質問です
貴方はいきなり目の前の同級生(男子)が魔法少女に変身したらどうしますか?
貴方は担任の先生が魔法少女使いという意味不明な副業をしていたらどうしますか?
すみません、いきなり状況の説明も無しに質問しても答えにくいですよね。軽い自己紹介と状況説明をさせていただきます。
私の名前は天橋立電子と申します。あ、読みは名字があまのはしだて、名前がでんこです。変わってる、ですか。よく言われます。某県の某私立高校の2年5組2番、清掃美化委員やってます。三つ編み、低身長、成績上の中。眼鏡ではないです。最近コンタクトに変えましたので。私の事はこのくらいで良いでしょう。
私の事より貴方に聞いてもらいたいのは今の私の置かれている状況なのです。時間は六時三十分ごろ。冬なので結構暗めです。私は委員会が長引いたせいでこの時間まで学校に残っています。やっと委員会が終わってさて帰ろうと自教室のドアの前まで来ました。
ドアを開けようとしたときに中に人の気配がある事に気がつきました。ドアに付いている窓からそっと中を覗くとそこには同級生の男の子と担任の先生がいました。もしかしたら他人に聞かれたくない話をしてるかも知れませんので中に入るのを私はちょっとためらいました。考えた結果、悪いけど少し盗み聞いて話題によって入ろうかどうか決めよう、としました。この間わずか10秒。結構かかってますね。
「今日は?」
「んーどうすっかな。明日に回しても良いけど」
「明日にやる事増えんの嫌」
「じゃ、さっさと終わらしちまうか」
補修の話でしょうか。何にしても別に重い話でも聞かれて困る話という雰囲気でもないようです。私が鞄を取るために入るくらい良いでしょう。そう思ってドアを開けました。
「楽、マジカルキューティーメイクアップ!」
ドアを開けるのと同時に先生の声が教室に響きました。
そして、教室はまぶしい光にあふれ激しい風が吹き荒れました。私は片手で光を遮り、もう片手で捲れそうになるスカートを必死で押さえていました。それは2分くらいの長さでした。
風と光は次第に収まりました。しかし、私は状況がうまく理解できず手をどけて目の前の光景を見る勇気がありませんでした。ですのでしばらく手で目を塞ぎながら頭の中でいろいろ考えていました。
マジカルキューティーメイクアップって何!? 日曜の早朝に聞きそうな言葉だなぁオイ。同級生と担任が重度の魔法少女オタクとか、駄目ってわけじゃないけど教室でやる事ではねーよ。ていうかこんなに光と風激しいなら教室でやるんじゃねぇよ! 下手したら失明とか怪我すんぞ! 二分とか長いわ、ほんと何キュアだよお前ら。
すみません、口調が昔の名残で悪くなってしまいました。あんまり気にしないで頂けるとありがたいです。
話を戻します。ほんと何キュアだよお前ら! と思ったところで私は思い切り手をどけました。その時の私をぶん殴ってやりたい。いいから、鞄なんて置いてダッシュでお家に帰ってママのミルクでも飲んでな、と。
「天橋立……!?」
そこには驚愕の表情のお二人が私を凝視していました。
でも私は二人よりもっと目を見開いていた自信があります。
だって同級生(男の子)がフリフリの服を着た美少女になってたんですよ?
皆さんは森ガールというのをご存知でしょうか。その名のとおり森にいそうな格好をした女の子の事です。そんな感じの美少女です。金髪のふわふわした髪に白い肌、小柄で守ってあげたくなる感じ。花冠に白や黄緑をベースにしたパ二エでふわっとしたスカート。しかし手には物騒にも弓矢が握られていました。
同級生の男の子徒然楽君は儚い系美少年です。無口で誰かと話しているところはあまり見られませんがファンは多くいます。確かに女の子になったらこんな感じなのかなとは思います。だからといって女の子になっても可笑しくないという訳ではないのです。
「え、えと、なんですかこれ」
このままダンマリという訳にも行きません。見ちゃったものは仕方ない。ちょっとの好奇心も混ざってますけど。
「これはだな天橋立、幻想だ」
「幻想だったら良いですね」
「この子もう現実を受け入れてる!? 冷静な子だもんなぁ!」
担任の先生、あ、紅玉白雪先生といいます(あだ名は白雪姫。でも男の先生です。美人さんなので姫が付いているだけです。本人も満更ではない様子)。白雪姫先生は涙目になりながら私の肩を掴みます。
「見なかった事にしてくれ! そして一生思い出さないでくれ」
「えっと、取りあえず通報しておきますね」
「良い子だから先生の話聞いて、天橋立?」
先生が放課後自分の生徒(男の子)を女装させてましたって警察の人に信じてもらえるかは心配でした。ですので、肩を掴む先生の手を払って徒然君に被害の内容を教えてもらおうと話しかけます。
「ちょ、天橋立」
「徒然君、どんなひどいプレイを要求されたんですか」
「良い子のイメージを積極的に壊していくなぁ! 発言があぶねぇよ!」
「先生がそれを言うのですか?」
「今の状況じゃぐうの音もでねぇわ……」
「……もう良いよ。マスター、本当の事を天橋立さんに話そう」
「楽、いいのか?」
「ああ」
「主従関係プレイっと……」
「メモるな天橋立」
「話すから聞いてくれないかな」
「分かりました」
本当は一秒でも早く白雪姫先生を社会から追放したかったのですがここは徒然君に免じて先送りにする事に。適当な席から椅子を拝借して着席。
早く帰らないと親が怖いのに困った事になってしまた。家に帰ってなんて言い訳しようか。
「僕は魔法少女だ」
これ言い訳なんて考えてる場合じゃ無いや。
「楽、天橋立混乱してるから。お前は言葉が少なすぎるんだよ」
「じゃあマスター説明して」
「話すっつたのお前じゃん」
「このまま変態教師扱いされても良いなら僕が続けて説明するけど」
「俺が説明するわ。って天橋立なんかニヤニヤして楽しそうだな」
「ええ、ここからどうやって変態教師じゃない事を説明するのかと考えたらとても楽しみですよ」
「もう俺天橋立の事怖くてしゃーないわ」
と言いながらも白雪姫先生は結構冷静なように見えました。ばれたのが初めてではないのか、本当にちゃんとした理由があるのかは分かりませんが。
白雪姫先生は先生と呼ぶにはルーズ過ぎる面を持ち合わせています。校内でたばこを吸うし、女子にもボディタッチするし、恰好がチャラチャラしている方だ。だからこそ生徒に人気出会ったりもする。
でも私は白雪姫先生が苦手。ちゃんと根拠を上げて説明はできない。しいて言うなら雰囲気でしょうか。白雪先生は少年誌にいる大人主人公のようでサブキャラである私の何かに容赦なく踏み込んできて壊していきそう。私の立場が先生の敵でないなら良いけれど。
なんだかとても嫌な予感がするのです。話を聞かない方が良い。でも、もう引き返せない。白雪姫先生が口を開く。
「さっき楽が魔法少女っつたろ? 嘘じゃないんだ。でも、魔法の国から来たわけじゃない。楽は科学技術で魔法少女になったんだ。まぁ、薬があるんだがそれを飲むと魔法少女になれんの」
「男であってもね」
二人の顔はいたって真剣。嘘をついているようには見えませんけど。
「信じると思いますか?」
「信じるしかないと思うけど? 変身シーン見ちゃったんでしょ。マジックにしては壮大すぎるだろ。なんなら薬飲んでみる?」
「結構です」
「そう?」
完全に白雪姫先生のペースです。
「でもそんな薬があるなんて話聞いたことないですよ」
「そりゃ公表されてないから。日本はこの薬隠れて利用してんの。魔法少女の力は人間の力を凌駕する。だから魔法少女使って色々やってんの」
「色々ってなんです?」
「楽の場合は警察だな。結構危険な事件を魔法少女の力ですっぱり解決! ってな。他のやつらが何やってるかは知らん。教えてもらえないんだ」
横で聞いている徒然君はちょっと誇らしげ。という事は事実なのでしょう。強いんですね徒然君。
「魔法少女といっても所詮は科学。限界があるしまだ完璧じゃない。そこで、この俺の出番という訳だ! そう魔法少女使いのな!」
「魔法少女使い?」
何でしょうこの魔法少女と魔法使いが混ざったような単語は。どのアニメでも聞いたことがありません。
「人間の力を超えた能力を使う魔法少女の負担は半端なく大きい。その負担を減らすためにいるのが魔法少女使い。魔法少女を操る力を持つ。魔法少女は走ったり跳んだりはある程度一人で出来るが、魔法少女使いがいなければ魔法を使う事はできない」
「だから、マスターですか」
「そう。マスターは僕を操る人だ。魔法少女の運命を握る人といっても良い」
なんだか違う世界線の話みたい。できれば、いや、絶対に巻き込まれたくないです。そうと決まればさっさと帰る事にしましょう。
「お二人の話は良く分かりました。この事は誰にも言いませんので。では、さようなら」
「待てよ」
私の肩に白雪姫先生の手が置かれます。あぁ、嫌な予感。
「天橋立」
「何でしょう?」
振り返ればニヤニヤと悪人の顔をした白雪姫先生。徒然君は私に同情の目を向けていた。同情するなら助けてほしいんですけど。
「魔法少女になれ」
はい。ここまでが今私の置かれている状況の説明になります。少し長くなりすぎましたかね。聞いて下さり有り難う御座います。
ここまで付き合わせておいてずうずうしいのですが以上の話を踏まえて冒頭の質問にもう一問付けくわえさせてください。
貴方は魔法少女になれと言われたらどうしますか?
できるだけ早く回答をくれると嬉しいです。そうでないといつ目の前の悪人教師が持つ瓶の中身を口に入れられるか分からないので。
久しぶりの投稿。ちゃんと書けてるか心配。