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Make my day!  作者: ユキ乃
4/4

4 波乱の予感

「菜穂子ーーーー!まぢありがとーーー!」


昼休みの廊下にて。

キヨさんがわたしを思いっきり抱き締める。

信じられないほどの腕力で、今にも窒息死しそうなくらいだ。


「きっ・・・・キヨさん、放してっ・・・」

「あっ!ごめんごめーん!」


キヨさんはわたしが苦しんでいることに気が付いてパッと腕を放す。


「いやまぢ、菜穂子が本条連れてきてくれたおかげで生徒会辞めずに済んだわー。先生たちもちょーびっくりしてたよ?」

「当たり前です。わたしは何でも出来ますからね」

「まぢそれな!ウケル!」


この人は本当にわたしに感謝しているのだろうか・・・。


「で、本条はどーしてんの?」

「一応授業には出たのですが、すぐに耐えられなくなって、今保健室にいます」

「まぢか!」

「なので、今から保健室に向かうところです」

「ぢゃあ、あたしも行こうかなー!」

「やめた方がいいです」

「だよねー。まあ、まぢ菜穂子にはめちょ感謝してるから!!何か困ったことがあったらいつでも言ってねー。生徒会の権力でどうにかすっから!」

「・・・いや別にいいです」



「珪くーん、大丈夫ですか?」


保健室に入ると、珪が窓辺で黄昏ていた。

相当滅入っている様子だ。


「大丈夫?すみません。わたしが無理やり誘ったせいで・・・」

「い、いや菜穂子ちゃんは悪くないよ。決めたのは俺だし・・・」

「でもたった1日でそんなにやつれて・・・・」

「大丈夫大丈夫。久しぶりだったから少し疲れただけ」


今にも倒れそうなくらい顔が白い。


「とにかく明日は休んだ方がいいですね。学校には少しずつ慣れていきましょう」

「ううん・・・明日も俺行くよ」

「えっ」


わたしは驚いた。

きっと彼のことだからもう一週間は学校に来ないつもりだと思っていた。

一体どういう心境の変化なのだろうか。

無理やり連れてきたわたしが言うのも何なのだが。


「どうしたんですか?無理はしないでくださいよ?」

「大丈夫。明日も菜穂子ちゃんが一緒に行ってくれるんでしょ?」

「はい、お望みでしたらそうしますけど」

「じゃあ、俺頑張る」

「・・・・・・?」


まあ、本人が行けるというのならわたしは何も言うまい。


「分かりました。じゃあ明日も迎えに行きますね。もう少しで昼休みが終わりますけど、これいかがですか?」


そう言って、わたしは売店で買ったパンを彼に差し出した。

彼はそれを見ると、一気に目を輝かせた。


「お、俺にくれるの?!」

「はい。お腹空いてるでしょ?」

「あ・・・・ありがとう!」


たかがパンごときでそんなに喜ばなくても・・・。

彼は大事そうにパンを頬張る。

喜んでくれたのならそれでいっか。

わたしはそんな彼の姿を見つめていた。その時だった。


「いいんちょーーーーーいたーーーー」


「・・・・・・・・・・・瀬野」


五月蝿い奴が来た。せっかくのどかなひとときを過ごしていたのに。


「委員長、めっちゃ探したんだよ?一緒にご飯食べようと思ってたのに!」

「そんな約束してません」

「えー、約束なんかしなくても一緒に食べるなんて日常茶飯事だったじゃん!」

「それは瀬野がいつもわたしに無理やりついてきてるからでしょ!」

「ありゃ」

「ありゃ、じゃない」


そんなわたしたちのやりとりをポカーンと眺めていた珪くんの存在を思い出す。


「・・・・・菜穂子ちゃん、瀬野くんと仲良いんだね・・・」

「決して仲が言い訳ではありません」

「そーそー、俺たち趣味も合わないし、考え方も違うし、お互い一緒にいるとイライラすることばっかだもんね」

「・・・・その通りだが、瀬野に言われると非常に腹が立つ!」

「・・・・・・・仲良しなんだね」


珪くんが苦笑いでそう言う。

本当に仲良く無いのだ・・・。


「瀬野、今日はとりあえず1人で食べなさい。わたしはここで珪くんと食べます」

「えーーー、じゃあ俺もここで食べたんでいいじゃん!」

「それは何かいや」

「なにそれ!」


わたし達がギャーギャーとケンカをしていたら、珪くんが間に入ってきた。


「せ、瀬野くんも一緒に食べよう?」

「ほんと?ありがとーーー!ヒッキー!」

「ヒッ!!?」


瀬野の思いがけない言葉に珪くんが一気に青ざめる。


「せっ!瀬野!!」


わたしは焦る。本当にこの人は何でいつも人のデリケートなところを突いてくるんだ!


「だ・・・大丈夫だよ菜穂子ちゃん」

「珪くん・・・・」


珪くんは若干涙目で耐えていた。

すみません、珪くん・・・。この人、一応悪気は無いんです・・・。


「瀬野・・・、この子は本条珪くんという名前」

「珪ねーーー。りょうかーーい」

「よ、よろしくね、瀬野くん」

「うん、よろよろ」

「・・・・・・・・瀬野・・・・」


空気が非常に重い。

そんな中、瀬野は食堂のカツ丼をばくばくと食している。

わたしも少しは瀬野くらいの図太い神経を持った方が良いのだろうか。

珪くんは少しずつだが、あげたパンを食べてくれた。

とりあえず安心だ。


「あっ、そうだ。俺さ!面白いこと考えたんだけど!」

「今朝話していたやつですか?」

「そーそー、あのさ、俺ら生徒会に入らね?」


「・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・」

「・・・・・・・は?」

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