第17話「合宿第3夜」
8月5日13:00。安永拳たちカラーバトン隊は慣れない手つきで大きな旗を持っていた。安永たちの前に立っているのは鈴井校長ではなく、若い男性だ。
「こんちわ。本当の『特別コーチ』のルギーマーチングバンドの羽田です。みんなよろしく」
「よろしくお願いします」
緊張した面持ちのカラーバトン隊。やっとまともな練習ができると期待する一同であった。
「じゃあ、旗持って5キロ行進ね」
「ええ?」
「はい、文句言わない。じゃ、はじめ!」
鈴井校長の時とあまり変わらない練習内容に一同は失望した。男たちの厳しい行進がはじまった。
一方、音楽室ではなっちゃん先輩をはじめとするルギーマーチングバンドのメンバーが吹奏楽部の生徒の指導にあたっていた。三日月モモたち吹奏楽部の部員たちも練習に力が入る。
保健室ではあすか先生がモモのペットミッフィーをじっと見つめている。
「かわいいわね、やっぱり。マロン……いや、ミッフィーちゃん」
終始笑顔のあすか先生。ミッフィーはその笑顔に不気味さを感じ、ベッドの下に転がり込んだ。
「あ、ちょっと待って、ミッフィーちゃん」
あすか先生がベッドの下にもぐりこんだミッフィーを見ると、
「あれ?光ってる」
なんと、ミッフィーがベッドの下で光っていた。
「ミッフィーちゃん、光るんだ。かわいい!」
あすか先生はベッドの下からミッフィーを取り出し抱きしめた。ミッフィーは逃れようともがくが、あすか先生の抱きしめる力が強く、抜け出せない。
夜になり、夕食を食べ終わった後、安永たちはまたロビンソンが来るかもしれないと戦々恐々としていたが、結局ロビンソンはその日現れなかった。一方、モモたちの寝室ではみんなミッフィーを中心におしゃべりをしている。
「かわいいよね。ミッフィー」
「ほんとほんと、モモがうらやましい」
「え、でも結構めんどくさいところもあるよ。重いし、転がることしかできないから遅いし」
「えー、こんなに癒されるのに?」
「そう?別に癒されないけど」
「うそ?!」
おしゃべりが盛り上がっている中、あすか先生が寝室に現れた。
「モモちゃん、今晩ミッフィー借りてもいいかな」
「いいですよ、あすか先生」
「ありがとう、モモちゃん」
ミッフィーを抱きかかえて、部屋を出るあすか先生。モモ以外の女の子たちはうらやましそうな顔をしてあすか先生たちを見送った。
「かわいいかわいい、ミッフィーちゃん」
満面の笑みを浮かべるあすか先生に対し、ミッフィーは少しおびえていた。




