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過去

基本的に作者がやりたい放題するのが目的ですのでグロもちらほら書きます。苦手な方はブラウザバック推奨でよろしくお願いします。

 季節はまだ凍える風の吹く春先。

 吐く息は未だ白く、降り注ぐ月光は嫌に冷たい。

 場所は廃墟。

 生活の名残も褪せた無機物のオブジェ達。壊れたガス管からは何も漏れず、ひび割れたガラス窓からは悲鳴じみた空気の音が響く。隅に固められた机と椅子。小さな棚と大きな黒板が見える。むろんそれらも見事に損壊している。

 ここは廃れた学校の一室。

 男と女がそこで行為に及ぼうとしている。


 荒々しい息が木霊する。男が怯え、女が懇願する。

 男の齢は二十に及ばぬ少年。その顔には悲愴がこびり付いている。絶望、というよりも恐怖が勝っている表情といえば適切か。彼は女はどうこうするのに抵抗があるらしい。

 女の齢は二十台後半。その顔には諦観の羨望が浮かんでいる。彼女の眼は暗く濁っている。光を、希望という在り方を拒むような強すぎる意志の宿った瞳。彼女はひたすらに懇願している。息も絶え絶えながらその身を男に犯して欲しいらしい。


「……嫌だ!」


 叫ぶ。

 絶叫を伴った拒絶。

 男は頭を振る。女を映す瞳は今にも泣きそうである。

 硬く握られた拳には血と汗が滲んでいる。今にも割れんばかりの握力に骨が軋む。

 女は構わず微笑む。

 視線は相も変わらず男だけを射抜き、同時にどこまでも絶望している。呪っている。恨んでいる。憎悪している。あらゆる不の想念を抱いて女はただひたすらに男に願った。


 殺してほしい、と。


 女は男の師匠で、同僚で、想い人だった。過去形なのはもうすぐそれが永遠に失われるから。女の存在は残り僅か。もうすぐ女は女ではなくなる。

 月明かりが少しだけ傾く。同時、露になる女の左半身。

 黒い汚染。影色の侵食。病的な早さで全身を駆け巡るその何か。左腕はもう絶望的。腐った死肉と見まごうほどその肉体はそれらの汚辱に満ちている。胴体も時間の問題であろう。衣服があるため詳しく確認できないが首筋からそれらの触手がぬらりと顔を出している。

 常人なら怖気ですぐさま発狂してもおかしくない状態で女は言葉を紡ぐ。その声音は間違いなく憤怒の色を帯びている。

「……知っているでしょ。私がこいつらをどう思っているか」

 男は沈黙で解答する。何度も何度も聞かされそのたびに自問自答を繰り返した命題。

女はそいつらを根絶させるために生きていた。そのためだけに存在してきた。そのためだけにありとあらゆる蛮行と罪過と暴力を重ねてきた。

 その手助けをしてきた数も男にとって十や二十ではすまない。それだけの業を重ねてきた。けれど女は止まらない。止まることさえ罪とさえ言わんばかりに女は死を振りまいた。


 そうして至った無様な結末。

 同時に女にとって保険を使う機会。

 勿論男はそんなことは知らない。知りうるはずがないのだから当たり前だ。この女の精神状態は、魂の構造はもはや人間の埒外にある。むしろ限りなくそれらに近いとさえ言える。

だから、こんな言葉だって吐ける。


「……知ってるよ、君が私のことを好きなこと」


 笑む。

 微笑みとは艶が違う色魔の貌。

「……だから、これからはずっとずっと愛してあげる。魂が穢れようともこの想いだけはあなたにだけ捧げてあげる」

 未だ汚染が確認されていない白い腕を男に突き出す。

 男にとってはこのうえなく蟲惑的な取引。女がそう思い、考えるような人材を選りすぐったのだから当然といえば当然か。男は動揺する。握り締めた拳がさらに悲鳴を上げる。

 絶望と困惑。恐怖と渇望。

 欲求と拒絶が交じり合って男の自我が曖昧になっていく。歯を食いしばり、自分の今居る現状をどうにかしようと頭を廻しているようだが所詮は女の掌で動いている男には何もできるはずもない。

「だから、ね。殺して。私もこいつらも」

 囁く。

 脳髄に響く、魂を揺らす、魔的な言葉。

 愛を知らないわけではない。愛に飢えているわけではない。愛が欲しいわけではない。そう繰り返し男は繰り返す。脳みそをかき回すように、魂に刷り込むように。

「……君はただ殺せばいい。私を、こいつらを。そうすれば、そうやって君が殺し続けてくれれば、」

 咆哮する。

 考えることを放棄したいのだろう。けれど例え獣に堕ちたとしてやることは変わらない。

 男にはもう選択肢などないのだ。初めからそういう風に女が誘導しここに辿り着かせた結果が今の状況だ。自らが命を落とすときに自分の代わりを立てる。自分の願望を叶え続ける一個の機械を作りだす。そのためなら女は何だってやったのだ。

 結局女の行動は全て自らの欲求を叶えるための手段でしかない。男が女に惚れたのも偶然の要素があったとはいえ予測の範疇内。だから更に女は言葉を続ける。


「私はずっと君のことを好きでいてあげる。ずっとずっと愛してあげる」


 男の右腕が振るわれる。

 握り締めた掌から銀色が溢れる。

 光が形を作っていく。光がカタチを纏っていく。感情が明確な矛先をもって具現する。

 右手に握られたのは黒い刃。大きく厚く、鍔にあたる部分から柄頭までをナックルガード状に覆う片刃の凶器。とても片手では持てそうにない重量を感じさせるソレを男は難なく振るう。

 構えは正眼。

 しかしその切っ先は細かく震えている。未だに躊躇っている。拒絶の意味で今一度女に言葉を投げる。


「まだ、助かるかも……しれない」


 なんて無責任。なんて意気地なし。

 だが、それゆえ覚悟を一度決めてしまえば男は永劫囚われ続けるだろう。取り返しのつかなさを自覚している人間だからこそ一線を越えた先に歯止めが利かない。それを女は自ら経験し、その上で理解している。だからあと一歩で男のタガが外れることも熟知している。そのために鍛え、導き、好意を刷り込んだ存在なのだから。


「大丈夫。君にならできるよ」


 儚げな作り笑い。

 月光に照らされたその精巧さはまさに人形の様に無機質。感情があるように見えてどこまでも偽物。いかに魂を吹き込もうとそこには何もない。カラッポの表情。

 けれど幾ばくもない命と死を連想させる光景の中で、労いの言葉をかけられれば応えない訳にはいかない。例えそれが人の道に堕ちる行為だとしても、例えそれが何も生み出さない悲劇の連鎖の始まりだとしても。


 言葉のようで、言葉にならない音が響いた。

 後悔と怨嗟と悲壮と無力感に苛まれた者が吐き出した言霊。ぶつけどころの分からぬ感情。けれどその切っ先は鋭い。守ろうとするもの、優しくするもの、触れ合おうとするもの、あらゆる全てを切り刻んでしまうほどの鋭さ。だからもう男は戻れない。いやもう彼は戻るという選択肢など存在していない。

 黒の刃が振るわれる。

 軌跡は横一文字。

 狙うは首筋。

 未だ首まで侵食されていない彼女への手向けであると同時に黒い侵食による二次被害を防ぐセオリーの行動。



 そして、彼は、ここで、壊れた。



 ゴトリ、と球状の何かが床に転がる音など意に介さず彼は刻む。彼女に人間らしい死をあたえるために。それらにその死を汚されないために。彼女の死を自分だけのものにするために。

 右腕を斬り飛ばす。折れ曲がった茎のような細さの腕は病的に白い。

 左腕を寸断する。黒に染まったおぞましいそれを原型が残らぬほど滅多刺しにする。

 胴を、脚を、その溢れ出る衝動でめちゃくちゃに犯す。

 黒いそれらに犯されるくらいならばそれ以上の害意をもって女を犯しつくす。

 自慰となんら変わらない。ただの理性のタガが外れただけの獣の行為。

 彼が自分を取り戻す頃にはそこは一面血の池地獄。肉の破片が点在するだけの解体現場。そこには命は存在しない。あるのは肉片と解体する機械だけ。

 もうひとつ付け加えるとするのなら、人外の存在、か。


 甲高い音が響く。


 黒板を爪で強引に引っ掻いた音にも似た不快な音。正確に言えば、声。

 彼の反応が遅れたのは全ての感情を自閉して呆然自失の状態に陥っていたため。あるいはその喪失感に浸っていたから。だから、彼は最善手を誤った。

 不快な音色の正体は首。

 彼が切り飛ばした女の生首。

 言葉で表すのなら飛頭蛮が一番適切だろう。首だけで動き回る異形。ただしその首には翼のような耳もなく飛ぶこともない。けれどその代わりといわんばかりに自己主張する黒い八本の節足が首の切断面から生えているだけのこと。

 即座にその醜い怪異を潰せば何も問題はなかった。

 けれどその悲痛に歪んだ顔に怖気づき、非日常さえ狂わす異常に思わず後ずさった。同時に自分の身を守る力がガラン、という音を立ててその手からこぼれた。それだけの、けれど致命的な間違い。

 似非飛頭蛮が気色の悪い節足を彼の右肺を貫く形で繰り出す。避けることなどできようがない。数秒すらもたず血しぶきがあがる。節足は更に追撃する。彼の動きを拘束するようにその脚を掌に、太腿に、肩に突き刺していく。

 上がる声は気味の悪い首だけの異形のもののみ。

 彼はもう声をあげる気力さえもうない。あるのは諦観と客観だけ。死が近づいてくる。女に与えたものと同じものがすぐそこまで迫っている。彼は少しだけ笑う。対面する異形の貌は醜く歪んでいる。

 愛しい人そのものである赤い海に溺れながら、彼は死を想う。

 死んでどうにかなるとも彼は考えていない。

 女を殺したとして自分がどうなるのかも考えていない。

 そして今、彼は女の願いを無碍にしようとしている。それこそ女の顔の前で。

 しかしその顔は似ているだけの別の何か。女が忌み嫌った存在にその肉体を弄ばれた末路。

 怒りがこみ上げる。憎悪が燃え上がる。どす黒い感情が視界を覆う。無気力はいつの間にかまっすぐな殺意へとすり替わっていた。串刺しにされた右掌を強引に持ち上げる。肉が千切れ、神経が危険信号を発信する。これ以上は腕が使い物にならなくなる。これ以上は生きていくのに支障が発生する。これ以上は自分という個体が保てない。

 激しい本能をなお一層狂った理性で黙らせる。

 異形がにんまりと嘲笑する。

 暴風のような速度で繰り出される黒い節足による攻撃。異質な刺突は当然のように彼の手首から上を持っていく。例え理性が本能を押しとどめたとしても、本能を殺しきることは不可能。故に彼は叫ぶ。純粋に己の痛みにためだけに大気を震わす。

 それでも、彼の瞳には力が宿っている。諦めの悪い殺し屋の目。女の在りし日の視線に近しい虚ろながらも激しい強さを感じさせる魔眼。

 彼の肉体が悲鳴を上げる。魂は、心は鋼だとしても肉体まではそう簡単にはいかない。右の手首から上はただの肉と骨の集合体に成り果て、身体には穴が他に三。失った血液はもうすぐ失血死へのリミットを超える。

 不快な笑い声と共に彼は空き机が積まれた山に叩きつけられる。

 異形がぐちゅぐちゅ、ぶちゅぶちゅと気味の悪い声を女の顔で垂れ流す。

 彼はたたそれだけで殺しかねない殺意で異形を睨みつける。勿論何ら効果はない。ただの威嚇でしかなく以上でもそれ以下でもない行為。

 異形は気味の悪い声をあげながら近づく。八本脚を蜘蛛さながらの自然さでその不自然な人間の頭部だけでできた胴体を運ぶ。醜悪な表情が張り付いたかつて女のパーツが彼の顔に近づく。恐らく意味のない行為。彼が行ったから自分もやってみたという程度の模倣行為。しかしこの無意味極まりない行為とはいえ彼の怒りを買うには十分である。

 唸り声から始まる怒声が一気に弾けた。

 使い物にならない右腕を突き出し異形の顔面を殴りつける。力など入るはずもない。正確に急所を捉えることなどできるわけがない。けれど彼はあらん限りの暴力をそこにこめた。

 心臓のキャパシティなど無視した全力での筋肉運動。

 ごちゃ、という生々しい音が聞こえる。

 砕ける。千切れる。へし折れる。どれも彼の右腕に起こった現象。

 単純に考えて人間にとって最も重要な機関である脳を保護する頭蓋骨が単なる火事場の馬鹿力程度で砕けるはずがないのだ。だからこれは当然の帰結。初めからわかりきっていた結論。

 彼も勿論理解していた。

 それは単純にケジメだったのだ。この命を正しく消費できた、と。女のために一生懸命戦ったのだ、と。そういう言い訳が欲しかっただけだ。たとえ向こう側で女と再会し口汚く罵られても彼に後悔はない。振り返るべきものなど元から何もなかったのだ。

 どさり、と膝を付く。

 そしてうつ伏せのまま血の海に浸かった。鉄の臭いの酷い赤い水。女の、そして自分の命が交じり合った赤い赤いスープ。


 衝撃。

 赤い海が大きく波打つほどの一撃。

 勿論衝撃の主は異形。対象は彼。穿った場所は右側頭部。しかし掠り傷など生温い。ほとんど貫通に近い損傷具合である。ピンク色の何かと血で滲んだ頭皮が見え、異様に綺麗な形で保存された眼球が彼のもとをころころと離れていく。

 衝撃と悲鳴が続く。

 衝撃の主も悲鳴の主も同じく異形。彼はもうまともな反応すら返せない。生命としてもう限界にきている。それをただいたぶる怪異。衝撃は二度、三度続く。必要以上に右半身を攻撃しているのは何か意味があるのかは不明。ただ左半身の傷のなさと右半身の損傷の激しさの非対称さはある意味奇跡的な出来とも言えなくもない。異形の攻撃とも遊戯ともとれる破壊は続く。それこそ対象が完全に壊れてしまうまで。


 彼の命は残り幾ばく。

 蝋燭の炎より頼りない命の残り火。壊れた気管が空気を肺に送ろうと頑張ってはいるがそれ以前に肺がもう使い物になっていない。何故か左肺にこそ破壊の余波がないだけでもう生命維持機能としては終わっている。衝撃は不連続な振動となって彼の思考を脳ごと揺らしている。

 もう女との約束も曖昧。自分の存在すら危ういというのにそんなことを考える余裕すらない。ただ自分が死なないように、長く存命できるように、より多くの呼吸を繰り返すことだけを考える。理性を本能で抑え続けた反動だろうか。今や本能によって理性が悉く駆逐されている。

 どうして、何故、などという疑問すら持てないただ生きているだけの人形。生きているだけが精一杯でただただ玩具のように嬲られ壊され死ぬのを待つだけの存在。

 一際大きな衝撃が部屋中に轟く。

 胴体に大穴が開き、同時にそのボロ雑巾と大差ない肉塊が弾け飛ぶ。

 文字にすればこれだけなのに実態は凄惨極まりない。繋がっているのはただの偶然であり、千切れるのは時間の問題だ。何の皮肉だろうか彼の側には彼が手放した黒い刃が転がっていた。もう攻撃を行う身体も、力も、心さえ足りない。

 異形がのそりと歩む。

 最後の一撃と言わんばかりに節足が鎌首を持ち上げる。用途に応じてその形状を変化できるのだろか。その先端が肉をこそぎ落す肉包丁に似た凶器へと変貌していく。

 異形の姿を彼が見て取れたのはただの偶然だ。弾けた拍子に首が曲がり、そちらへと向いただけの偶然。何の縁もない、それで死期が延びるわけでもない偶然。

 けれどそれが決定的だった。


 彼の眼窩から飛び出した右の眼球が異形の、その更に奥に鎮座していた。

 千切れた筋繊維が申し訳程度に付着しているだけのほぼ完全な球体。今やただ血溜まりを映し出すだけのただのガラス玉。そこに何の意味も価値もない。視力を今更取り戻したとしてこの状況などいくらも好転しない。

 けれどここは非日常の更に奥。ありえないことが平然と起こりうる場所。信じられないことが当たり前のように起こり、信じていたものが簡単に崩壊する空間。

 だから、ただのガラス玉が彼を見つめ返すなど本当によくあることなのだ。

 ガラス玉の瞳孔が開く。しかし彼の瞳にはもう光などない。命が消えかけているのだ。目蓋が開いているのはただ閉じる力さえ足りないだけのこと。

 黒い節足が一歩一歩着実に彼との距離を詰めて行く。

 言葉のない視線だけの会話が続く。一方は目玉、一方は死に掛けという奇妙な間柄。彼もその珍妙な光景に笑いを覚えるが、それだけである。思考もぶつ切れ、呼吸もとぎれとぎれ、肉体に至っては細切れよりなお酷い。

 だから彼の脳内に流れてきたものは幻覚か何かだったのだろう。

 ありえるはずのないものが、知りえるはずのない情報が流れてくる。この世の真理、とでも言えばいいのだろうか。そんなひとつ間違えば気が狂う情報の、命の奔流。けれど結論として待っていたのは非常にくだらないものだった。そしてそれを理解しろ。容認しろ。寛容になれ。刷り込め。認識しろ。それを常識として脳に、魂に焼き付けろと見知らぬ誰かがのたまうのだ。

 拒否することもできた。そうして彼は自分自身の物語に幕を引くこともできた。

 けれど彼はそれを認めた。悪魔の誘惑じみた幻聴。いやそれは悪魔との契約そのものだ。そんな事実を知った上でそれを利用するというのならそれは人の所業の範疇外。

 だから、と彼は強く思考する。

 僅かな命。壊れた女。狂った自らの世界。

 彼に残された僅かばかりのもの。違う、もう彼にはこれしかないのだ。だから彼は選択する。そう言い聞かせる。そうやって彼は自分を追い詰めていく。

 今一度、眼球の形をとる何物かが彼を見る。残った左目を通し、脳髄を、魂を透かしていく。

 瞳孔が小さく絞られる。どちらの、という言葉は野暮だろう。それが契約の合図。それが世界が裏返った瞬間。


 変化は刹那。

 結末は瑣末。

 飛び散る肉片は黒々と光り、舞い散る飛沫は焼けた鉄のように赤い。

 破壊の爪痕は自然現象のそれ。

 彼は彼であることを止め、異形はその存在を剥奪された。一方的暴行から一転、一瞬の殺害劇と相成ったつまらぬ寸劇。

 凍えそうな大気の立ち込める血まみれの廃教室。あるのは一人と半分の肉片と一人の人外。異形は壊された端から白い粉末状の何かへと変貌していく。

 この一夜が契機。彼の物語はこの瞬間に終わりを告げ、同時に始まった。


ちまちま書いてるので更新速度は微妙です。何かご指摘・感想ございましたらお気軽に。

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