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零れ詩  作者: 文 詩月
2/5

バッタの生涯

 


 足のもがれたバッタは

 バタバタ動く


 自分には足があると思い込み

 バタバタ動く


 動けば動くほど

 その姿は痛々しく


 それでもバッタは

 バタバタ動く

 バタバタ動く


 その努力は

 周りにとっては価値がなく

 ちゃんと跳べ せめて起きろと

 野次が飛ぶ


 無様に横たわる バッタの上を

 飛び越えていく 同胞たち


 それを見て初めて バッタは

 自分に足がないことに気がついた


 力をなくし 仰いだ空は

 皮肉な程に晴れ渡る


 いっそのこと 燃える陽が

 自分を焼き尽くしてくれたなら


 若しくは 誰かが自分を踏み潰し

 息の根を止めてくれたなら


 バッタは青空を見つめ

 切に願った


 もはや 自分が

 何者なのかもわからない


 どんなに惨めでも

 死ぬことすらできない


 そんな状態で バッタは

 長い長い 気が遠くなる程の

 永い時を耐えた


 そうして バッタは

 移り変わる空を 初めて

 何もせずに ただ眺めた


 動けなくなって 初めて

 草花の囁きに 耳を傾けた


 世界が変わった

 新たな出逢いが沢山あった

 確かにあった 美しい奇跡に

 初めて気づけた


 例えもう誰も 自分を

 バッタと呼ばなくても

 例えもう二度と 大地を

 自由に跳べなくても


 全ては同じ 刹那の命だから

 自分は今 幸せだと

 心から そう言える


 バッタは 力強く呟いて

 固まった




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