残日狂想
この世界は呪われています。
この世界は美しくありません。
生きることには意味がありません。
生きることには意義がありません。
朝になったから目を覚まし、
夜になったから眠るのです。
そうして昨日が今日になり、
今日が明日になってゆく。
ただそれだけの、ことなんです。
ただそれだけの、ことなんです。
けれどもそれでも、生きているうちに、
何かひとつを見つけたならば、
少し困ったことになるのです。
世界が呪われていることは、
やっぱり変わらないのですから。
人生に意味がないことも、
やっぱり変わらないのですから。
世界を愛したわけではありません。
苦しいものは苦しいままで、
醜いものは醜いままで、
どうにもならないものは、
やっぱりどうにもならないのです。
ただ、
こんな世界にも、
これがあった。
こんな人生にも、
これがあった。
それだけで、
ああ、生きていてよかったと、
思うことがあるのです。
ああ、生きていかなくちゃあと、
思うことがあるのです。
そうなったら、もう、
仕方がないのです。
それを愛してしまったのですから。
それを美しいと、
思ってしまったのですから。
呪われた世界で、
それでも朝を待つのです。
意味のない人生を、
それでも生きてゆくのです。
そのひとつのために。
そのひとつに出会えた、
この人生のために。
そうしていつか、
こんなものでも人生だったと、
笑うことができたなら。
それで、
よかったのだと思うのです。




