19話:再会
ローズたちと話をしていると、ギルド職員のグレッグがやって来た。
「エイジ、ようやく来たか」
エイジ・マグナスだった頃の俺は、グレッグにとって名前に聞き覚えがある程度の存在だった。だけど今の俺のことは、しっかり憶えているみたいだな。
「そう言えば、グレッグさんはエイジに用があるって言っていたわね」
「ああ、第2支部の冒険者がエイジを訪ねて来たんだ。エイジの方から用があるときは冒険者ギルドに言伝するように言ったそうじゃないか。酒を奢るために連絡を取りたいらしいぞ」
たぶんシーダたちだろう。メイに制作室の映像で見守るように頼んでいたから、シーダたちだと思われる冒険者たちがダンジョンの攻略を再開したことは聞いている。
曖昧な言い方になるのは、自分の目で確かめた訳じゃないからだ。メイはシーダたちを認識していない。見た目と人数で判断しているだけだ。
「じゃあ言伝は伝えたからな」
グレッグがあまり良い顔をしていないのは、冒険者ギルド支部がお互いをライバル視していて、仲が良くないこともある。だけどそれだけが理由じゃないだろう。
「知り合いが訊ねて来たみたいだから、あとで出掛けて来るよ」
「エイジは知らないかも知れないけど、第2支部に行くことは勧められないわ」
サラがあからさまに不機嫌な顔をする。
「私もそう思うわ。第2支部には『殲滅旅団』の連中がいるから」
「エイジが行ったら強引に誘われるんじゃねえか」
ローズとラウルも嫌そうな顔をしている。『殲滅旅団』は冒険者ギルド第2支部を実質的に支配しているクランで、冒険者を強引に引き抜いたり、ダンジョン攻略の妨害をするなど、とにかく評判が悪い。
噂だけじゃなくて、ローズたちは実際に被害を受けている。エイジ・マグナスだった頃に、ローズたちが『殲滅旅団』に誘われて、断ったら散々嫌がらせをされたことは聞いていた。
『殲滅旅団』の奴らがダンジョンで実際にどんなことをしているか、俺は制作室のスクリーンに映る映像で確認済みだ。
だけど『試練の塔』に挑んでいる俺には、もし『殲滅旅団』が嫌がらせをしてもほとんど影響がない。制作室と『試練の塔』を『転移』で往復すれば、奴らに会うことすらないからな。
ローズたちは自分たちが嫌がらせをされたことも含めて、『殲滅旅団』について詳しく教えてくれた。
「みんな、心配してくれてありがとう。知り合いが泊っている宿を聞いているから、そっちを訪ねてみることにするよ」
あまり遅くなるのも悪いから、ローズたちと早々に別れてシーダたちが泊っている宿屋に向かうことにする。だけどその前に渡すモノがあった。
「エイジ、これって……」
『念話の指輪』を渡すと、何故かローズが顔を赤くする……しまった! 先に説明するべきだったな。
「魔力を消費することで、事前に登録した相手に思念を送れるアイテムだよ。何か用があるときに使うと便利だからさ。ラウルとサラの分もあるんだ」
「あのねえ、そういうことは先に言いなさいよ……」
「そうね。今のはエイジが悪いわ」
ローズとサラに睨まれる。
「確かに便利そうだが、貰って構わねえのか?」
「ああ、『試練の塔』で結構頻繁にドロップするから余っているんだ」
こういうとき、ラウルがいてくれると助かる。俺以上にそういうことに鈍いみたいだからな。
「タダで貰う訳にはいかないでしょう。私たちにもエイジと連絡が取れるメリットがあるから、適正価格で買い取らせて貰うわ」
ローズとサラは引くつもりがないみたいだから、あとで冒険者ギルドに査定して貰って、今度会ったときに3人から金を貰うことにした。
『念話の指輪』で相手を登録するのは簡単だ。お互いが指輪を嵌めた状態で魔力を込めて、指輪同士が触れれば完了だ。
「みんな、もし何かあったときは必ず連絡してくれ」
「何かって……どういう意味よ?」
「もしものときってことだよ。ダンジョンじゃ何があるか解らないだろう。どこまで俺にできるか解らないけど、できるだけのことはするからな」
「エイジに何かあったときも、私たちに連絡するって約束するなら」
ローズとサラが真剣な顔で俺を見る。
「解った、約束するよ。じゃあ俺はそろそろ行くから」
まだ機嫌の悪い2人を残して、俺は冒険者ギルドを後にした。
※ ※ ※ ※
シーダたちが泊っている『踊るアヒル亭』という宿屋は1階が食堂で、2階が宿泊施設になっていた。
従業員に頼んでシーダたちを呼んで貰うつもりだったけど、その必要はなかった。シーダたちが食堂にいたからだ。
「エイジ、俺たちの言伝を聞いたんだな!」
ダルクが駆け寄って来る。他の3人も席を立ってこっちにやって来る。
「エイジさん、先日は助けてくれてありがとうございました。おかげでカイルも元気になったんです」
シーダが深く頭を下げる。
「エイジさんが助けてくれなかったら俺は死んでいた……本当に、本当にありがとうございます!」
カイルは気を失っていたから話すのは初めてだけど、ダルクと違って素直な性格みたいだな。
「俺としても助けられて良かったよ。ダルクたちにも言ったけど、死にたくなかったらもっと慎重に行動した方が良い」
「はい、今回の件で肝に銘じました。これからは安全第一で行動しようと思います」
「エイジ、こんなところで立ち話も何だ。夕飯は食べたのか?」
「ああ。さっき冒険者ギルドで食べて来たところだよ」
『冒険者ギルド』という言葉に反応したのか、ダルクたちの表情が曇る。俺が心配していたことは杞憂じゃなかったみたいだな。
「だったら酒を飲んで行けよ。カイルの金で奢るって約束は勿論果たすが、それとは別に奢るぜ」
俺は誘われるままに、ダルクたちが囲んでいたテーブルに向かう。




