繋がっていたとは
ああやって高らかに宣言しといてなんなのですが実は全く策が御座いません。
今家の自室で先ほどまでの一人中二病劇場を思い出して恥ずかしさで床をごろごろしてます。
教室で独り笑うってはたから見たらただの変人じゃねーか! あんな悪人が主人公でたまるかバァーカァ! 薬飲んだふりするところまではカッコ良かったじゃん! なんで中二病発揮しちゃったのぉぉぉぉおおおお!
ふぅ、落ち着きました。取り乱してすみません。あ、でも復讐(?)は辞めるつもりは御座いませんので安心して下さい。
こういうときは人に頼ることも大切です。
なんでこんなこと言うのかといいますと昔負けず嫌いで頑固な私は大変自分に自信のある子供でした。ある程度の事は自分で出来たし、何をやっても基本的に人よりはできたのです。まぁ要は自信家だったのです。ですのであまり友達は多くはありませんでした。
私は事あるごとにリーダー職に付きたがり、皆をひっぱってく自分超偉いと思い込んでいたのです。しかし私も人間、他の人と馬が合わずトラブルになって企画が台無しになりそうになった事があります。その時の私の思考はこう、「私は凄い子だ。才能がある。だから特別努力する必要はない」と。なぜなら今までの私の勝因はどんなトラブルに陥っても自信を持ち続けていたからです。一人で大丈夫と。でも、その時ばかりはその「自信」が敗因となったのです。
ここから私は「自信は勝因になるが敗因にもなる」と知りました。
その時から私をフォローしてくれている親友がいます。彼女がいたからこそ私は今も自信を持っているようなものです。
ですから今回も彼女に頼ってみたいと思います。
彼女の名前は源百合といいます。百合は一見大人しそうな子ですがとても真のしっかりした子で面倒見のいいお姉さんタイプです。百合の家はちょっと特殊なので百合自身も少し変わっています。まぁ、昔の我儘な私と友達になれるくらいの人ですから。
という訳で早速お電話を。
『はーい。どうしたの、電子?』
ワンコール目で出た百合の機嫌は電話越しで分かるくらいに機嫌が悪いよう。こういうときはまともに話を聞いてもらえませんのでまずは百合の話を聞いてから私の話を聞いてもらう事にしましょう。
「こっちから掛けておいてなんなのですが、何かありました?」
『聞いてくれる? やっぱり電子は良い子だわ』
掴みは完璧。後は適当に相槌を打っておけばどうにでもなるでしょう。ただいつ話の終わりが見えるかが分かりませんが。
『この前兄上と喧嘩した話は話したよね。その続きになるんだけどさ』
百合のお兄さん、源純さんといいます。確か大学生だったと思います。中学のころから素行が悪く世間的な評判は悪いですが、私が見るに単に悪ぶりたい純粋な人で根は素直な方。実際何かして怒られる時は結構反省していました。悪ぶる事は治っていませんでしたが。純さんは実は面倒見がよく妹である百合とも昔は仲が良かったのですが成長するにつれて自然と仲は悪くなっていました。
最近では大ゲンカしたとか。詳しい内容は聞き流していたせいで思い出せませんが。
『あの馬鹿、平組のところに行きやがったのよ。で、家に喧嘩売ってきたの』
この発言で察せた方はいらっしゃるでしょうか? 何を隠そう源家は極道のお家。極道といってもきちんと仁義を通していて犯罪にはあまり関わっていないよう。まぁ少しは関わってるわけですが。
話に上がった平組というのは名前の通り平さんという一族のお家。こちらも極道。しかしこっちは犯罪に手を染めまくりの悪党です。源家、もとい源組とは昔から仲が悪く事あるごとに抗争がおこります。
つまり純さんは百合さんと喧嘩しぶちぎれてまさかの家ごと潰しにかかってきた、という事です。
確か前ご両親ともあまり良好な関係を築けていないと聞いたことがあるのでそれも関係しているでしょう。
「それってかなりヤバいですよね」
『ヤバいわね。下手すりゃこの町が火の海になるわ。お父様もお母様も今、般若より怖い顔してるわ』
百合ちゃんが言っている事は一見冗談のように聞こえますが、案外冗談になりません。
今までは抗争があっても部下同士のドンパチ程度で済んでいましたが、源家の息子である純さんが出てくるとなれば話は別です。平組は源組の情報を純君から手に入れこれ幸いと攻めてくるでしょう。対する源組も裏切り者の純さんに対する制裁という意味も込めて全力を出すと思います。
「これ私が相談している場合じゃありませんね」
『あーごめんね電子。これからしばらく抗争はいるから街から逃げることをお勧めする』
私もこの町から出ていけるなら出て行きたいものです。しかし今の私は魔法少女使いとか言うのに目を付けられていてピンチなのですから。
「最悪の場合はそうさせてもらいますよ。で、今の状況はどうなっているんです?」
『お互いまだ準備期間よ。こっちは武器は有り余るほどあるから他との協定を結んでる最中。向こうは武器の消費が激しいから武器の調達ってところじゃないかしら』
じゃあ今攻め込むのがベストじゃないの? と思う方がいるかもしれませんが平組には源組の情報を持つ純さんがいます。つまり源組の戦術は知られているのです。だからこそ源組はいつもと違う動きをするため協定を結びに行っているのでしょう。
『いつ火が付くかは分からないわね。何時ついても可笑しくは無い……あ、ごめん。ちょっと呼ばれたから待ってて』
「はい。分かりました」
呼ばれた、という事は何か進展があったのでしょうか。いい知らせだと良いのですが。百合は結構頭が良いので家の方にとても頼りにされているだとか。その気持ち分かります。
『え!? それは本当!?』
突然電話越しに大きな百合の声。声色は嬉しそう。どうやら良い知らせだった模様。
『聞いて! 電子!』
「はいはい電子ですよ。どうしました?」
『平組の武器取引が何者かに襲撃されたらしいわ! その何者か分からない奴利用できるかも!』
「本当ですか!? それはよか…………」
―――――武器取引? どこかで……。
『急に黙ってどうしたの? …………。ちょっと電子?』
<これでよーし。楽、行くよ。今日はやくざの武器取引場を襲撃だー>。確かに白雪姫先生は教室を出るときにこう言った。
「あいつらかよっ……」
『電子どうしたのよー』
思い出しました。これは何とも面倒な事になってきましたよ。でも、なぜか私はわくわくしてしまっているのです。