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21話:復讐


「てめえ……この前とは随分態度が違うじゃねえか。ローズたちに気に入られたと勘違いして図に乗ったか? 俺の忠告を無視しやがって……ローズに関わるなと言っただろう!」


「そんなこと言っていたか? 全然憶えていないよ」


 俺が態度を変えたのは、今日で片をつけるつもりだからだ。この前とは状況が違う。ガイアたちの方が人数が多くても今の俺なら問題ない。街中で殺すのは不味いけど、殺さなければ問題ないだろう。


「俺たちを舐めるんじゃねえぞ! この人数に勝てると思っているのか?」


 聖騎士(パラディン)のガイアと盗賊(シーフ)のドレイク、俺の知らない濃い茶色の髪の斧使いが武器を抜いて構える。簡単に挑発に乗るとか、ホント扱い易い奴らだな。


 ガイアとドレイクに司祭(プリースト)のエドガー、魔術士(メイジ)のジェリル。こいつらの実力は把握している。俺の代わりに入ったもう1人、茶髪の斧使いの実力は解らないけど、初めから油断するつもりはないからな。


「だから何だよ? 大口を叩くなら俺を倒してからにしろ」


「ふざけやがって! おい、徹底的に痛めつけろ!」


 ガイアたち3人が一斉に仕掛けて来る。だけど今の俺にとって、こいつらの動きは遅過ぎる。まずはガイアとの距離を詰めて、剣を振る間を与えずに顎を殴り飛ばす。死なないように手加減したげと、ガイアの身体が高く宙に舞う。


「てめえ、ガイアをやりやがったな!」


 ドレイクと茶髪の斧使いの反撃を躱すと同時に、続けざまにカウンターを入れる。続いて後方にいる司祭のエドガーの所まで一気に走って殴りつける。


 エドガーが使えるレベルの司祭魔法(プリーストスペル)だと生身まで回復しないけど、もしガイアたちが回復したら面倒だからな。


 殴った奴は全員動かない。これであと1人だ。


「お、おい……こ、こっちに来るな!」


 魔術士のジェリルが怯えた顔で後退る。だけど逃す筈がないだろう。俺がにじり寄ると、ジェリルは慌てて魔法を詠唱する。


「『火焔嵐(ファイアーストーム)』!」


 魔術士第4階梯魔法の焔が俺の全身を焼く。だけど俺の魔法抵抗力(RES)なら、ジェリルの魔法なんて掠り傷程度のダメージだ。


「そっちが殺そうとしたんだ。今さら命乞いするなよ」


「ま、待って――」


 言い終わる前に殴りつけるとジェリルも動かなくなった。勿論、殺すと面倒だから手加減した。防御力(DEF)もHPも低い魔術士だから手加減するのが難しかったけど、息があるからまだ生きている。


 他の4人も生きていることを確認していると。


「おい、おまえたちは何をしている!」


 クランベルクの街の衛兵たちが集まって来た。街中で派手に攻撃魔法まで使ったんだから当然だろう――俺の狙い通りに。


 俺はジェリルに魔法を使わせるために、最後に残して追い詰めた。まさか『火焔嵐(ファイアーストーム)』まで使うとは思わなかったけど、ホント馬鹿な奴だよな。10人単位で人を殺せる魔法を街中で使ったら立派なテロリストだ。


 衛兵から事情聴取を受けたけど、俺は丸腰なのに向こうは4人で武器と魔法を使った。どう考えても俺が被害者だ。誰も殺していないし、1時間ほどで解放される。

 ガイアたちは良くて犯罪奴隷落ちで、処刑される可能性もあるだろう。


 こいつらにダンジョンで囮にされて、エイジ・マグナスだった俺はオーガに殺されたんだ。自分の手で殺したいと思わなくはない。だけど俺には他にやることがあるし、これ以上相手をしている暇はないからな。


 茶髪の斧使いを巻き添えにすることなったけど、こいつも武器を抜いて襲い掛かって来たから構わないだろう。


※ ※ ※ ※


※三人称視点※


 第5階梯魔法『千里眼(クレアボヤンス)』を発動して、獰猛な肉食獣のような目をした男たちが、10階層の攻略を進めるローズたち『天元突破』を眺めていた。


 だが彼らが見ているのはローズたちの戦いぶりではなく――


「いつ見ても溜まらねえな……ローズとサラは良い身体をしていやがる。もう我慢ならねえ……さっさと襲っちまうか!」


 やたらと目つきの鋭い無精ひげの男が、残忍な笑みを浮かべて舌なめずりする。人殺しの顔と揶揄することがあるが、男の顔はまさにそれだった。


流石(さすが)に今は不味いぜ! 人目が多過ぎる……せめて奴らが11階層に降りて来てからにしてくれ。11階層から冒険者の数が減るから、どうにでもやりようはあるだろう?」


 11階層までたどり着いた冒険者はクランベルクでも一握り。それだけ強いということだが、男たちはまるで眼中にない感じだ。


「うるせえな……そんなことは解っているぜ! てめえ……ブッ殺されてえのか?」


 無精ひげの男が自分の武器に手を掛けて殺意を放つ。殺すことが日常の者特有の鉄と血の匂いに満ちた濃密な殺意だ。


「おいおい、勘弁しろよ。仲間内で殺し合いはごめんだぜ……そのときが来たら、おまえが2人纏めて最初にやって構わねえから、それで手を打たねえか? だが(なぶ)り過ぎて壊すんじゃねえぞ。俺たちが楽しめねえからな!」


「そいつは約束はできねえ。泣き叫ぶ奴を殴りながらやるのが最高なんじゃねえか! まあ俺も鬼じゃねえから、てめえらがやる前に殺しはしねえぜ」


「殺さなくても廃人にするまで楽しむつもりだろう? おまえに比べたら鬼の方がマシじゃねえか!」 


「違えねえ、クックックッ……」


 男たちが下卑た笑みを浮かべる。


「じゃあ仕方ねえ、もう少しだけ我慢してやるか……ローズ、サラ、11階層まで降りて来たら、たっぷり楽しませて貰うぜ!」


※ ※ ※ ※


 ガイアたちと一悶着あってから1ヶ月ほど過ぎた。『試練の塔』の攻略は順調に進んでいる。メイが言うには、最下層付近の魔物が増えるペースが落ちているそうだ。


 制作室(エディットルーム)のスクリーンに映る映像で見ても俺には違いが良く解らない。だけど『試練の塔』の攻略を進めたことで、魔物の暴走(スタンヒピード)が起きる時期を少しは遅らせることができたみたいだな。


 ローズたち『天元突破』のメンバーとダルクたちとは、情報交換するために週1くらいのペースで会っている。ローズたちはついに階層(フロア)ボスを倒して10階層を攻略、今は11階層を攻略中だ。


 ダルクたちは『殲滅旅団』の誘いを断り続けているけど、冒険者ギルド第2支部で孤立している以外に実害はないそうだ。ダルクたちのレベルが低いから『殲滅旅団』も旨味がなくて本腰を入れていないってところか。


 ガイアたちは結局処刑されずに犯罪奴隷落ちした。やったことはテロリスト同然だけど、1人も死傷者が出なかったことが決め手らしい。エイジ・マグナスをダンジョンで見殺しにした証拠はないからな。


 俺の方は新しいサブクラスとして暗黒騎士(アベンジャー)を習得してから、前衛クラスルートの攻略を本格的に始めた。


 経験値を稼ぐだけなら、魔法で大量の魔物を仕留められる後衛クラスルートの方が効率が良い。だけど先を考えたら前衛クラスルートで強い魔物と戦う必要がある。


 メイとの立ち合いで格上の相手と戦う経験は積めるけど、メイが俺を殺すことはないから、強い敵との実戦経験を積むべきだろう。


 玄室の扉を開けると中にいたのは白銀の鱗に覆われた巨大な竜プラチナドラゴン。前衛クラスルートでは魔物が1体しか出現しないけどその分強い。


 プラチナドラゴンはステータスが高い上にドラゴンブレスと魔法まで放つ。だけど麻痺や石化などの状態異常効果のある攻撃はないし、使う魔法も単純な攻撃魔法だ。


 距離を詰める前にプラチナドラゴンが稲妻のブレスを放つ。行動パターンは解っているから横に跳んでブレスを躱すと全速力で巨体に迫る。


 こいつのブレスを躱せるのはステータスの効果もあるけど、メイとの立ち合いを続けているおかげだ。


 プラチナドラゴンは魔法抵抗(RES)も高いから魔法は効きにくい。俺は両手に持った2本の剣を叩き込む。ソロで戦うと手数が足りないから二刀流になるのは必須だろう。


 2連撃でプラチナドラゴンのHPを削る。この2本の剣はどっちも『試練の塔』のドロップアイテムで、俺が持っている剣の中ではトップツーの性能だ。


 至近距離からプラチナドラゴンの牙と前足2本の同時攻撃。牙と片方の爪は剣で受けたけど、もう1本の爪による攻撃を喰らう。


 俺の自身の防御力(DEF)に鎧の防御力(DEF)が加わって、そこまで大きいダメージじゃない。勿論防具も全部『試練の塔』のドロップアイテムだ。


 俺は暗黒騎士(アベンジャー)固有能力(オリジナルアート)『エナジードレイン』を発動する。これでダメージを与える度に俺のHPが回復する。


 プラチナドラゴンに喰らうダメージよりも回復するHPの方が多い。俺はそのままプラチナドラゴンのHPを削り切る。


 このタイミングでメイから『念話の指輪(リングオブコール)』で連絡が来た。


『エイジ君が見守れと言った冒険者が、不味いことになっているわよ』


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