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二人だけの楽園
忘れ去られた小高い丘には
シロツメ草の絨毯と
古ぼけたベンチがあって
約束のない午後の日に
君が僕の隣に腰掛けたら
ここは二人だけの楽園に変わる
幼い君は恋を嫌う
その甘美な痺れも知らず
陳腐なものだと頭を振る
ただ今は二人だけで笑っていたい
他愛もない会話をしていたい
無邪気に云う君は
僕の秘めた焔に気づかない
また一人恋で友を失った
そう云って涙する君の額に
口づけを落とし
「友愛のしるし」と偽る舌
ちっとも染まらぬ頬を
憎らしく思いながら
それでも笑った君が愛おしい
夕闇が楽園の終わりを告げる
僕らは約束を交わすことなく手を振って
それぞれの世界に帰る
帰り道 願うことは唯一つ
明日も君に会えたなら
胸の奥 焔が揺れた