われらが街のご紹介
1週間1話を目標にあげてきます
アンディルタ街はとても巨大な田舎街だ。かつては朝夕関係なく、右を見ても、左を見ても、人しか見えない賑やかな場所だったが、今は見る影もない。
この街が繁栄したのは、明治初期にフランスの技術を導入して設立された官営模範工場があったからだった。
設立されたのは製糸工場で、当時は世界最大級の規模といわれていた。日本中の服や、生地、糸に関係するあらゆる品の原料がこの街で作られていた。
街は常に賑わっていたと当時の街を知る人たちは言う。商店街では人の活気づいた声が響き、そこら中にある宿屋やホテルからは、いつも歌や笑い声が聞こえた。中でもこの街が変わっていたのは、そこにいたのが日本人だけじゃなかったということだろう。日本に製糸技術を指導しにきた多くのフランス人やイギリス人の家族もこの街に住んでいた。街がすぐにできてからは、少々ギクシャクした関係もあったらしいが、彼らがお互いのことを知り合い、認め合うのにそう時間はかからなかった。アンディルタ街は、きっと時代最先端のグローバル街だっただろう。製糸工場も世界最大級だったかもしれないが、街の賑やかさも世界最高に違いなかった。
だが、残念なことに、今はその賑やかさは失われている。
理由は時代の流れだ。
今や製糸工場は、役目を終えて、巨大な廃墟となっている。そして賑やかさの源だったほとんどの商店街、ホテルも、今はシャッターを閉じて沈黙している。
だが、この街に「静寂」という言葉は今なお似合っていない。この街はかつてほどの賑やかさを失ったというだけで、衰退したわけではないということだ。住人たちの多くは年をとったが、まだ元気だし、街にある「人の暖かさ」は冷えていない。子供や若者も数少ないが、この街で健やかに育っている。
時代が経っても、衰退しない愛情。それがこの街の魅力だ。人の暖かさに触れ、かつ賑やかすぎない、静かな住処を探しているというのなら、きっと多くの不動産屋がこの街を進めてくれるだろう。
アンディルタ街は良い街だ。
だが、この街は他の街とは違い、とても特殊な場所でもある。
普通とは違う場所というべきだろうか、アンディルタ街は「不可思議」で、「奇妙」で、「異質」で、「神聖」な街なのだ。
現実とは思えない「特殊なこと」が、この街では歴史となっており、風習や文化として現在まで受け継がれている。きっとこの街を初めて訪れる人は、この街の特殊性に驚き、信じられないと口にすることだろう。
それは毎日起こっていることで、この街では何ということない日常なのだ。
次回から話を始めていきます
題名は「ポーシャ」にしようと思ってます