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見えた光源

 私は今回の抗争にあまり関わる気は無かったのですがあのお二人が関わっているとなれば話は別。

 取りあえず百合に事情を説明してしまいましょうか。


「その襲撃した人の事知ってるかもです」


『マジで!?』


「はい。まずは私が話したかったこと聞いてくれますか?」


 今日会った事を事細かに百合に説明してゆきます。

 百合はオーバーリアクションと共に聞いてくれました。余りにも声が大きすぎて部下の人の「襲撃ッスか! 無事ッスか、お嬢!」という叫び声を数回聞きました。本当に申し訳ない。


「という事です。今日は本当に散々でしたよ」


『なぁにぃがぁ! という事で、よっ! 随分あっさりとした口調で話してるけどあんたとんでもない経験してるからね!?』


「いやぁお恥ずかしい。語彙力が無いもので」


『そういう事を言いたいんじゃないわよ。電子、飲まされそうになった薬ってどうした?』


「あ、証拠品としてティッシュに包んで取ってありますけど」


『流石。それ家の部下に渡したらきっと調べてくれると思うの。今、時間ある?』


「ありますよ」


『んじゃ迎えに行くから。ちょっと待っててね』


 ピッと電話を切って耳から離します。


本当に源組の方々優秀ですね。薬の解析ができる人がいるとは。絶対極道止めても食べていけますよこの人たち。


数十分して家の前に一台の真っ黒な車が止まりました。源組の車でしょう。夜に存在するだけで怪しいそれは仲からグラサンにスーツ姿のお兄さんが出てくる事で更に怪しさを増していました。ご近所さんに見られては面倒ですので早く行きたいと思います。


冬の夜は寒くコートを羽織らずに出た事を後悔しました。しかし次の瞬間私の方に厚手のジャケットがかけられました。ふと横を見上げると長身の男性が一人。


「そのままだと寒いでしょう。車の中は暖房を利かせてありますが念のため」


 この凄く紳士な態度は松さんでしょうか? なぜ疑問形であるかというと松さん、名字は大江というのですが、彼は大江家三つ子の一人であるからです。この顔と同じ顔があと二つあります。似ているのは顔だけで性格も髪型も違いますが、余り見かけない方々なので私では判断がしづらいのです。


「……僕は松ですよ」


「すみません。まだ慣れなくて」


「いいえ。ちなみに運転手は長男の霞、百合様の隣に座っているのが月ですから」


「わざわざ有り難う御座います」


 なんですか。この人エスパーですか。きっとイケメンなだけだろうけど。

 

 松さんのエスコートで車に乗り込む。すると車内は暖房が利いていて暖かった。車に乗っていた百合が手を振ってくる。隣に座っている月さんもぺこり。


「こんばんわ、電子。ごめんね急で」


「いえ、こちらこそ。わざわざ」


 松さんが車に乗り込むと出発した。


「そういえば襲撃された平組の情報はあれから入ってきました?」


「ええ。数人は命を落としたらしい。襲撃を受けて取引ができなかったもののほとんどの人間は早々逃げて無事だったらしいわ。もちろん兄上も」


 百合が少し複雑そうな顔をしている事に気が付く。喧嘩して仲が悪くなっているといっても家族。心配と怒りの間で揺れているのでしょう。

 複雑な人は他にもいるようで、ミラーに映る大江家の人の表情も苦い。霞さんは怒っているようで、月さんと松さんはどちらかといえば困り顔。


「それは……」


 私もなんと声をかければいいのか決めかねます。もちろん私の素直な感想は良かったに着きますが。


「電子が聞きたいのはこの情報では無いでしょう? 襲撃者の情報もちゃんとあるから」


「あ、有り難う御座います」


 百合から話を反らしてもらえて助かりました。しかしそれは百合自身が察して反らしたのです。百合に不快な気持ちをさせてしまった。こうなってしまったのも白雪姫先生のせいだと思う私は卑怯でしょうか。


「人間の形をしていながら人間の動きをしていなかったらしいわ。正に電子のいう魔法少女。そしてもうひとり、怪しい男がいたらしい。多分そいつが魔法少女使いね。後を追ったものがいたらしいけど直ぐに見失ったそうよ」


「そうですか」


 警察と言いながらあっさり人を殺すところやあの先生の性格を考えて好き放題やっているようですね。元からクズだとは思っていましたが今日一日だけで思いが強くなりました。白雪姫先生を主人公のようだと感じたのは勘違いだったのでしょうか。


「電子、アタシはこれから一つ貴方に提案するわ」


「は、はい」


 百合の真剣な表情に思わず肩に力が入る。


「多分だけどきっと貴方は嫌がるかもしれない。だから断ってくれても構わないわ。もし協力してくれるなら、アタシ達も貴方の復讐に手を貸す。電子、


――――魔法少女使いと一緒に行動して」


「いいですよ」


「即答!? え、もうちょっとためらうと思ってたんだけど」


「元よりそのつもりだったんですけど」


「そ、そうなんだ」


 魔法少女になれとかそういう感じのものが来るかと身構えていたら案外想定内でホッとしました。逆に百合が納得言ってない表情ですが。


「で、百合は具体的に私に魔法少女使いと行動させてどうしたいんですか」


「魔法少女使いをうまく使って抗争を丸く、いえ……抗争がどうなっても良い。兄上を家にもどして。犠牲が大きくても。もちろんその過程での協力は惜しまないわ」


 町の平和より自分の家族を思うですか。悪いことだなとは思います。でも、私が百合の立場でもそう思っていた事でしょう。


「なるほど。良いですよ。私の目的さえ果たせれば」


 魔法少女使いと一緒に行動する。そうする事で私の作戦である『計算外の事を起こす』事をしやすくなります。


「そうとなれば! 早速作戦を立てなきゃね。霞!」


「はい」


「飛ばしなさい!」


「了解しました」


 真っ暗闇で車は明るい源邸を目指す。


余談ですが。霞、月、松は天橋立の縁語だったりします。

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