不条理5聯
ムルソー
ムルソーはこの世界に
流産された
不安定の波に乗って
排泄される期間のなかで
彼は人をころした
人の命は
かくもはかないものか
なにも飾らない彼のこころ
重い罪の名のもとで
彼はころされる
息を吐いても
誰にも理解されない
それこそが
ムルソーの地獄だった
詩人
つくづく思うよ
詩人は狂人だ
瞳孔のある風景
この目から見えている虚構は
真実だ
どこまで行っても
果てがない
この目をえぐれば
世界は消える
自分も消える
だからといって
虚構は消えない
いつまでも
虚構に犯される
心という虚構に
人を救う
背に負った大機械の破片
これでいつか人を救えるようにと
淡い光をいつまでも抱いて
幾度も泣いて
強がった
けれど
いつになっても
人は救えない
だれも
救えないのだ
略奪
時間を奪われる
命を奪われる
魂を奪われる
禍々しい狂いに
何もかも奪われる
宇宙的恐怖に
私は私を失い
立てなくなった
そして
ただひたすらに
蝕まれていく
理性
もう逃げられない




