表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

23/47

23話:選択肢


「エイジ……」


 無精髭の男に拘束されたローズが俺を見ている。他にも4人が入口を塞ぐように立ち並ぶ……こいつら、どう考えてもクズだな。


「てめえ……見たことのねえ顔だが、俺たちの相手になるだと? 11階層にいるくらいだからそれなりのレベルなんだろうが、俺たちが誰か解っていねえのか?」


 無精髭の男が俺の背後を見据えながら、禿げ頭のローブ姿の男に合図する。普通は1人で11階層にいる筈がないから、他にも仲間がいると思っているみたいだけど……


「ゴチャゴチャと煩いんだよ!」


 俺は加速して立ち塞がる男たちの間を擦り抜けると、無精髭の男の元に走って顔を殴りつける。男は吹き飛んで、解放されたローズに俺は駆け寄る。


「ローズ、よく頑張ったな」


「エイジ……来てくれたのね。だけどどうして……」


「話はこいつらを片づけた後だ。ローズはラウルたちと一緒に下がっていてくれ」


 ローズが背中に庇って、男たちを睨みつける。


「てめえ、いきなり何しやがる……その素早さは盗賊系クラスか? だが本当に俺たちが誰か解ってねえみてえだな!」


 無精髭の男が血を吐き捨てて立ち上がる。


「おまえたちは『殲滅旅団』の№2、悪名の高い『死神(グリムリーパー)』。おまえがリーダーのライゾウだな」


 制作室コントロールルームの映像で見た『殲滅旅団』の行動や、シーダたちのことがあったから、情報屋に金を払って『殲滅旅団』について詳しく調べた。意外に思うかも知れないけど、俺は転生者だから情報の重要さを理解している。


 特に映像で見た『死神』の行動は目に余ったから、メンバー全員の情報を集めて、メイに頼んで監視して貰った。だから『死神』の戦力は把握している。


「俺たちが『死神』だと知った上で喧嘩を売るのか? 面白れえじゃねえか!」


 ライゾウが残忍な笑みを浮かべる。一斉に仕掛けて来ないのは、自分たちの方が強いと思っていることと、禿げ頭の男に確認して他に仲間がいないと解ったからだろう。


「一応訊くけど、どうして『天元突破』を襲ったんだ?」


 『殲滅旅団』の指示か『死神』の独断かによって、今後の対応が変わって来る。


「決まっているじゃねえか。ハーレム野郎のラウルをぶち殺して、ローズとサラを俺のモノにするためだぜ」


 ライゾウは悪びれることもなく当然のように言う。


「そんなことをしてローズとサラが言いなりになる筈がないだろう」


「そんなの関係ねえ、力づくで言うことを聞かせてやるぜ。ボロクズになるまで楽しんだら、女もぶち殺すだけだ!」


 『死神』の奴らが下卑た笑いを浮かべる……こいつら、本当にクズだな!


「ライゾウ、こいつは俺がやらせて貰う。あんたはラウルとローズを散々痛めつけたんだ。今度は俺の番だぜ……生意気なガキに世の中の厳しさを教えてやらねえとな!」


 俺の前に進み出たのは、赤い髪で身長2m近い巨漢。全身に筋肉の鎧を纏っているような身体つきで、巨大な戦斧を肩に担いでいる。


 こいつはバーバリアンのガーグ。バーバリアンは戦士(ウォーリアー)をさらに物理攻撃特化型にしたクラスだ。『死神』は普段14階層を攻略しているからレベルは20台後半ってところだろう。


「世の中の厳しさ? おまえたちみたいなクズがたくさんいるってことか?」


「てめえ……舐めるんじゃねえぞ!」


 ガーグは殺意を込めた戦斧を叩き込んで来る。完全に殺すつもりだな。

 俺は2本の剣を抜いて受ける。身長は30cm差、体重は俺の倍以上ある。ガーグは1撃で俺を押し潰すつもりだろう。


「別に舐めているつもりはないけど、実際のところ大したことないな」


 俺は右手の剣1本で戦斧を止める。


「ふざけるんじゃねえ、ぶっ殺してやる!」


 ガーグが力任せに繰り返す攻撃を、剣1本で受け続ける。


「おまえの力はこんなモノか? こんなんじゃ俺には通用しない。早く固有能力(オリジナルアート)を使ったらどうだ?」


「てめえ……良いだろう、見せてやるぜ! 『狂戦士化(バーサーク)』!」


 『狂戦士化(バーサーク)』は文字通りに狂戦士と化すことで、一時的に(STR)素早さ(AGI)が倍増する代わりに知力(INT)器用さ(DEX)が半分になる。


 ガーグが唸り声を上げながら戦斧を振り回す。俺は剣で受けるけど、力を殺し切れずに足元の床が砕ける。


「エイジ!」


「ローズ、大丈夫よ。エイジには全然効いていないわ」


 ガーグが戦斧を振り下ろすタイミングに合わせて、右手の剣を一閃する。

 力と力が正面からぶつかって戦斧が砕ける。そのまま剣を振り抜き、ガーグの腹を切り裂いて吹き飛ぱす。ガーグは壁に叩きつけられて、砕けた壁の中にめり込む。これはHP全損で即死だな。


 俺は相手が敵なら殺すことを躊躇(ためら)わない。エイジ・マグナスだった頃に人を殺した経験はある。『(くろがね)の刃』では色々あったんだよ。誓って言うけど、理由もなく殺したことはないからな。


「少しは対人戦の経験になると思ったけど、これじゃ完全に肩透かしだな」


 ライゾウが殺意を剥き出しにして俺を睨む。


「チッ……ブライ、ガーグを早く蘇生させろ!」


 ライゾウが刀を俺に向けて牽制する中、もう1人の巨漢の男修道士(モンク)のブライがガーグの元に向かう。


 修道士は素手で戦う戦闘(コンバット)スキルを持つ戦士系クラスで、聖騎士(パラディン)と同じように司祭魔法を第7階梯まで習得できる。ブライも20レベル台後半の筈だから蘇生魔法くらい使えるだろうけど、そんなことさせる筈がないだろう!


「『放電(スパーク)』!」


 指先から伸びた電光がブライを貫く。俺の知力(INT)なら第5階梯魔法でも威力は十分だ。ブライの身体が消し炭になって砕ける。


「てめえ……戦士系と魔術士のマルチクラスか、油断したぜ! ギース、ゼン、全力でこいつを叩き潰すぜ!」


 『死神』の残り2人、覆面の暗殺者(アサシン)ギースと禿げ頭の死霊使い(ネクロマンサー)ゼンが動く。


「『死霊召喚(サモンアンデッド)Ⅳ』!」


「『潜伏(ハイド)』!」


 ゼンが召喚したのはドラゴンゾンビ、猛毒のブレスを放つ20レベル台半ばの魔物だ。死霊使いは強力な攻撃魔法を使えない代わりに、高位アンデッドを召喚して戦う。


 ギースが発動したのは姿を消すスキル。姿を消して急所を狙えばクリティカルヒットが狙える。普通なら脅威だけど……今使うのは、どう考えても悪手だろう。


「『聖光剣(ホーリーライトソード)』!」


 ローズが放った光の刃がドラゴンゾンビごとゼンを切り裂く。聖騎士(パラディン)固有能力(オリジナルアート)はアンデッドに特攻効果がある。


「隠れても無駄だわ――『殲滅光(アニヒレイトレイ)』!」


 盗賊スキルで姿を消しても『索敵(サーチ)』には反応する。サラが放った魔導士(ウィザード)第7階梯魔法がギースに命中。通称移動砲台と呼ばれる魔導士の第7階梯単体(・・)攻撃魔法の威力は絶大だ。


 それでもレベル差があるからギースを仕留め切れなかったけど、ダメージを受けたら『潜伏(ハイド)』は解除される。


「ここまで好き勝手にやってくれたぜ!」


「お、おい……ま、待ってくれ!」


「『強化連撃(フルコンボ)』!」


 ラウルは容赦なく、ギースの頭上から大剣を振り下ろした。


「ライゾウ、これで残りはおまえ1人だ」


「チッ……だから何だ? てめえらを皆殺しにすれば済む話だぜ!」


 ライゾウが床を蹴って加速する。眼前に迫ると刀を横に一閃。俺が剣で受けると、素早い斬撃を続けざまに叩き込んで来る。どうやらスピードなら俺に勝ていると思っているみたいだな。確かに速くて正確な太刀筋だけど……


 メイはもっと速くて正確な上に一切容赦しないからな。最小限の動きでライゾウの刀を躱すとカウンターで1撃を入れる。ライゾウは後ろに跳んで距離を取る。


「ライゾウ、今のがおまえの全力か? これじゃガーグって奴と大差ないな」


「ふざけるんじゃねえぞ……てめえは無様に死にやがれ! 『真空斬(エアリアルエッジ)』!」


 ライゾウが刀から5つの斬撃が飛ぶ。『真空斬(エアリアルエッジ)』は高速で斬撃を飛ばすサムライの固有能力(オリジナルアート)だ。戦闘(コンバット)スキルのレベルが上がると斬撃の数も増える。


 物凄いスピードの斬撃だけど問題ない。俺は2本の剣で全て叩き切る。


「『真空斬(エアリアルエッジ)』を切っただと……」


 今度はこっちの番だな。一瞬で距離を詰めると、ライゾウが反応できない速度で剣を叩き込む。


「な……何だと……」


 袈裟切りにしたライゾウが口から大量の血を吐いて崩れ落ちる。『死神』のリーダーも呆気なかったな。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ