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27話:落としどころ

 ここにはまだ100人近い冒険者がいるけど、『殲滅旅団』最強の一角であるアッシュが手も足も出なかったのを目の当たりにして、下手に動こうとする奴はいない。


「そもそも俺たちは『死神』の件で話をつけに来たんだ。そっちの話がキッチリつけば、今なら百歩譲って、武器を抜いた奴らが勝手に暴走したってことにしても構わないよ」


 ここにいるのは俺たち以外全員『殲滅旅団』の息が掛かった奴だ。俺たちを始末すれば今日の件を揉み消すことできるけど、そうなれば最後まで殺し合うことなる。俺はオスカーの性格を考慮して、何を切り捨てれば得か提示する。


「こんなことをしているよりも、ライゾウたちを蘇生させて話を聞いた方が早いだろう。ここに蘇生魔法が使える奴はいないのか? 」


 俺の問い掛けにギジェットが視線を向けると、オスカーが渋々って感じで頷く。俺は情報屋に金を払って『殲滅旅団』について調べたから、こいつらの事情をある程度は知っている。


 『死神』は実力あるけど、クランの指示を無視して犯罪行為に走るような奴らで、オスカーたちも手を焼いているらしい。ライゾウたちを蘇生させたら『殲滅旅団』に不利なことを口走りかねないと思って、これまで放置していたんだろう。


 蘇生魔法の成功率は、司祭魔法スキルのレベルと知力(INT)、対象の最大HPによってが決まる。ローズと同じ聖騎士(パラディン)のギジェットが蘇生魔法を使うのは、ここにいる中で1番成功率が高いからか?


「『死者復活(レイズデッド)』!」

 

 ギジェットは蘇生してから直ぐに動けるようになる第7階梯魔法の『完全蘇生パーフェクトリジェネーション』じゃなくて、回復に時間が掛かる『死者復活(レイズデッド)』を使った。ライゾウが何をするか解らないと警戒しているのか?


「……身体が痛ってえ。おい、ここはどこだ?」


 蘇生魔法が成功してライゾウが意識を取り戻す。


「ここは冒険者ギルドだ。ライゾウ、俺の質問に応えろ。おまえたち『死神』は誰に殺されたんだ?」


 オスカーが冷ややかな声で言う。


「……エイジってガキと『天元突破』の奴らだ。あいつら、ふざけやがって……」


「おまえらがローズたちを襲ったからだろう。自業自得だ」


「エ、エイジ……てめえが、どうしてここにいる? てめえさえ来なかったら、全部上手くいっていたんだ! オスカー、このガキをぶち殺せ!」


 オスカーが憮然とした顔をする。これじゃ完全に自白したようなモノだろう。


「オスカーは復活したばかりで疲れているようだ。奥の部屋で休ませてやれ。他の4人を蘇生させるのは後だ。時間を掛けて構わないから確実に蘇生させてやれ」


「おい、オスカー! 俺の話を聞いてねえのか?」 


 オスカーの指示で冒険者たちが、まだ身体の自由が利かないライゾウと4人の死体を運んで行く。オスカーが言ったことは口実で、ライゾウを連れて行ったのも、他の4人を直ぐに蘇生させないのも、これ以上余計なことを言わせないためだろう。


「ローズ、サラ、ラウル、そしてエイジ……おまえたちが言ったことは事実のようだな。『殲滅旅団』のクランマスターとして謝罪させて貰う」


 それでも『死神』の奴らの罪を問うのは難しいだろう。ライゾウが自白したようなモノだけど、ダンジョンの中で起きたことだから他に証人はいないし明確な証拠はない。証言台でライゾウたちが自白すれば話は別だけど、自分たちの罪を認めるとは思えないからな。


「だがクランマスターの名に誓って言うが、今回の件は『死神』独断で行ったことで『殲滅旅団』は関与していない」


 この状況でそんな言葉を信じろって言うのか? だけど証拠はないし、俺たちの目的は『殲滅旅団』追い詰めることじゃない。


「それでも『殲滅旅団』には所属するパーティーを管理する責任があるわ」


 サラが真っ直ぐにオスカーを見る。一歩も引くつもりはないって感じだな。


「無論それは理解している。『殲滅旅団』は今回の件について『天元突破』に相応の賠償金を払うつもりだ」


「賠償金を要求するつもりはないわ。その代わりに『死神』に首輪をつけてくれないかしら。私たちを2度と襲わないように」


「首輪だと……調子に乗りやがって……」


 サラの要求に周りの冒険者たちが憮然とする。『死神』には『殲滅旅団』も手を焼いているみたいだからな。無理な要求を突きつけられて、怒りの矛先がサラに向く。


「武器を抜いて勝手に暴走した(・・・・・・・)奴らの件も、この条件を飲むなら不問にしても構わない」


 俺がカードを切るとギジェットが面白がるように笑う。


「オスカー、今回はさすがに仕方ないんじゃない。これまでも色々と悪い噂はあったけど『死神』は完全に一線を超えた。『殲滅旅団』としても放置する訳にいかないわ」


 『殲滅旅団』でも屈指の実力者であるギジェットの言葉に冒険者たちが黙る。ローズたちが生き残ったことで『死神』がしたことはクランベルクの街中に伝わるだろう。


 『殲滅旅団』としても自分たち以外の全ての冒険者を敵に回す訳にはいかない。事が大きくなればクランベルクの街を治める太守に、クランとしての資格を剥奪される可能性もある。


「オスカー、私に考えがあるわ。『死神』に監視役の冒険者を加入させる。絶対に買収されない人間を人選をして、もし監視役が死ぬようなことがあれば『死神』が殺したとみなして責任を取らせる。これなら問題ないわね?」


 ギジェットは俺たちとオスカーを交互に見る。


「ローズ、ラウル、エイジ、この条件で構わないわね?」


 サラの言葉に俺たちは頷く。落としどころは事前に決めていたからな。


「仕方あるまい……ギジェット、監視役の人選と『死神』の対処はおまえに任せる」


 オスカーは不機嫌そうな顔で言った。


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