24話:説明
「エイジのおかげで助かったわ!」
ローズが空中ダイブで俺に思いっきり抱きつく。ちょっと恥ずかしいし、装備を着けたままだから痛いだけだからな!
「エイジが来てくれなかったら、どうなっていたか……ねえ、どうしてエイジがここにいるの?」
「ローズ、私が『念話の指輪』でエイジを呼んだからよ」
ローズから『念話の指輪』で念話が来た後にサラからも連絡があって、『死神』に襲われていることと自分たちの居場所を伝えて来た。
サラがどこまで俺のことに気づいているか解らないけど、無駄なことをするような性格じゃないから、俺が駆けつけられる可能性があると考えたんだろう。
メイからローズたちの状況を聞いていたから、俺はサラから連絡が来る前にローズたちの元に向かっていた。ローズたちを監視していることがバレるのを承知の上で。
メイには制作室のことをローズたちに話すことになるかも知れないと先に謝っておいた。
ローズたちになら本当のことを話しても構わないと思う。だけどサラのおかげで、とりあえず今のところはそこまで説明する必要はなくなった。
「念話で呼んだにしたって、エイジはどうやってここまで来たんだ? さっき魔法を使っていたが、もしかして『転移』が使えるのか?」
「ああ。今まで黙っていたけど、俺は魔術士魔法が使えるんだ。最近は『試練の塔』だけじゃなくて他のエリアの攻略もしているから、この辺りにも来たことがあって『転移』で移動したんだよ」
嘘は言っていないけど、ローズたちがいる11階層に来たことがあるのは攻略するためじゃない。『殲滅旅団』が何か仕掛けて来ることを想定して『転移』で移動できるようにするためだ。
この『ラストダンジョン』は俺が作ったから全てを知り尽くしている。『転移』で移動するために訪れるだけなら、最短ルートで走破すればそれほど時間は掛からない。それに今の俺なら11階層の魔物とソロで戦っても普通に勝てるからな。
「エイジ、今回のことは本当にありがとう。貴方が来てくれなかったら、私たちは死んでいたか、もっと酷い目に合っていたわ」
サラが深く頭を下げる。
「ちょっと止めてくれよ……そういうのサラらしくないだろう?」
「それって、エイジは私を礼儀知らずな人間だと思っているってこと?」
サラが冷ややかな目で俺を見る。
「いや、そんなつもりじゃないよ。サラに睨まれた方がしっくり来るって言うか……本当は解っているのに、わざと言っているだろう?」
「さあ、どうかしら……だけどエイジに感謝しているのは本当よ」
サラが口元に笑みを浮かべる。やっぱり俺を揶揄っていたんだな。
「エイジ、俺からも礼を言わせてくれ。おまえは俺たち『天元突破』にとって命の恩人だ。どんなに感謝しても感謝しきれないぜ……おまえの手を煩わせたことは反省しねえといけねえが」
ラウルは自分がローズたちを守れなかったことに責任を感じているみたいだな。
それはローズも同じで悔しさを噛みしめている。相手が『死神』だったから仕方ないとは言えない。そんなことを言ってもローズたちは納得しないだろう。
「ところで話は変わるけど、『死神』の奴らの死体はどうする?」
俺たちは『殲滅旅団』の№2『死神』の5人を殺した。他の冒険者を殺すのは基本的には犯罪だ。だけど殺すだけで犯罪者になるなら防衛手段がなくなるから、正当防衛は認められる。
今回の場合はレベルが高くて人数も多い『死神』が相手だし、『死神』の悪い噂は絶えないから、俺たちの正当防衛は認められるだろう。
俺の存在も問題にならないだろう。俺は大した実績を上げていない冒険者だ。冒険者ギルド職員のグレッグは俺とローズの模擬戦を見ているけど、だからって『死神』を倒せる実力があるとは思わないだろう。
だけど『死神』の奴らの死体を持ち帰ると別のリスクが発生する。蘇生魔法で復活した『死神』は意趣返しをすることを考えるだろう。奴らの性格を考えれば可能性はかなり高いと思う。
俺はともかくローズたちをまた狙うなら――正直、このまま死体を始末することも考えた。今は俺たちがいるから死体が残っているけど、死体を放置して立ち去れば結構な確率で消滅する。
どうしてパーティーが全滅したら死体が消滅するのか? 魔物に食われるとか、ダンジョンが吸収するとか言われているけど、実際に見た奴はいないから本当のところは解らない。だけど死体が消滅するのは事実だ。
正当防衛を主張するには死体を持ち帰る必要がある。殺した相手を放置したらそれ自体犯罪行為だ。だけど放置したところで俺たちが殺した証拠はない。
他の冒険者が『死神』の死体を持ち帰ったら、蘇生魔法で復活した『死神』の奴らに恨まれるだろう。だけど証拠がないことに変わりはないから、俺たちが裁かれることはない。
ローズたちが直ぐに答えないのは、俺がライゾウたちを殺したからだろう。本来は何の関係もない筈の俺を巻き込んでしまった。だから俺が決めて構わないと言うのも無責任で、どうするか迷っているんだろう。
だったら俺には1つ試したいことがある。まずはそれを試してみるか。俺は『収納庫』を発動する。
「よし、成功だ」
死体はアイテム扱いで『収納庫』に入るか試したら成功した。突然『死神』の5人の死体が消えたことにローズたちが唖然としている。
「エイジ……何をしたか説明してくれるかしら?」
「俺のスキルを発動させたんだ。勿論制限はあるけど、重量や大きさを無視してモノを運べるスキルなんだ」
「そんなスキル聞いたことがないわ。しかも5人の死体を運べるなんて……」
『ダンジョンズ&マジック』に存在しないスキルだから知らないのは当然だろう。だけど俺は死体を運ぶために『収納庫』を使った訳じゃない。
「このまま俺のスキルで死体を隠しておくこともできる。俺たちが黙っていれば『死神』の奴らは行方不明ってことになる。『死神』に意趣返しをさせないためには、これが一番の方法だろう」
ローズたちの反応を見ながら説明する。いきなりこんなことを言われても戸惑うだけだろう。まあ、俺としても選択肢の1つとして提示しただけだ。
「『死神』の死体をどうするかはローズたちが決めてくれ。ライゾウの話だと今回の件は『死神』の独断みたいだけど、11階層に他の冒険者を入れないために『殲滅旅団』の他の冒険者を動かした可能性はある」
メイが制作室のスクリーンに映る映像で、『殲滅旅団』の冒険者がローズたちの周囲を封鎖しているのを目撃しているから可能性じゃなくて事実だ。もしそいつらが動いたらメイが知らせてくれることになっている。
「『死神』が意趣返しするなら、返り討ちにするだけだから問題ない。『殲滅旅団』そのものを敵に回すかも知れないけど、何も間違ったことはしていないから構わない。俺のことは気にしないで、みんながどうしたいのか聞かせてくれないか?」
俺だってローズたちの性格は解っているつもりだ。だから3人の答えは予想できた。




