドッキリでは、雲の無い時でもプロジェクションマッピングで天体まで変えれ、、るわけ無いですよねぇ。

もう諦めましょう。いえ分かってますよ。私は今何処か別の場所、多分別の世界にいると仮定した方がいいという事は。

地球には月が三つもありませんよね〜。



自分でも驚いているのですが、意外と落ち着いています。

親に守ってもらっている様な、昔からこの家に居れば安心という気持ちが強く感じられるのです。

それに電気ガス水道、全て大丈夫でした。

山の中の為スマホは圏外でしたけど固定電話もありますし。ただ確認のために家にかけてみましたが何処にいるのか不在でした。

テレビもパソコンのネットも繋がったのが気持ちを更に落ち着かせたのは言うまでもありません。



一体この家はどうなっているのでしょう?

お婆ちゃんが一緒に居た時は普通の家でしたよね。

私の幼い頃は…昔からお婆ちゃん家に居ればニコニコしていた子供でしたね。

お婆ちゃんが畑仕事で一人でいる時も全く寂しくなかった気がします。

寧ろ新学期の為に家を離れる時には、帰りたくないと大泣きして迎えに来た家族を困らせたものです。

ーー柱にしがみつき愚図る私に、あの時のお婆ちゃんは何と言っていたでしょうか。



『橙子。本当にお前はこの家を愛し愛されているんだねぇ。

だけどね、ここに住むには橙子はまだ小さいんだよ。

お父さんやお母さんやお兄ちゃん。そしてたくさんのお友達と一緒に遊んで、学んで、大きくなってからでも遅くは無いよ?

…だろう?それにお友達のみっちゃんと約束しているのならば帰らなければね。

大丈夫。アタシの後は橙子がこの家の主になるのだから』



…あら?

お父さんも私が家に認められたとか言ってませんでしたか?












『だからお守様、橙子を囲い込んではダメですよ。

この子は人の世に帰らなければならないのですから。

せめて成人するまでは見守っていて下さいな』






今年の夏は海に行けなかった|( ̄3 ̄)|

サザエにイカ焼〜

カキ焼きだけは何としても行きたいです。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ