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58話:これからのこと


『ローズ、これからそっちに行くよ』


 『念話の指輪(リングオブコール)』で連絡してから『上位転移(グレーターテレポート)』でローズたちの家に転移する。


「エイジ、今までどこにいたのよ!」


 ローズが空中ダイブで胸に飛び込んでくる。泣いているのは俺のことを心配していたからだろう。


「ごめん、事情があったんだよ。これから全部話すから」


「そうね、全部聞かせて貰うわよ」


 サラがじっと俺を見ている。


「だけどその前に……エイジ、お帰りなさい」


「みんな、ただいま」


 俺は大天使サキュアとアレクサンド帝国のことを説明した。サキュアに一度殺されたことは心配させることになるから話さなかったけど。


「アレクサンド帝国がまた侵攻して来て、エイジが全滅させたの? 姿を見られていないならエイジが疑われることはないと思うけど、物凄い騒ぎになるわね」


 クランベルクに侵攻した飛竜(ワイバーン)を俺が全滅させた証拠はないし、今回の件もシラを切るつもりだ。ここまでやれば誰も俺が1人でやったとは思わないだろう。


「エイジがアレクサンド帝国に敵対する勢力と繋がっているんじゃないかって噂になっているわ。飛竜を全滅させたのはその勢力じゃないかって」


 アレクサンド帝国に対抗できる勢力は存在するからな。敵対勢力が動いたと考えたのか。俺にとっては都合の良い話だから、何か聞かれたら話を合わせておくか。


※ ※ ※ ※


「エイジがようやく帰って来たぜ。どこに行っていたんだよ?


 次の日の夕方、2ヶ月ぶりに冒険者ギルド第3支部に行くと、ダルクたち『蒼穹(そうきゅう)』のメンバーがいつものように声を掛けて来る。ダルクたちは俺に何かあったなんて想像もしていないんだろう。


 ガーランドたち『鉄壁(アイアンウォール)』のメンバーは泊まり掛けで『ラストダンジョン』を攻略しているからここにはいない。


 周りを見渡すと知らない顔の冒険者がいる。帝国軍を退けることができたのは、クランベルクの冒険者が強いからだという噂が広まって、他の街から冒険者たちが集まってきているらしい。


 ローズたちやダルクたちと夕飯を食べながら酒を飲んでいると、俺が戻ったことを聞きつけたのか、他の支部の冒険者たちが次々とやって来た。


「エイジ、礼を言わせてくれ。アレクサンド帝国軍に勝てたのはおまえのおかげだ」


 真っ先にやって来たのは『青き稲妻(ブルーライトニング)』のハイネルだ。『青き稲妻』の他のメンバーも一緒にいる。


「ハイネル、何のことだよ? 俺たちみんなでクランベルクを守ったんだろう」


「そういうことにしておくが、今日は俺に驕らせてくれ。それくらいなら構わないだろう?」


「なあ、エイジ。おまえはどうやって飛竜の群れを全滅させたんだ?」


 サブリーダーのジュリアスが(いぶか)しそうな顔をする。たぶんハイネルが話したんだろう。俺も口止めした訳じゃないし、どうせ疑われることは解っていたからな。


「だから何の話だよ? 飛竜は魔導具の事故で全滅したんじゃないのか?」


 ローレンス子爵……今は伯爵だって話だけど、ローレンスが勝利を宣言したときに、そう言っていたらしい。


「魔導具の事故だなんて、そんなこと本気で信じている奴はいない。ハイネルがそう言っていたんだ。まあおまえにも事情があるんだろう。簡単には話せないよな」


 俺がアレクサンド帝国の敵対勢力と繋がっているって噂のことを言っているのか。下手なことを言うと藪蛇だから話を聞き流す。


「ハイネルが言ったとしても、私はそんなこと信じないわ。ハイネルだってこいつが飛竜を倒すところを見た訳じゃないんでしょう?」


 『紅蓮(ブライトレッド)』のエルザが面白くなさそうな顔をする。


「戦いが始まったときに、あんたはいなかったわ。どこかに隠れていたんじゃないの? 帝国軍の指揮官を倒したのだって、手練れだって言ったのこいつだし、本当は大した敵じゃなかったんじゃないの?」


 別に反論するつもりはない。正面からエルザを見ると、視線を向けたらアウトの圧倒的なボリュームの(トラップ)があるからな。


「エルザ、想像で口にするのは止めろ。俺も遠目で見ただけだが、帝国軍の指揮官が手練れだったことは解る」


「エイジの実力が解らないなんて、エルザも大したことがないわね。相手の実力も見抜けないんだから」


「あんた、私に文句があるの? 上等じゃ……」


 エルザが言葉を詰まらせたのは、相手が『殲滅旅団』のギジェットだったからだ。


「どうしてあんたがこんなところにいるのよ?」


「それはお互い様じゃない。私はエイジに会いに来たのよ……ねえエイジ、今夜は約束通りに私の部屋に来て貰うわ」


「いや、そんな約束していないだろう」


「そうよ、ギジェット。エイジがそんな約束をする筈がないわ!」


 ローズが俺の腕に抱きついてギジェットを睨む。今日のローズは私服姿だから、そんなことをされると色々とヤバい。ブラック企業のサラリーマンだったときに、パワハラ上司とカスハラ顧客の相手を散々したおかげで、どうにか表情には出さずに済んだけど。


「エイジ、おまえのことは噂になっているから、近いうちにローレンス伯爵に呼び出されるだろう。面倒事を避けるために、またしばらくクランベルクを離れるのか?」


「いや、相手が貴族だろうと、もう向こうの都合に振り回されるつもりはないよ」


 今のローズたちなら自分たちで何とかするだろうし、ハイネルだっているんだから、ローレンスが何でも好き勝手にできる訳じゃないだろう。俺がローレンスと揉めたとしても、そのせいで知り合いに迷惑が掛かるとか、そこまで気にしなくて良いだろう。


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