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第2話:SS級の依頼(クエスト)

 海人カイトは期待に胸を膨らませ、冒険者ギルドの重厚な磨き抜かれた扉を押し開けた。

 古びた木材の香りと松明の匂いが鼻をくすぐる。中では、戦士や魔道士たちがテーブルを囲み、酒を片手に武勇伝に花を咲かせていた。彼は圧倒されそうになるのを堪え、一歩前へ踏み出した。

「冒険者ギルドへようこそ!」

 弾むような声が響いた。振り返ると、金髪を綺麗に編み込み、輝く緑の瞳をした少女がカウンターの中に立っていた。名札には『ソフィー・クリントン』とある。

「私はソフィー。登録に来たの?」

「ああ」海人は少し引きつった笑みを浮かべて答えた。「カイトだ。こういうのは初めてでね」

 ソフィーは満面の笑みを浮かべた。「素晴らしいわ! 新人は大歓迎よ。手続きの前に、このギルドの仕組みを説明するわね」

 彼女はカウンターの上に装飾の施された木箱を置き、中から淡く光るクリスタルを取り出した。

「これは『属性測定システム』よ。この石で冒険者のステータス――筋力、敏捷、知力、耐久を測定して、FからSまでのランクを決めるの。もっとも、稀にそれ以外の分類もあるけれど……」

 ソフィーは言葉を切り、声を潜めた。

「伝説の英雄だけに許されるランク――『SS級』。システムの限界を超えた能力を持つ者たちのことよ」

 海人は唾を飲み込んだ。「……凄そうだな」

「準備はいい?」彼女がクリスタルを掲げる。

 海人が頷き、そのクリスタルを手に取った瞬間――。

 石が猛烈に発光し始めた。誰も見たことがないほどの眩い光が溢れ、次の瞬間、爆発的な衝撃波がギルド中を駆け抜けた。デスクの書類が舞い上がり、椅子が床を擦る凄まじい音が響く。

 ギルド内が、静まり返った。

「な、何……これ……?」ソフィーは口をあんぐりと開けて固まっている。

 鎖帷子を纏った屈強な男が歩み寄ってきた。「クリスタルがこんな反応をするなんて見たことがねえぞ……。判定はどうなった?」

 ソフィーは震える指で台帳と古い魔導書を交互に確認し、ようやく顔を上げた。

「カイト……信じられないわ。測定不能よ。クリスタルがあなたの力を測りきれなかった。あなたは……SS級よ」

 部屋中がどよめきと囁き声に包まれた。海人は自分の耳を疑いながら、目の前に浮かぶステータス画面に目をやった。

【名前:カイト】

【レベル:1】

【獲得加護:火竜】

【HP:200】

【MP:∞(無限)】

【筋力:∞ / 敏捷:∞ / 知力:∞】

「オタク脳、フル回転しろ……」彼は呆然と、しかし興奮を抑えきれずに呟いた。「これ、火竜の加護のせいか?」

 冒険者たちが詰め寄ろうとするのを制し、海人は手を挙げた。「悪い、騒ぎにするつもりはなかったんだ」

 静寂が戻ると、ソフィーは咳払いをして彼を奥へと促した。「SS級の冒険者には……相応の依頼クエストが必要ね」

 彼女が持ってきたのは、革装の分厚い書物『古の遺録オールド・ダイアリー』だった。

「現在、生存しているSS級冒険者はわずか10人。あなたは11人目よ。でも……」彼女は少し躊躇い、問いかけた。「カイト、あなたが持つのは真に『竜の力』なの?」

「ああ。火竜だ」彼は誇らしげに答えた。

 ソフィーの表情が、わずかに曇った。「……そう。それは凄いわ。でも、私が期待していたのは、もっと……複数の属性を宿す力だったの」

「どういうことだ?」

「予言があるのよ。魔王を倒せるのは『多属性の竜』を操る者だけ。火竜の力だけでは、不十分かもしれない」

 海人の顔が引き締まった。「なら、もっと強くなるまでだ。自分が何になれるか、確かめてやる」

 ソフィーは頷き、一枚のスクロールを差し出した。「あなたの初任務は強敵よ。ターゲットは『ダークエルフの女王』。商人たちが跡形もなく消えている連続失踪事件の主犯と見られているわ」

 海人はスクロールを受け取った。「やってやるよ」

 ソフィーは微笑んだが、その瞳には不安が残っていた。「幸運を、カイト。多くの人々の運命が、あなたの双肩にかかっているわ」


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