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釜揚高校ドタバタ日記  作者: ドゥギー
第4章「高校3年2学期」
20/32

第20話「避難訓練」

 9月1日9:00。今日から2学期。

 釜揚高校の生徒たちは体育館に集合していた。

 そして、壇上には鈴井校長と城ヶ崎しげるが並んで立っている。


「これから始業式を始めます。はい、姿勢正して。気をつけ、礼」


 号令とともに生徒たちが礼をする。


「では、校長からごあいさつがあります。鈴井校長、お願いします」


 鈴井校長が壇上にあるマイクの前に立った。


「みなさん、おはようございます。今日から2学期です。

 がんばっていきまっしょい。

 ところで、インターハイ体操競技個人総合に出場しました城ヶ崎しげるくん、

 見事48位という立派な成績をおさめました。みんな拍手!」


 生徒たちは拍手をするが、48位という微妙な成績になんとなく元気がない。


「ちょっと!150人中の48位だよ!すごくない?!」


 必死にフォローする鈴井校長。檀上に立っているしげるは顔を赤らめた。


 10:00。始業式を終えた生徒たちは教室に戻っていた。

 3-Dの教室では安永拳があくびをしている。


「ヤスケン、なにあくびしてんだよ」

「ふぁー。いやぁ、昨日まで海外ドラマ見てて。深夜にやっているから眠くて眠くて。ふぁー」

「それって、『タイム・リミット』じゃない?」

「そうそう、一度見だすとはまっちゃって。特に主人公のジャックがかっこよくてさ。

 思わずなりきっちゃうんだよね」

「そのドラマ、おもしろいの?」


 しげるが不意に聞いてきた。


「リーダー。これは超おもしろいよ。DVD持ってるから、今度貸してあげるよ」

「ありがとう、ヤスケン。ところでこれから何があるんだっけ?」

「さっきひかり先生が避難訓練があるから、教室で待機しとけって言ってたな」

「避難訓練か。かったるいな」


 すると、マイクが入ったような音が教室のスピーカーから流れた。


「えー、我々は『自由解放組』である。

 我々は教師の理不尽な束縛から生徒を解放するために組織された集団である。

 教師たちが我々の要求を受け入れなければ、強硬手段に出る!

 その証拠として化学室に爆弾をしかけた。

 この放送が終わると爆発するようにセットしてある。

 我々は本気である!以上」


 ドカーン!


 放送が終わった瞬間、大きな爆発音が鳴った。

 どよめきだす生徒たち。担任の越ひかり先生が教室に入ってきた。


「化学室で爆発が起こって、火事になっているわ。

 みんな落ち着いて校庭まで避難してね。

 ちなみに避難の基本は『おかし』だから」

「先生、『おかし』ってなんですか?

 もしかして、避難する時はお菓子もって食料確保だったりして」

「違うわよ。『押さない、かけない、しゃべらない』を略して『おかし』よ。

 じゃ、みんな避難するよ。『おかし』だからね」


 生徒たちは校庭に向かって避難している。

 ただし、みんな避難訓練だと思ってしゃべっている。


「ほら、しゃべらない!『おかし』でしょ」


 ひかり先生がしかる。


「『おかし』ね、『おかし』」


 生徒たちはにやりと笑いながら歩いていく。

 校庭に集まった生徒たちは点呼を取っている。


「点呼終わったら、このまま下校だっけ。早く帰って、寝たいよ。ふぁー」


 安永があくびをしていると、


「ヤスケン、このあとカラーバトンの練習でしょ。さぼっちゃだめよ」


 三日月モモが安永を諭した。


「あ、そうだった。練習だっけ。行きますよ」


 眠たげそうな顔をして答える安永。


 11:00。校庭に集合してから30分。一向に解散の合図が出ない。

 疲れの色が出始める生徒たち。そこへマイクを持った鈴井校長が現れた。


「えー、生徒が一人行方不明になっています。

 その生徒が見つかるまで校庭で待機してください」

「えー!」


 一斉に騒ぎ出す生徒たち。すると、校庭のスピーカーから放送が流れてきた。


「我々は『自由解放組』である!

 教師たちが我々の活動を本気に取らないようなので、人質をとった。

 人質を解放したければ、我々の要求にこたえろ。

 我々の要求は『校則の撤廃と生徒主導による文化祭の開催』である!

 教師たちは早急に要求を飲むべきだ。

 我々は要求にこたえるまで戦う!以上!」


 ざわめく生徒たち。すると、ひとりの女生徒がしげるの前に現れた。


「城ヶ崎先輩ですよね。頼みたいことがあるんですが」

「君はたしか……合気道部の藤さんだっけ……」

「いいえ、私は『エージェント・フジ』。

 テロリストから生徒たちを守るため、あなたの力が必要なの。

 手伝ってください」

「テロって……そんな大げさな」

「大げさじゃないわ!このままだと犠牲者が増えるばかりだわ!

 この状況を打破できるのは教師じゃないわ、私たち生徒たちよ!」

「おお、こりゃ『タイム・リミット』の展開だ。

 がんばれよ、ジャック、じゃなくてリーダー」

「ちゃかすなよ、ヤスケン」

「じゃ、行くわよジャック」

「って、おれはジャックじゃないって」


 エージェント・フジに強引に手をひかれ、どこかへ連れて行かれるしげるであった。


 11:30。エージェント・フジとしげるは文化部室棟にいた。

 文化部室棟の前には机と椅子で積み上げたバリケードがつくられていた。


「ここが彼ら『自由解放組』のアジトよ。

 このバリケードを乗り越えてアジトに潜入できるのは、

 インターハイ出場のあなたしかいないわ」

「そう?でもすごいバリケードだな」


 未だに戸惑うしげる。


「誰か来るわ。隠れて」


 フジに手をひかれ、物陰に潜むしげる。

 文化部室棟にメガホンをもった鈴井校長が現れた。


「君たち、馬鹿な事をするのはやめなさい!

 はやくバリケードと人質を解放しなさい!」


 すると、文化部室棟から声が聞こえてきた。


「我々の要求を飲むならば、バリケードと人質を解放しよう。

 それまでは我々は徹底抗戦する!」


「ジャック、この隙にバリケードを乗り越えていくよ」

「だから俺はジャックじゃないって。あっ、行っちゃった」

 嫌々フジについていくしげる。


 12:00。バリケードの端のほうにしげるとフジはいた。


「ここは少し低いわ。じゃここから登って行って、ジャック」

「はい」


 校長と『自由解放組』との交渉が続く中、しげるは慎重にバリケードを登っていく。

 なんとかバリケードを登りきったしげるは忍び足で文化部室棟の2階に上がった。

 見つからないようにある部屋の窓をのぞくと、

 男が3人、そして椅子にすわっている女生徒がひとりいる。


「あの子が人質か。どうやって助けようかな?

 って俺も生徒だから味方のフリしていけば大丈夫か」


 大胆にも普通に部屋のドアを開けるしげる。


「なんだ、お前は」

「やあ、君たちの思想に賛同した一人だよ。俺達で自由を勝ち取ろうぜ」

「あんた、体操部の城ヶ崎さんだね。あんたのような有名人が我々の同志になってくれれば百人力だよ」

「ありがとう。ところでリーダーは?」

「リーダーは別室で校長と交渉中だ」

「それにしても、あんたバカな人だね」

「え?」

「ほんと、バカな人」

「あ」


 突然羽交い締めされるしげる。そして、そのまま椅子にしばりつけられる。

 縛り付けられたしげるは目の前の光景に驚いた。


「エージェント・フジ。なんで君が?」

「ヒロインが実は敵のスパイだっていうのはドラマの常識よ。もしかして、見てないの?」

「ああ、見てない」

「ほんとバカな男」


 その場を立ち去るフジ。しげるは隣の人質になっている女生徒に声をかける。


「君、名前は?」

「茶道部2年の桜小路です」

「なんで、こんな目に?」

「はぁ、茶室でお昼寝してたら、いつの間にかここへ」

「拉致か」

「拉致ってなんですか?」

「本人自覚なしか……」


 ため息をつくしげる。


 フジと男が一人、しげるのいる部屋に入ってきた。

 男はメガホンをもっている。


「城ヶ崎先輩、あなたのおかげで我々の願いも成就されますよ。

 あなたは本当にいい協力者ですよ、人質としてね!」


 男とフジが高らかに笑う。


 メガホンを持ち、外にでる男。


「我々はもう一人人質を得た!わが校の英雄、城ヶ崎しげるだ!

 英雄を解放したければ、我々の要求を飲むべきだ、鈴井校長!」

「そりゃ、うそだろ?もし、本当なら声を聞かせなさい!」


 校長が騒ぐ。


「すみません、捕まっちゃいました」


 メガホンからしげるの情けない声が。


「おいおい、頼むよ、リーダー!」


 嘆く鈴井校長。


 13:00。文化部室棟の前には校長とテロとの交渉を見にたくさんのヤジ馬が集まっていた。

 口々にいろんな話をするヤジ馬たち。


「リーダーが捕まったみたいだぞ」

「え、さっきの女の子敵のスパイだったみたいよ」

「え、まさに『タイム・リミット』の展開じゃん」


 一方、しげるが捕まっている『自由解放組』のアジトでも変化が見られていた。


「腹減ったな」

「ああ、昨日から徹夜だし、もう疲れたよ」


 前日からの徹夜と空腹でテロたちは疲労困憊しているらしい。


「ねえ、もうやめにして帰らない?」

「何言ってんだ、フジ!この戦いは自由を勝ち取るためのものなんだ。

 疲れたなんて言わせない!最後まで戦うぞ!」

「もう、あんたテレビの見すぎよ」

「うるさい!」


 フジを平手打ちするテロのリーダー。


「痛いわね。なにするのよ!」

「口答えするな!おまえは俺の言うことを聞けばいいんだよ!」


 再びフジに平手打ちしようとするテロのリーダー。

 しかし、振り上げた手が途中で止まる。


「女の子に手を挙げるのはサイテーだぜ」

「城ヶ崎先輩、なんで……」


 テロのリーダーの手を止めたのは人質になっていたはずのしげるだった。


「桜小路さんが、紐をほどいてくれたんだ」

「え?お前ら、二人とも縛っていたいなかったのか?!」

「いや… …この子おとなしかったからこのまま座らせても大丈夫かなって思って」

「あの… …わたし余計なことしましたか?」

「くそっ!離せよ!」


 テロのリーダーが手を振りほどこうとする。

 しかし、しげるが強く握りしめる。

 体操で鍛えた握力は強く、思わずテロのリーダーは悲鳴を上げる。


「うぎゃー!いててて……」

「リーダー、助けに来たぜ!」


 突然安永が部屋のドアを開ける。


「ヤスケン、遅いよ」


 安堵の溜息をこぼすしげる。


「バリケードはみんなで取り壊したから、みんな帰ろうぜ」

「サンキュ、ヤスケン。帰ろう帰ろう」


 文化部室棟からでていく面々。安永と桜小路以外疲労の色が隠せない。

 笑顔で迎える鈴井校長。


「みんな、避難訓練楽しかった?

 やっぱり普通じゃつまらないから、こんな展開もありかなって」

「もしかして、すべて校長の策略ですか?」


 腰を抜かして座り込むしげる。


 一方、フジとテロのリーダー役の男子生徒がもめている。

「すみれ、ごめん。あの時は疲れてて……思わず」

「思わず?疲れているときこそ本音が出るんだから。

 あたしなんかその程度にしか思ってないんでしょ?

 もう、別れる!わたし、城ヶ崎先輩とつきあうから!」

「え、ちょっと待ってよ、すみれ……」


 泣き崩れるテロのリーダー役の男子生徒。


「城ヶ崎先輩、これから『すこやか』に行きましょ」


 しげるの手を強引にひきハンバーガーショップ『すこやか』に連れ出す藤すみれ。

 その二人の様子を桜小路舞が遠くから見つめていた。

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