第30話:大総括!「親父が異世界転移した結果、俺に残されたのはショボい予言だけだった件」
「よし、よし! 一回整理しようぜ! 俺、中村十一はこの世界に来てからというもの、正真正銘の狂気の中に放り込まれてる。だから、ちょっと巻き戻して俺の苦難――ゴホン、失礼。俺の輝かしい冒険を振り返らせてくれ!」
十一は芝居がかって咳払いし、脳内のイマジナリー・ステージへと登壇した。スポットライトが点滅し、拍手の喝采が響く(妄想)。彼は胸を張り、ポーズを決めた。
「BGMスタート!」誰もいない空間に叫ぶ。
【親父が先に転移してエルフの女王と結婚!? 不公平すぎるだろ】
「いいか、俺の親父、中村海斗は東京でただくつろいで、お気に入りの乙女ゲームをプレイしてたんだ。そしたら突然――ババーン! 手違いで異世界に吸い込まれた。神様の配送ミスもいいとこだ。ネットで勇者を注文して、違う住所に送りつけちゃったみたいなもんだぜ」
十一は空に向かって非難の指を突きつけた。
「で、当然のようにあいつは生き残るだけじゃなく、大出世しやがった。勇者になって世界を救い、美しいエルフの女王、リライ・レッドウッドと結婚。その間、俺は日本で数学の試験と格闘し、一食700円のカップラーメンを啜ってたってのに!」
彼はドラマチックにしゃがみ込み、顔を覆った。
「しかもこれを聞けよ。親父の魔法の指輪が新しいエルフのママに通知を送ったんだ。『息子が見つかりました!』ってな。ピコーン! じゃねえよ!」
十一は両手を上げた。「こうして、親父が究極のファンタジー・ライフを謳歌してる間、俺は塾と花粉症に苦しんでたって事実を知ったわけだ」
【東京からゴブリン戦へ:史上最悪の交換留学】
「で、時は進み――予言とかいうデタラメのせいで、俺が真の『選ばれし者』だってことになって、ヒョイっとモンスターだらけの森に放り出された。……素晴らしいね(嫌味)」
彼は皮肉たっぷりにジャズ・ハンズを披露した。
「餓死しかけて、魔物に襲われて、ならず者や貴族のトラブルに巻き込まれた。その道中で女の子に出会い、男を殴り、行方不明の親父が伝説の英雄だってことを知ったんだ」
十一は顔をさすった。「ようやくリライとアリラ――俺の新しいエルフのママと可愛い妹――に会えたときは、せめて普通の家族の歓迎を受けられると思ったんだよ」
※ネタバレ:受けられませんでした。
「代わりに待ってたのは、涙と抱擁、運命の話、そして謎の指輪のコネクションというドロドロの家族ドラマだ。リライは指輪が『運命で繋がっている』から、親父はまだ生きてるって言い張ってる。……魔法のBluetooth親父トラッカーかよ」
【冒険者ギルドと不当なランク付け】
「よし、俺は思ったね。『冒険者になって、自分の力を証明して、独自のレジェンドを作ってやる!』……完璧なプランだろ?」
彼はイマジナリー観客を睨みつけた。
「大間違いだ! 魔力テストで『数値が低すぎて話にならん』と言われ、速攻でDランクの烙印を押されたよ。その間、俺は自分でも理解できない封印された力を隠し持ってるっていうのにさ」
彼は両手を広げ、悲劇のヒロイン風に嘆いた。
(※背景で小さなバイオリンの悲しい音色が流れる)
【忍者のどんでん返しと「お前とはもう絶交だ」の術】
「そしてサクラだ。彼女は俺のミッション・パートナーだった。クールで、強くて、ミステリアス。王道のヒロイン属性だ。……だが、どんでん返し! 実は彼女、ハラセン忍者一族の出身で、賞金首だったんだぜ」
彼は胸を押さえ、劇的に息を呑んだ。
「一族は彼女に政略結婚を強要しようとした。で、追っ手が来たとき彼女はどうしたと思う? 俺をゴースト(無視)しやがった!」
彼は激しく手を振る。「『十一、私たちはもう友達じゃない。さよなら』って言って、忍者の如く夜の闇に消えたんだ。……マジで言ってる!?」
あんなに一緒に修羅場を潜り抜けたのに!? 俺の最後のビーフジャーキーを分けてやったのに!?
「だから当然、俺はこじらせた主人公らしく彼女を追いかけるしかなかったわけだ」
【サカタ・ブッダ:非公認・拷問系ライフコーチ】
「そして……あいつに出会った」
十一はくるりと回転し、虚空を指差した。
「サカタ・ブッダ。伝説の僧侶。混沌の化身。俺に『修行』が必要だと勝手に決めた、うるさくて、変わり者で、デタラメな男だ」
「精神の師ってのは、もっと賢明で禅の境地にいると思うだろ? 違うんだ。あいつは究極の武術を知ってる酔っ払いの親戚のおじさんだ」
「温かい歓迎の代わりに、あいつは俺を見てこう言ったんだ。――『これだけか? もっとマシな奴だと思ったんだがな』……俺の自信、粉砕」
【地獄の特訓、亜空間、そして終わらない口撃】
「サカタは俺を保護したんじゃない。時間がゆっくり流れる亜空間に拉致したんだ。そこはずっと薄明かりで、時計も休みも脱出口もない」
十一は震えた。「走らされ、かわし、組手をし、瞑想させられ、幻影攻撃でボコボコにされ、血を流してる間もずっと罵倒されたんだぞ!」
『もっと速く動け、鈍間!』
『老婆みたいな剣の振り方だな!』
『選ばれし者はもっと背が高いと思ってたぜ!』
「……そして四大元素の試練だ! 火、風、虚無の試練を生き延びて、ようやく潜在能力のほんの一部が解放された。プレイヤーに乱獲されるチュートリアルの雑魚キャラみたいな気分だったぜ」
【現在:なぜかまだ生きてる】
十一は深く息を吐き、床にへたり込んだ。
「こうして俺はここにいる。修行で半死半生、精神的にもボロボロ。運命ってやつは俺をオモチャにして楽しんでるんじゃないかって疑ってるところだ」
タイミングを見計らったように、サカタが背中を鳴らしながら、満面の笑みで入ってきた。
「おい、坊主。独り言は終わったか?」
十一が睨む。「ああ、終わったよ。……で、次はあんたの番だ。あんたの正体は何なんだよ?」
サカタはポーズを決め、賢者のような顔で顎をなでた。深い秘密が明かされる――。
十一は身を乗り出す。風が止まり、時が止まる。
サカタは咳払いをして……
……朗読を始めた。
「むかーしむかし、あるところに、とってもプライドの高い小さなキツネがおりました――」
十一は地面に顔から突っ込んだ。
「サカタ……何なんだよ、これは!!」
サカタは膝を叩いて大爆笑した。「ハハハッ! お前の顔、最高だったぜ! クラシックだな!」
十一は地面に顔を伏せたまま呻いた。「……人生、大嫌いだ」
【十一の不満コーナー(ボーナスパネル)】
ちびキャラの十一が「不満リスト」と書かれた黒板の前に立っている。
親父がチートすぎて失踪中
エルフのママが俺の運命を漫画のネタバレみたいに読んでくる
忍者の友達にフラれた(絶交された)
サカタが存在している
まだDランク
全身が痛い




