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悪あがきと書いて正義と読む

 何とか危機を乗り越え家に帰った私は早速最初の作戦が成功した事を百合に報告しました。電話越しでしたがそれはもう喜んでくれました。今までも二人で色々やってきましたがこの作戦が成功した時の喜び方は昔と変わりがありません。

 もちろん新しく入った情報も伝えましたよ。

 そして、源家での薬の解析が終わったようで松さんが電話に変わり薬について説明してくれました。


『あの薬ですが徐々に効いていくようです。個人差はありますが短くて5日、長くて一週間後』


「らしいですね……」


『知っていたのですか?』


「いえ、さっき知りました」


『もしかして伝えるのが遅すぎましたか。すみません。何か問題が?』


「大丈夫です。何とかなりましたから」


 薬をもっと早くに渡しておけばよかったと後悔しましたけどね。どうにかなったので結果オーライです。


『なんとかって、何が有ったんです!』


 急に大きな声を出して来た松さんにびっくりして思わず携帯を耳から遠ざけます。松さんが大声を出すなんて珍しい。


『大声を出してしまってすみません』


「松さんらしくないですよ? どうしたんですか」


『今回は事が事です。いつもとは違うのです。……何というかその、俺達も心配なんですよ。下手をすれば命を落とす』


 私は少し感覚が狂っていたのでしょうか。松さんの言うとおり、魔法少女も魔法少女使いも危険なのに。好奇心が勝って危機感が薄れていたようです。


「松さん、ありが」


『本当は学校にも、明日の見学にもついていきたいのです。ぶちゃっけ、今も電子さんの家の近くで奴らがこっそり見ているかもしれないと考えただけで恐ろしいのです。というか放課後の教室で1対2で話すとか危険でしょう。俺だったら少し人数が居る所の方が安全だと考えますがね』


「ちょっと、松さ」


『だいたい電子さんは頼るの意味を一緒に作戦を立てる、だけだと思ってませんか? 使える駒は使え、一人だけでは限界がある。それは昔百合様に教えて貰ったはず。俺等がやっている事は決して良い事とは言えません。人を懲らしめるため、家族を救うため、他の人に迷惑をかけている。私情を持ち込んだ悪あがきです』


「………………………」


『しかし、誰が我々を止める事が出来るのでしょう。俺はこれが良い事でなくても、悪あがきでも』


 松さんは一息置いて言う。


『この行為が俺等の正義だと思ってます』


 松さんはこの悪あがきを正義だというのだ。今まで自分のしてきた事が良いか悪いかなんて考えた事が無かった。きっと考える必要が無かったからだったのでしょう。それが私にとって正義で曲げる事のできないものだったから。曲げる事が出来ないくらい硬かったから他を受けいれるのがこんなにも難しい。

 でも、それをものともせず向かってきてくれる人達がいる。

 三本の矢、とはよく言ったものです。


「ふふっ」


『何笑ってるんですか。真面目な話ですよ』


「あははっ、す、すみません。そうですね、これは私だけの正義じゃ無くて、私達の正義でしたね」


『分かればいいのです。報告、続けます』


 電話越しに小さく百合の笑い声とそれに対する松さんの不満そうな声が聞こえてきた。松さんは本当にいい人だ。うっかり惚れそうになる。


『最低でも5日魔法少女にならないから大丈夫とは思わないで下さい。一気に7錠、つまり1週間分を摂取した場合即魔法少女になる事が出来るようです』


「え、じゃあいきなり飲まされるかもってことですか」


『いえ、多分それは無いです。一気に飲むと死ぬ、もしくは一生魔法少女から人間に元に戻れなくなります。後者になった場合、死ぬこともできなくなるかも知れません』


 随分怖い薬だったですね。前者は一般の薬と同じですが、後者は死ぬ事が出来ないとか想像もできないつらさでしょう。

松さんは多分ないだろうと言いますが相手はあの白雪姫先生。飲ましてくるかも知れませんので要注意ですね。


「分かりました。気をつけます。今日は、色々と有り難う御座いました」


『当然のことです。気にしないで下さい』


「あ、あと」


『はい?』


「また、何かあったらお願いします」


『はい、もちろん』


 優しい声色でした。なんでこうも源組の方は良い人ばかりなのでしょう。まだ話した事のない厳ついお兄さん方がいっぱいいますが今度話してみましょうか。案外楽しい時間を過ごせるかもしれませんね。

 と、考えている間に電話は百合に変わりました。


『どう? うちの組のやつイケメンでしょ?』


「本当に。顔が見えないのにテレビの俳優よりイケメンですよ」


『あれは演技じゃ無くて天然だからねー。明日、頑張ってね。アタシついていかなくて大丈夫?』


 心配しているようですがちょっと声が震えていますね。笑ってますよこの人。


「心配有り難う御座います。でも、余計な事されると面倒なので結構です」


『あら残念。じゃ、報告楽しみしてるわ。こっちも色々調べてみるから』


 百合も調べてくれるようです。主に平組について。平組とかはやはりそっち系統の方が調べた方が良いらしいよう。これで私が株式会社NANAから持ってきた情報を合わせれば状況が良く見えてきそうです。


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