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48話:ゴルドバ


 俺が次に向かったのは帝国軍に占領されたゴルドバだ。


 クランベルクへの侵攻が始まる前に、帝国軍がどうやって都市を落としたのか調べておいた方が良いだろう。


 ゴルドバに到着するとまず目についたのは、都市を囲む防壁が破壊されていること。城があっただろう都市の中心部も同じよう破壊されている。


 ゴルドバの現状と駐留している帝国軍を探るために、魔法で姿を隠したまま上空を飛び回る。住民を威圧するように地竜に乗った帝国兵が街中を巡回している。ゴルドバの住民は街道を南に逃げたって話だけど、今でも多くが都市に残っていた。


 帝国軍の力を見せつけられて逃げることを諦めたのか? 下手に逃げたら竜種の魔物の餌食になりそうだからな。


 ゴルドバに残っている帝国兵は数は100人ほどで、同じくらいの数の地竜(アーズドラゴン)がいる。貴族の邸宅を5つほど占拠して拠点として使っている。100体近い地竜を待機させるには、それくらいのスペースは必要だろう。


 住民が残っているなら詳しい話を聞きたい。ゴルドバをどうやって落としたのか解れば、対策を打てるかも知れないからな。


 装備をつけたままだと目立つから収納庫(ストレージ)にしまって服に着替える。さすがに俺もジャージ以外の普通の服を買ったから、これなら目立たないだろう。


 人気のない場所で魔法を解除して姿を現す。行き交う人たちの顔はさすがに暗い。1人で歩いている中年くらいの男に声を掛ける。


「ゴルドバで何が起きたのか聞かせてくれないか? 勿論礼はするよ」


 収納庫(ストレージ)から出しておいた袋を差し出す。中身は日持ちするパンと干し肉。この状況なら金よりも食糧だろう。


「あんた……ゴルドバの人間じゃないのか?」


「帝国軍の情報を集めるように依頼された冒険者だ。必要なら金も払う」


 適当なことを言ったけど、正直に言っても信じないだろう。男は周りを気にしながら『こっちに来てくれ』と物陰に連れていく。


飛竜(ワイバーン)が上空から炎の塊を次々と落として、最初に城を次に街の防壁を破壊したんだ。兵士の大半が瞬く間に殺されて、俺たちは降伏するしかなかった」


 炎の塊ってのも魔道具を使ったのか? 飛竜は警戒しておいた方が良さそうだな。


 この男の話が本当なら、まるで爆撃機みたいな攻撃だけど戦略的には有効だ。魔法や弓には射程距離がある。射程外からモノを落として攻撃すれば反撃のしようがない。


 ゴルドバに多くの住民が残っている理由は、逃げようとした住民を帝国軍が皆殺しにしたからだそうだ。確かに都市の周辺にも地面が焼け焦げた跡がたくさん残っている。


 おそらくバトリエット城塞も同じように破壊されたんだろう。辺境の魔物の侵攻を防いで来た城塞も、絨毯爆撃されたら反撃のしようがない。クランベルクが同じことをされたら一溜りもないだろう。


 一応裏を取るために他の住民にも話を聞いてみたけど、ほとんど同じような内容だった。俺は帝国軍が占拠している邸宅に向かう。もう1つ確かめたいことがあるからだ。


 邸宅には大量の食糧が運び込まれて、帝国兵の指示で住民が地竜にエサを与えている。接収された食糧の多くが地竜のエサとして消えるってことか。


 『索敵(サーチ)』で周りに人がいないことを確認してから、タイミングを計って邸宅に侵入する。中にいた帝国兵は10人ほどだ。


「おい、貴様……どういうつもりだ!」


 俺に気づいた帝国兵たちが集まって来る。


「おまえたちに訊きたいことがある。アレクサンド帝国が侵攻した目的は何だ? どうして帝国軍はクランベルクに向かっているんだ?」


「おい、そんなことを訊いてどうするつもりだ? 帝国に敗れた貴様たちが、今さら知ったところで何の意味がある?」


 帝国兵は馬鹿にするよう笑うだけで攻撃してこない。今の俺は普通の服を着ているだけで装備は一切つけていない。それでも良く見れば鍛え上げられた身体に気づきそうなものだけど、こいつら油断し過ぎだろう。


「良いから俺の質問に答えろよ。おまえたちの狙いは何だ? 答えないなら力づくで喋らせるからな」


「力づくだと? 貴様のようなガキに何が――」


 言い終わる前に殴りつけると、帝国兵が吹き飛んで壁にめり込む。


「貴様、ふざけた真似を!」


 帝国兵たちが俺を取り囲もうとするけど遅過ぎる。続けざまに殴りつけると、周りにいた帝国兵全員が動かなくなった。


 騒ぎを聞きつけた帝国兵がさらに集まって来る。


「いったい何の騒ぎだ? ほう……弱小国にも少しは骨のある者がいるようだな」


 奥の部屋から出て来た頬に傷がある男がニヤリと笑う。派手な腕章を着けているから、こいつが隊長ってところだろう。


「グリフ中隊長、申し訳ありません。直ぐに始末します!」


「いや、ちょうど暇を持て余していたところだ。俺が相手をしてやる」


 グリフが剣を抜いて構える。グリフは190cm近い長身で俺の身長は170cmだから、パッと見大人と子供の喧嘩のように見えるだろう。


「1人で乗り込んで来るとは良い度胸だ。少しは楽しませてくれよ」


 グリフが挨拶代わりという感じで切り掛かる。収納庫(ストレージ)から剣を出して受けると、見た目通りにずっしりと重い一撃だ。


「何度も同じことを言わせるな。帝国が侵攻した目的を答えろ」


 剣を押し退けて反撃すると、グリフは後ろに跳び退いて躱す。


「そんなことを訊きに来たのか? どうせ貴様はここで死ぬんだ、教えてやろう。戦乱の女神の啓示によって、我々はこの国に強大なダンジョンがあることを知った。我々の目的はダンジョンを手に入れることだ!」


 予想通りの答えだけど、帝国の目的が『ラストダンジョン』を手に入れることなら、俺が作ったダンジョンを狙って侵攻して来たんだから、俺は当事者って訳だ。


 帝国軍が逃げようとした住民を皆殺しにしたと知った時点で、感情的には許せないと思った。だけどあくまでも知らない他人が殺されただけで、これで戦う理由ができた。


 グリフが地を這うように姿勢を低くして飛び込んで来る。繰り出される斬撃を俺は全て受け止める。


「貴様、なかなかやるな……飛竜(ワイバーン)の焔に焼かれて、無様な醜態を晒した弱小国の兵士とは思えん」


「バトリエット城塞にゴルドバの次はクランベルクか? 帝国はダンジョンを手に入れるために何人殺すつもりだ?」


「帝国に歯向かう力のない者が死ぬのは当然のことだ。死にたくないなら、せいぜい抗ってみせろ――『バーストフレイム』!」


 グリフの剣が激しい焔を帯びる。剣を受けた瞬間に爆発して、激しく燃える高熱の焔が俺の全身を焼く。


「だが所詮はこの程度か……おまえたち、死体を片付けておけ」


 グリフが立ち去ろうとした瞬間、奴の首が落ちる。俺が切り飛ばしたからだ。


 炎が消えると無傷の俺が現れる。俺の防御力(DEF)魔法耐性(RES)ならグリフの攻撃くらいノーダメージだ。


「帝国軍の目的も解ったことだし、もう遠慮する必要はないな」


 このままゴルドバを帝国軍に占領されたままにする筈がないだろう。ここからは一方的な蹂躙だ。まずは邸宅の中の帝国兵を殲滅すると、他の邸宅に乗り込んで帝国兵を仕留めていく。


 地竜も放置する訳にいかないから、邸宅の庭にいた地竜を第2階梯魔法『焔連弾マルチファイアバレット』で全滅させる。これなら住民を巻き込まないし、俺の魔法スキルレベルと知力(INT)なら焔弾の威力でもオーバーキルだ。


 街を巡回していた帝国兵と地竜を全部仕留めると、唖然としている住民たちを残してゴルドバを後にする。そして最後に向かったのは辺境地帯に面したバトリエット城塞だ。


 高速でしばらく進んでいると険しい山岳地帯に入る。上空から見下ろすとバトリエット城塞だった場所(・・・・・)は直ぐに解った。


 基礎の部分だけは何とか残っているけど、破壊の限りを尽くされた城塞は全く原形を留めていない。砕けた岩と黒く焼けた瓦礫だけが積み上がっている。ゴルドバと同じように……いや、ゴルドバ以上に徹底的に爆撃されたってことだ。


 城塞には5,000人ほどの兵士がいたらしい。瓦礫の下に大量の死体が埋まっているのか。戦いで死んだ者に対する敬意の気持ちはある。偽善的かも知れないけど、俺は地上に降りてしばらく黙とうを捧げた。


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