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偽魔法少女

皆さんは小学校や中学校に遠足というイベントはありましたか? 

私はどちらもありました。楽しみで前日眠れなかったりするわけですよ。眠れない事を見こして早めにベッドに入るんですが、全然寝付けなくて。

 まさに今そんな状況なわけで。しかし私ももう高校生。眠れなかった場合の対策は考えてあるのです!


「明日何を持っていこうかなぁ」


 そう、荷物準備です。取りあえずおやつ(300円分)はリュックの中に入れました。ハンカチ、ティッシュも。

 こういうどこに行くにしても必要なものもう入れました。普段持ち物はすぐ決まる方なのですが今回行く場所も目的もいつもと一味も二味も違います。セキュリティー会社に侵入ですからね。

 少し武器になるものでも持っていきますか。


 といった具合に色々準備しているうちに朝に。不思議と眠くはありません。それどころかいつもよりいくらかテンションが高い気がします。ちゃんと支度をして十時に学校に着くように家を出ます。

 ちなみに今日の服装は動きやすいようにパンツスタイル。


 電車を乗り継いで学校まで来ました。今日は天気が良くて冬なのにちょっと暑いです。待ち合わせ場所にはまだ二人はいませんでした。まだ5分前ですからね。

 

「ホント、あっついなー」

 

 そう呟いて少し空を見上げます。すると鳥が飛んでいるのが視界に入ります。太陽に近くて暑くないのかな、そう思った瞬間です。

 あの印象強いシルエットがビルとビルの間を飛んでるのが見えました。あれは多分、


「……徒然君?」


「ん? 楽がどうした―」


 丁度今到着したらしい白雪姫先生が隣にいました。

 私服もチャラいですね。しかもなんで日傘なんて指してるんでしょう。乙女か。

 今はそれどころではありませんね。あのシルエットは確実に魔法少女に変身した徒然君の物です。


「あの、徒然君がビルの方に」


「あ?」


 私が指差す方向を白雪姫先生が見ます。

相変わらず徒然君は飛んだり走ったり。魔法少女使いが居なくても簡単な動きは一人でできるんでしたっけ。しかしなんで変身しているのでしょう。

良く見ると徒然君の後ろにもう一つ影がありました。その影も遠目なので微妙なのですが魔法少女に見えます。そもそも魔法少女である徒然君の動きについていけるという事はそうなのでしょう。


「やべぇ!」


私と同じ光景を認知したらしい白雪姫先生が叫びます。焦った顔がらしくないです。


「どうかしたんですか」


「楽のやつ、偽魔法少女に見つかりやがった! 助けに行くぞ、ついて来い!」


「偽魔法少女って? あ、ちょっと待って下さい!」


 白雪姫先生は日傘を閉じて全速力で徒然君の見える方に走り出します。案外足が速い。

 

 偽魔法少女とは何でしょう。

 今はそんな事を考えている場合ではなさそうですね。あの白雪姫先生が焦っているのです。きっとピンチなのでしょう。発言からもそう察せます。

 

 しばらく走って徒然君が見えたと思われるビルの裏路地に着きました。


「楽! おい、どこにいる返事しろ!」


 白雪姫先生が上に向かって叫びます。私も上を見上げながら徒然君を探します。

 すると数秒後、ビルの屋上からこちらを見下ろす徒然君を発見することができました。一応無事なようです。


「ごめんマスター! 見つかった、今もこっち来てる!」


「分かったから、早くこっち来い!」


 徒然君は頷いてビルの屋上から裏路地まで落ちてきました。流石魔法少女無傷です。

 白雪姫先生もほっとした様子です。

 ひと段落したようですので聞いてみたかった事を。

 

「あ、あの。いったい何があったんですか?」


「あとで説明する。ここから早く離れるぞ」


 まだひと段落していなかったらしく質問には答えてもらえませんでした。

 仕方なく裏路地の出口へ向かおうと後ろを向くとそこには逆光で顔のハッキリ見えない二つの影が。一つは先ほど徒然君を追っていたと思われる魔法少女。もう一人は身長は低いようですが男性のようです。


「ちっ。遅かったか」


 白雪姫先生が小さくつぶやきます。徒然君は武器の弓を握りしめています。面倒な事に巻き込まれた、と言った顔です。これは私でもまずい状況にあるのだと分かります。


 二つの影はゆっくり裏路地に入ってきます。するとだんだん姿が見えてきました。

 魔法少女は例のごとく美しい少女でした。例えるならば日本人形のような少女です。綺麗な黒髪は方に付くか付かないかのところで切りそろえた上に簪で飾られ、唇は真っ赤に彩られていました。服装は着物なのですが動きやすいように大きくスリットが入っています。武器なのかクナイを構えています。

 もう一人はとても見覚えのある人でした。


「あれ、一人多いと思ったら我が校の清掃美化委員のエース、天橋立さんじゃないか」


「……在原生徒会長」


 そう、もう一人は我が校朝会でおなじみの生徒会長、在原大和、その人でした。低身長、怖く見える目つき、成績上位、容姿端麗といったこっそり私が尊敬する人なのです。どうしてここにいるのでしょう。


「白雪姫先生、なんであなた達のような人と天橋立さんのような一般人が一緒にいるんでしょうか」


「答える義理はねーよ」


「じゃあ天橋立さん、なぜここに」


 在原会長が柔らかくほほ笑みながら聞いてきます。ですがその笑みはどこか威圧的で他を圧倒する力がありました。

 もともと在原会長と言うのはそういう人なのです。優秀だがどこか暗い部分がある。だからこそ学校で生徒会長なんてをやっているのでしょう。人を支配するのが好きそうな顔です。

 魔法少女が隣にいる事から推理するに彼も魔法少女使いなのでしょう。だとしたら白雪姫先生とは仲間のはずなのになぜ険悪な態度を取っているのでしょうか。


「天橋立、答えんなよ。一応秘密なんだ俺達の事は」


「仲間じゃないんですか」


「奴らは公式に認められていない魔法少女と魔法少女使いだ。俺等を潰そうとしている奴らだよ」


 なるほど。だから、偽魔法少女でしたか。というか公式とかあったんですね。


「相変わらず失礼な呼び方をしてくれますね。こっちから見ればそちらは、そうですね、悪魔法少女といったところでしょうかね。魔法少女の力を使い悪用しているのですから」


「悪用なんてしてねーよ。こちとら警察だぞ」


「へぇ、圧倒的な力を使って一方的に犯人を痛めつけるのが悪用でないと。僕のなかにそのような常識は無いのですが。流石クズと名高い白雪姫先生だ」


 これに関しては私もそう思いますが。というかクズとして名高いんですね。


「おめ―も人の事言えねーよ。勝手に薬使って、その力で片っ端から公式の魔法少女と魔法少女使い潰していってんだから。流石、正当化する事に長けてんなぁ生徒会長」


「毒をもって毒を制しているだけですよ。悔しいですけど人間のままでは魔法少女に勝てる気がしない」


「へぇー。力手に入れて即ゴールだと思ってんのか。おめでたい頭だな。俺等がそう簡単に負けるはずねーだろ。な、楽」


 徒然君は頷いて弓を相手の魔法少女に向ける。そして私に小さな声で「ゴミ箱の影に隠れて」と言いました。一応ゴミ箱の近くまで後ずさっておきましょう。


「ほぅ。力比べですか。良いですよ。今まで3組も潰して来たんです。ねぇかぐや」


 するとかぐやと呼ばれた魔法少女は構えるクナイの数を増やします。


「放て、楽」


「刻め、かぐや」


 二人の、魔法少女が同時に地面を蹴った。


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