第一章 さらば青春の日々
初投稿になります。駄文や至らない部分多くあると思いますが、どうか多くの方が興味を持たれ、読んでくださいますと幸いです。
人生最悪の日……まぁ、これまでの十七年間で、良くも悪くもほとんど平凡過ぎるほどに平凡な生活を送ってきたボクが言っても迫力に欠けるだろうけど、その日は僕にとって、正に人生で最悪の一日だった。
Part 1-
7月14日――― 場所不明 時間不明
広い部屋のカベに取り付けられた巨大なモニターに、一人のスーツ姿の男性が向かって立っていた。
「長官、お話が……」
男が言うと、暗かったモニターが一人手に点灯し、青い画面の中央に、CGで作られた円形のシンボルマークが表示された。
「連絡はもう来ているよ……」
画面から別の男の声が聞こえて来た。
「面倒な事になったねぇ」
その声は溜め息混じりに言った。スーツ姿の男よりも、やや年配そうで、厳格な声ながら、どこか間の抜けたような、子供っぽさのある口調だった。
「あれは『他のヤツ』よりも特殊なヤツだからさぁ、盗まれました。無くなりました。じゃあ、収まりつかないんだよね。そんな大事な物を、何で下っ端の輩に、しかもたった数人のチームに預けるかねぇ。本来もっと強面な奴らが何人もついて、そりゃもう厳重に取り扱われるべきだったよね」
ヒョウヒョウとしているものの、その声は明らかに怒気を放っていた。
「申し訳ありません。まさか、既に狙われているとは思わず……」
スーツの男は、誰も映っていない、声だけが響くモニターに、深々と頭を下げる。
「気の緩みだよねぇ。組織では部下の責任は上司の責任。つまり、キミの責任だよ。良い訳しても始まんないよ。早く回収しないと、なんかの間違いで、街中で死人が出ることになっちゃマズイでしょ」
「はい。十分承知しております。現在、鋭意捜査中でして……」
スーツの男は頭を下げたまま応える。
「つまり、足踏みしてる現状をただ言い訳に来ただけというわけだね」
無邪気に浴びせられる鋭い一言に、男は返す言葉を失ってしまった。
「じゃあこんなトコに居座ってないで、さっさと捜査を進めてちょうだいよ」
「はい。直ちに……」
男は顔を上げると、部屋を後にした。
「今度来たときは良い報せ期待してるよ」
という、脅迫じみた激励を背に受けて。
Part 2 –
7月14日――― 吉野高校 16:30
終業のチャイムによってもたらされる、憂鬱な授業の終焉。それに伴う解放感を感じながら、ボクは思わず伸びをした。ふと窓の外を見ると、先程まで滝のように降っていた雨はすっかり止み、分厚い雲の切れ目から、日の光が漏れ出していた。
「よかった。予報は外れたみたいだ」
今日、傘を忘れて来てしまったボクは、夜まで雨が降り続くという朝の天気予報と、予報通り昼過ぎから勢い良く降り始めた雨に沈んでいたのだった。
「さて……と」
ボクは帰り支度を済ませると、ほとんど誰も聞いちゃいないホームルームの担任の話が終わるのを待って、チャイムと共に一斉に教室を出ていくクラスメートの波に従って、廊下に出た。
――― いつもの光景。
「如月君」
下駄箱で靴を履き替えていると、声をかけられた。振り返ると、一人の女の子が立っていた。
「藤田さん」
藤田 美緒さん。今時の女子高生とは少し雰囲気の違う、おしとやかで清楚な身だしなみの彼女とは、同じ2年の学級委員だった。派手ではないけど、地味でもない。優しくて真面目で、人望も厚い。彼女の事を狙っている男子も多い。
かく言うボクも、その例に漏れず……。
「ど、どうしたの?」
ボクの声は、情けないほどに緊張している感じが丸出しだった。委員会で一緒の同級生とはいえ、優等生で男女問わず人気者の、ボクも少なからず憧れている彼女が、自分で言うのも情けないけれど、こんな目立たないごく普通の「高校生A」に話しかけて来るなんて。
藤田さんは小さく被りを振ると、手に持っていた物を黙って差し出した。その手には、銀色のアクセサリーが乗せられていた。ボクの物だ。
「あっ、これ……」
ボクはそれを受け取ると、しげしげと見つめた。小さな銀色の長方形の箱がいくつも繋がったような、変わったデザインのアクセサリーだ。
「昨日、学級委員会の後、机の整頓をしてたら、落ちてるのを見つけたの。如月君が座ってた席の近くに落ちてたから……」
机の整頓なんかしてるのか。思いながら、ボクはアクセサリーを観察し続けた。別に、アクセサリーを観察する理由があったわけじゃない。ただ、ヘタレなボクは、藤田さんをまともに見て話すことが出来なかっただけだ。
「それって、ブレスレット?」
ボクが目の前で、あまりにも手の中のアクセサリーをまさぐるものだから、藤田さんの興味もこれに移ってしまったようだ。
「え?あ、うん、そう」
よく、好きな女の子にはイジワルをしたくなる、というが、そんな奴はボクに言わせれば、かなり積極的だ。プレイボーイだ。尊敬する。ボクにはイジワルどころか、「え?」と「あ」と「うん」と「そう」という、おおよそ日本語とは言い切れない言葉でしか相槌を打てないのだ。
「へぇ、変わった形ね」
ボクの珍妙な相槌にも構わず、藤田さんは続けた。やっぱり藤田さんでも、こういうのに興味あるんだ。女の子だもんな。
「ねぇ、これって本物のシルバー?」
藤田さんの問いに、僕は戸惑った。これって、本物のシルバー、つまり銀なのか?
「さ、さぁ、ボクにはよくわかんないや……」
ボクは正直な答えを、弱々しく返した。
藤田さんはキョトンとした眼で、ブレスレットから僕に視線を移した。
「買う時に分からなかったの?」
そんな眼で見つめないで……。そう思いながら、ボクは再び正直に答える。
「ボクが買ったんじゃないから……」
藤田さんは更にキョトンとした眼で僕を見つめる。
「元々はじいちゃんの物なんだ。これ」
自分の答えに補足を付け加えて、更に言い訳がましくなったことを、ボクはすぐに後悔した。でも、藤田さんはそれで、「ああ」と、納得したように声を上げた。
「そうだったの」
なんとか体面を守れたことにホッとしたのか、ボクは聞かれてもいないのにペラペラと喋り始めた。
「ボクが小さいころ、じいちゃんがずっと持っていたこのブレスレットを、突然ボクにくれたんだ。どうしてかは分からないけど、その数日後に、じいちゃんは病気で倒れて、ボク達が会いに行く前に亡くなったんだ。それで、結局これがじいちゃんの形見になっちゃったんだ」
言い終わり、その後の沈黙が急に重くなってしまったので、ボクはまた後悔した。
「ご、ごめん、暗い話しちゃった」
そう言うと、藤田さんも慌てて首を振った。
「ううん、そんなことない。大切な物なのね」
「うん。だから、藤田さんが見つけてくれて良かったよ。ありがとう」
その割に、落としたことに気づいてなかったな、と、後で思った。
「良かった。やっぱり、片づけはしておくものだね」
藤田さんがニコッと笑う。可愛い。ボクはドギマギしながらも、この不思議といい感じを体感していた。しかし、それもつかの間……
「じゃあ、私、そろそろ行くね」
そう言って藤田さんはボクに手を振って足早に行ってしまった。
「まぁ、こんなもんか」
いきなり急接近なんてあるわけないよな。そう思っていた時だった。
「今の、B組の藤田だろ?」
今度は聞きなれた男の声。
「新太郎、見てたの?」
藤田さんを見送ったボクの背後には、小学校からの親友、竹中 新太郎が立っていた。図体ばっかりデカくて、お調子者でバカだけど、いい奴だ。
「なんか、いい感じだったな。お前ら」
新太郎が、ニヤニヤして、肘でボクを小突いてきた。
「もう、からかうなよ。そんなんじゃなかったよ」
「彼女を狙ってるんなら、覚悟した方がいいぜ、多くの男子を敵に回すことになるぞ。3年にも狙ってる奴らがいるって話だ」
「だから、そんなんじゃないから……」
言いながら、3年の男子生徒に囲まれている自分を想像し、背筋がゾクッとした。
そんなボクを尻目に、新太郎は話を変えた。
「ところでさ、今日も林のじいさんの喫茶店にバイトに行くんだけど、遊びに来ねぇ?」
林のおじいさんは、学校の近くの大通りの路地裏で小さな喫茶店をやっている人で、目立たない場所にあるせいか、学校の近くなのに、ほとんどの人は存在すら知らない、ボク達の隠れ家みたいな場所だった。でも、最近体調を崩しがちらしく、助っ人として、新太郎が店を手伝っているそうだ。
「ジュース無料?」
ボクが冗談っぽく聞くと、新太郎もニヤっと笑って、
「じいさんがOKならな」
と言った。というのも、林のおじいさんは、金欠のボクらに、いつも飲み物の一杯くらいは快くタダ出ししてくれる、赤字のはずなのに、何とも懐の深い人なのだ。
「じゃあ行く」
「決まりだな」
ボク達はそうやって、無駄話をしながら、いつもの帰宅ルートとは別の、大通りの方へ歩いて行く。
――― 藤田さんにドキドキしたけれど、これもまぁ、いつもの光景。
Part3-
7月14日――― 吉野町 大通り 16:50
ボク達は人の歩道を、林のおじいさんの喫茶店に向けて、歩いていた。この先の狭い路地に入ってしばらく行くと、その喫茶店は、忘れられたように佇んでいる。
無駄話をしながら、ボク達の足取りは前に進んでいく。この町の風景も、道行く人々も、走り去る車も、いつも通りの、僕の日常。何の変哲もないのが寂しいけど、何の異常もないのが一番平和な、ボクの青春。
---ガシャァァン!!ドガァン!!
そして、漫画や映画のような破壊音とともに、ぼくの青春は終わりを告げた。
平和を破った轟音とともに、目の前の狭い路地から、もうもうと土煙が上がった。林のおじいさんの喫茶店へ向かう路地だ。突然の出来事に、ボク達が茫然としていると、土煙の中から、一人の男がボク達の方へ猛スピードで現れた。グレーのスーツにサングラス。見るからに怪しいその男は、こちらに走って来ながらも、しきりに後ろを気にして、何度も振り返っていた。その男がどうやら逃げているらしい人物達が、さらに土煙の中から現れた。
モジャモジャの茶色いクセ毛が耳まで覆う長さの男。すっきりとした短髪の、それでいてガタイの良い、厳めしい男が、並んでサングラスの男を見据えていた。
「チッ、足だけは速ぇ奴。竜崎サン、さっさと『焼いてやりましょう』よ」
クセ毛の男が言うと、ガタイの良い方・・・竜崎と呼ばれた男は、サングラスの男を見たまま言った。
「いや、この距離でやるとなると、一般人を巻き込みかねない」
「それに、この先の交差点に、ずっと路駐してる不審な車があるわ。彼らの仲間なら、『チカラ』を発動したのがわかると、応援をよこすかも」
二人の会話に割って入るようにして現れたのは、プラチナブロンドのロングヘアをサラリと風になびかせる、青い瞳の少女だった。
「つまり、やっぱ俺に行けというわけね」
「そういうことだ。神川」
「ホラ、早くしないと、あの学生クンが危ないよ」
竜崎と金髪の少女に急かされて、神川という男が「ヘイヘイ」と大義そうにぼやいた時には、バチッ、という音と、一瞬の閃光と共に、彼の姿は消えていた。
サングラスの男が、スーツから拳銃を取り出してこちらに向けても、ボクはあまりのリアリティの無さに、それがヤバい物だということを自覚するのに、数秒を要した。そして、現状を把握した時には、隣でやっぱりボーっとしている、図体だけのデカブツと一緒に、ボクの立場は「傍観者」から「人質」へとランクアップ(?)しようとしていた。
「おいお前ら!死にたくなかったら俺と一緒に来てもらうぞ!!」
サングラスの男、もとい、拳銃所持の逃亡犯は、銃口をボクと新太郎に交互に向けてまくしたてながら、接近してきた。すでに距離にして数メートル。もはや逃げ場はない。ここは逃げるよりも、従うしかなさそうだ。
「大人しく・・・」
そう、大人しく・・・
・・・その時、ボクは自分の目を疑った。
一瞬、バチッという音がして、青い光が走った。つまり、静電気が起こった時のような。そんな一瞬の後、目の前に、ボク達と拳銃男の間に・・・
人が立っていた・・・。
さっきまでこの先の路地に立っていたもじゃもじゃ髪の男が、面倒臭そうな表情で立っていて、面倒臭そうな声で言った。
「おい、一般人巻き込むなよ。面倒臭ぇだろが!」
もじゃもじゃ髪の男を見るなり、拳銃男は持っている拳銃を突きつけた。
「空間転送《テレポーテーション》・・・この化け物め!!」
ヤバい、撃たれる・・・ボクがそう判断した時、一瞬、もじゃもじゃ髪の男の身体がヒュッと回転したかと思うと、次の瞬間には、男が放った蹴りに払われた銃が、中空を舞っていた。
「初動作が遅ぇ。あんまし拳銃の経験無いな?」
言うが早いか、もじゃもじゃ髪の男はよろけた拳銃男のボディに2発、そして顔面に1発。拳銃男はサングラスと共に吹っ飛んだ。その時、男のスーツから、なにか小さな正方形の、まるで白いMDのようなものが道路に転がり落ちた。それは2、3回バウンドして落ちると、ディスクの中央で、割れるように観音開きになり、中から博物館で見るような立体ホログラムが映し出され、アルファベットで「SERCH」の文字が現れた。
「おっといけね。竜崎サン、拾ってください!」
もじゃもじゃ髪の男は、倒れた拳銃男を取り押さえながら、駆け寄ってきたガタイの良い男と、金髪の女の子に言った。
「ふう、これで無事奪還・・・か」
竜崎と呼ばれた男は、そのディスクを拾おうと手を伸ばした、その時だった。
ピーッ!!という激しい警告音と共に、今度はディスクに「HIT!」と映し出されて、竜崎の手は止まった。
「え・・・?」
さらに、ディスクからはレーザーのような、白く細長い光が真っ直ぐに照射され、それは傍らで突っ立っていたボクの右手・・・銀色のブレスレットにぶつかった。
「え・・・?なに、コレ・・・」
ボクは思わず右手を振り上げた。しかし、ボクの右手に伸びる光はブレスレットに当てられ続けている。ディスクには「INPUT」と表示されていた。
謎の3人組・・・と拳銃男、ついでに新太郎の視線は、今やボク一人に釘付けだった。
「ま・・・まさか・・・」
竜崎が口を開いた。
「適合者!?」
竜崎の台詞を受け継ぐように、金髪の女の子が叫んだ。
「マジか?こいつがかよ!?」
もじゃもじゃ髪の男が無神経にボクを指さし、2人と顔を見合わせた。
「神川!手を放すんじゃない!」
神埼が叫んだのも束の間、拳銃を持っていない拳銃男は、もじゃもじゃ髪の男、神川の腕を振りほどき、横のディスクを拾い上げた。
「しまった!」
竜崎が男に飛びかかるが、男は間一髪それを交わし、今度はボクに掴みかかった。
「わっ、何するんだ!」
さっきから茫然とし続けていたボクは突然のことに身動きも出来ず、あっさりと男につかまってしまった。
「祐二!」
腰を抜かした新太郎の声が聞こえ、
「くそ、面倒臭ぇ!」
と神川が叫び、
「まさか適合者が現れるとはな・・・こいつはいい土産だぜ」
と拳銃男、もとい、学生拉致男が耳元でささやくのが聞こえた。
数メートル先に黒い車が止まっていて、拉致男と同じようなスーツを着た男が後ろの席のドアを開けて待っているのが見えた。
「なんだそいつは?」
車にいる男の仲間が聞いた。
「へっ、聞いて驚くなよ、『コレ』の適合者だ」
ボクを締め付けている拉致男が、得意げに鼻息も荒く言った。
「何っ、見つかったのか!?そのガキがか?」
「そうだ、意外だろう。こんな小僧が『最後の希望』とは笑わせてくれるぜ」
「最後の希望」?・・・何のことだ?こいつらは何を言ってるんだ?ボクが連れ去られるのは、ただの人質じゃないのか?わけのわからない疑問が頭の中でグルグルと回っていると、ピーッ、という乾いた電子音が耳に響いてきた。
拉致男が握っている、さっきのディスクだった。今は、立体ホログラムで表示される文字が「COMPLETE」となっていた。
「おい、さっさとズラかろう。後ろの化け物達が動き始めると厄介だ」
「なに、こっちにはこの人質がいるんだ。簡単に手は出せねぇよ。ほら、ガキ!さっさと車に乗りやがれ!」
そう言って拉致男がボクを車に押し込もうとする。マズイ。このままじゃ、本当にどこかに連れて行かれてしまう・・・。こいつらの目的はなんだか知らないけど、そうなったら生きて帰れる保証なんてどこにも無い。そんな風に考えたら急にグッと身体に力が込められた。なんだか身体が熱くなる。人間、いざとなったらこんなに勇敢になれるのだ。こんな平凡な高校生でも・・・!
男がボクを押し込もうと、ボクの肩から両手を放したその瞬間、ボクはガバッと身体を跳ね起こし、逆に男のウエストを掴んで反転し、
「うわぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
壮大な雄たけびと共に、男を車の方に男を突き飛ばした・・・つもりだった。
男を突き飛ばしたボクの両手の平が、カッと真っ白に光ったかと思うと、テニスボール大の白銀の玉がそこに出来上がった。それは一瞬のうちに、人間一人を軽く飲み込むくらいの大きさに膨れ上がり、そして・・・
――― ズドォン!!
まるで大砲を発射したような轟音と一緒に、その光の玉はボクの手を離れ、男の方へ飛んだ。
「ぐぁっ」
男は車の方へ吹っ飛ぶと、そのまま光の玉は車と、もう一人の男も巻き込んで、道路の中央まで押しやられ、そこで車が逆さまになって止まった。
人間、いざとなったらこんなに勇敢になれるのだ。でも・・・これは少しやり過ぎじゃないだろうか?
「キミ、早くディスクを拾って!」
女の子の声でボクはハッと我に還った。傍らに、さっきのディスクが転がっていた。もう、立体ホログラムは表示されていない。
気がつけば、周りの通行人たちがぞろぞろと、道路の真ん中で逆さになって転がっている車の方へ集まってきていた。さっきよりも大事になっている。
「そうだ、ディスク・・・」
ボクはディスクを拾おうと足を運んだ。しかし・・・
「あ・・・れ・・・」
ボクの右足は一歩目を踏み出すことはなく、ボクそのままその場に崩れ落ちた。
「おい、大丈夫か!しっかりしろ!」
竜崎という人の声が聞こえる・・・。
「ったく、いきなりあんなデカいの出すからだ!」
神川の声が聞こえ・・・。
「ねぇ、あんまりこの場にいるのを一般人に見られたら良くないわ。とりあえずここを離れましょ」
さっきの女の子の声が聞こえる・・・。
そしてボクの意識は闇に沈んだ・・・。
これが、ボクの青春の、突然の終焉。
そして、絶望という名の地獄の、壮大な幕開けだった。