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釜揚高校ドタバタ日記  作者: ドゥギー
第4章「高校3年2学期」
21/32

第21話「体育大会」

 9月19日。釜揚高校のとある教室で城ヶ崎しげるが神妙な面持ちで座っている。

 向かい側には体つきがいい一人の男性が、横には担任の越ひかりがいる。


「この成績でしたら、申し分ないですね」


 男性は書類を見ている。


「ありがとうございます」


 ひかり先生は笑顔でこたえる。


「それでは結果は2週間後にお知らせしますので。

 これからよろしくお願いしますね、城ヶ崎君」


 男性が手を差し出す。


「こちらこそよろしくお願いします」


 しげるは男性と握手する。


 9月27日。釜揚高校の校庭には万国旗が飾られている。

 大きなテント、入場門が立てられている。

 入場門には生徒たちが集まっている。


「ただいまより第39回釜揚高校体育祭を始めます。生徒入場」


 放送に合わせて、生徒たちが入場門からグランドに向かって行進していく。

 ただ、足並みは全然そろっていない。だらけた感じで整列していく生徒たち。

 整列し終わった後、鈴井校長が朝礼台に上った。


「それでは、開会のあいさつ。鈴井校長お願いします」

「皆さん、おはようございます。秋といえば、読書の秋、食欲の秋、そして運動の秋です。

 今日の体育祭では皆さん怪我しない程度に体を動かしてください」


 意外と普通のあいさつに生徒たちは拍子抜けした。


「続きまして、選手宣誓。生徒会長、三上君お願いします」


 生徒会長の三上が朝礼台の前に立つ。心なしか体が震えている。


「宣誓!我々セント……いや生徒一同は、

 今日の体いくいく祭で衣装じゃなくった……一生懸命競技することを誓います。

 選手大砲、生徒解放、三上カミオ……あっ三上民生!」


 生徒会長のカミカミの選手宣誓に生徒たちは笑いをこらえていた。


 入場門には3-Dの面々が待機していた。全員気合いが入っている様子だ。


「次の競技は綱引きです。選手は入場してください。第1回戦は1-A対3-Dです」


 1-Aと3-Dの生徒たちが入場していく。両チームが綱に沿って並んでいく。

 3-D側では安永拳と三日月モモが並んで立っている。綱を握ろうとした瞬間、


「痛い!ヤスケン、手握らないでよ」

「あ、ごめん」


 安永が慌てて綱を握る。


 一方1-A側では、ものすごい形相をした女生徒が一人。


「何よ、安永先輩いちゃついちゃって……うぬぬぬぬ」


 菊地萌子の握る手が強くなる。


「あいたたた。菊ちゃん、それ綱じゃなくておれの手だって……」


 痛みでものすごい形相の田勢。


「もう、全く邪魔ね」


 田勢の手を振り払って、綱を握りなおす菊ちゃん。


「では、はじめ!」


 スタートの笛が鳴る。両チームとの懸命に綱を引く。


「オーエス、オーエス!」


 最後尾のしげるが掛け声をあげながら、力強く綱を引いていく。

 次第に3-Dのほうが優勢になる。


 ピピーッ!


 決着がついたようだ。喜ぶ3-Dの面々。

 喜びのあまり安永とモモが抱きあってしまう。

 その様子を見た菊ちゃんは怒りに震えていた。


「菊ちゃん、惜しかったね」


 ねぎらう田勢。


「負けたのはあなたのせいよ!」


 田勢にやつあたりする菊ちゃん。



 入場門には女生徒が集まっていた。グランドにはパンが吊るされている。


「次の競技は女子パン食い競争です。選手は入場してください」


 入場していく女生徒たち。雷管が鳴るたびにスタートする選手たち。

 途中にある吊るされたパンをジャンプして口にくわえ、ゴールまで走っていく。

 なかなかパンを口にくわえられない選手が多い中、


「1-Aの菊地選手。ものすごいジャンプで、一回でパンをゲット!そのままゴール!」


 菊ちゃんが抜群の運動神経で一着になった。また、


「3-Dの三日月選手。パンをくわえて一着でゴール!あら、またコースに戻っていくぞ?

 あっと、別のコースのちぎれたパンも取っていったぞ」


 あとで感想を聞くと、


「なんかもったいないので……」



 グランドには大きな網、平均台、タイヤ、そして箱が用意されている。


「次の競技は障害物競争予選です。選手は入場してください。

 この障害物競争はタイムレースで行われます。上位5人が決勝進出です」


 次々とスタートしていく選手たち。

 網をくぐり、平均台を渡り、タイヤを転がし、

 小麦粉をまぶした箱のなかにある飴玉をさがし、走っていく選手たち。

 ゴールしていく選手たちは皆白くなっていた。

 そして決勝進出者が決まった。


「決勝進出者が決定しました。一人ずつ紹介しましょう。

 まずは陸上部のエース、井田選手。

 二人目はバスケ部の高井選手。

 三人目はサッカー部の安永選手。

 四人目は女子です、合気道部の藤選手。

 そして、最後はわが校の英雄、城ヶ崎選手です。

 以上5名と鈴井校長の計6人で障害物競争決勝を行います。

 決勝はスペシャルコースになっておりますので、皆さん熱い声援をお願いします」


 入場門に集まる障害物競争決勝進出者たち。


「緊張するな……」

「ヤスケン、そんな緊張することないよ。お祭りなんだしさ」

「決勝って聞くとなんかピリピリしちゃうんだよ、リーダー」

「ま、がんばろうぜ」

「ああ」


 握手を交わす安永としげる。そこへ藤がやってきた。


「ジャック、今回のミッションはてこずりそうね」

「藤さん、ジャックって……この前のネタひきずってるの?」

「藤さんじゃないわよ、エージェント・フジでしょ。

 こういうのは雰囲気が大事なんだから」

「はいはい」


 少しあきれるしげる。


「それでは、障害物競争決勝、選手の入場です」


 決勝進出者がグランドに入場する。そして、本部のテントから鈴井校長が現れた。

 スタートラインに並ぶ選手たち。しかし、グランドには障害物が見当たらない。

 不思議がる生徒たち。鈴井校長がマイクを持って話す。


「この決勝は校内を一周する障害物マラソンです。

 コースの各所に『スペシャル』障害が待ち受けていますので、

 それらを乗り越えてゴールをめざします。

 みなさん、がんばってね。ってスタート!」


 スタートといった瞬間鈴井校長が飛び出して行った。

 慌てる選手たち。校長にブーイングする生徒たち。

 校長は舌を出し走り出していく。


 校舎に向かって走りだすと、大きなボールのようなものが転がってきた。

 急に止まる鈴井校長。他の選手が校長を追い抜かす。

 ボールをよけようとすると、なんとボールが動きに合わせて曲がってきた!

 驚く選手たち。安永がなんとかフェイントを使ってボールをよけたが、

 ボールが後ろから追いかけていく。

 他の選手たちもボールに追いかけられて周りを走りまわっている。

 藤さんが疲れて止まってしまう。するとボールも止まった。

 よく見ると、ボールには目がついていた。


「ミッフィー?でも色が違うな……」


 安永がミッフィーのようなものを拾い上げる。


「おーほほほっ!それはミッフィーの兄弟、『マロン軍団』よ。かわいいでしょ」


 突如あすか先生が高らかに笑った。


「でも、こんなにいたらむしろ怖い……」


 しげるが危険なツッコミを入れる。


「なに、リーダー」


 怒るあすか先生。


「ほら、校長は先に行っているわよ」


 選手たちが振り返ると、鈴井校長が何事もなかったかのように先を走っている。

 慌てて追いかける選手たち。

 マロン軍団も追いかけようとするが、あすか先生の合図で立ち止まった。


 校門を出て、外周コースを走る選手たち。

 すると、屋台がなぜか立っている。屋台には野菜が並んでいる。


「いらっしゃい、いらっしゃい。野菜を500円分持っていかないと先に進めないわよ」


 なぜかヤスケンの叔母、ナンシーが八百屋のおばちゃんに扮している。

 値段と物を見ながら野菜を選ぶ選手たち。

 その中、鈴井校長がものすごい勢いで野菜を選んでいく。


「はい、奥さん!」

「どれどれ……おみごと校長!」

「ありがとう、奥さん」


 ナンシーに笑顔を送って走り出す校長。


「おばさん、これでどうだ!」

「拳ちゃん、あきらかに多すぎるって」


 急いで野菜を選び直す安永。次々とクリアしていく選手たち。

 とうとう安永だけが残ってしまった。


「うーんと、これとこれで200円で……。あー、もうわからん!」


 頭を抱える安永。


「これで、どうだ!」

「うーん、本当は多いけどまけてあげるわ。行ってもいいわよ」

「ありがとう、おばさん!」


 走り去っていく安永。溜息をついて座り込む、ナンシー。


「『奥さん』とか『おばさん』って、あたしってそんな年とって見えるのかな?」



 このあと、10個連続くす玉割り、ごみ回収車へのごみ袋入れなどの障害を、

 次々とクリアした選手たちはグランドに戻ってきた。


「障害物決勝もゴールまでのこりわずか。先頭を行きますのは鈴井校長。

 そのあとは横一線です。このまま校長が優勝するのでしょうか?

 最後の逆転劇があるのでしょうか?」


 余裕の笑顔で走る鈴井校長。しかし、後続がものすごい勢いで校長に追いついてきた。

 そして、横一線に並んだ瞬間、選手たちの姿が観客の前から消えた。


「なんと、ここで落とし穴です。全員見事に落ちてしまいました!」


 落とし穴からなんとか這い上がった選手たち。

 すると目の前に箱が。箱を開けると、おおきなタイ焼きのようなものが入っていた。


「さあ、最後の障害です。そのロビンソン亭特注の『マグロ焼き』を食べきらないとゴールできません!」


 一生懸命マグロ焼きをほおばる選手たち。その中、鈴井校長が悶絶している。


「これは聞いてないよ……」


 苦しそうな表情の鈴井校長。


「勝負の行方がわからなくなりました。いったい、この激戦を制するのは誰なのか?

 おっ、一人食べ終わってゴールに向かって走る。他の選手は食べ終わっていない。

 そのままゴーーーーーーーール!なんと、優勝したのは紅一点、藤選手です!」


 優勝した藤さんに集まっていく女生徒たち。拍手する他の生徒。

 みんなが知らないところで鈴井校長が気絶していた。


 体育祭も閉会式。生徒たちがグランドに整列している。


「それでは、閉会のあいさつを鈴井校長お願いします」

「来年は負けないからな!」


 全員校長の言葉にずっこけてしまった。

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